障がい者グループホーム経営が赤字になる原因は?さまざまな角度から詳しく解説

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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国が障がいをもつ方の地域移行を推進してきたのに伴い、グループホームの利用者数は増加しています。一方で、利用者がおらず赤字に陥ったり、質の低い支援を行ったりしている事業所がみられるのも現状です。この記事では、赤字になる要因や経営のポイントについて解説します。

障がい者グループホームの現状

障がい者のグループホームには、「介護サービス包括型」「日中サービス利用型」「外部サービス利用型」の3種類あります。

  • ・介護サービス包括型:主に夜間に食事、排泄、入浴の介助や相談対応を行う
  • ・日中サービス利用型:夜間の介助や相談対応のほか、日中支援も行う
  • ・外部サービス利用型:食事、排泄、入浴の介助などを外部の居宅介護事業所に委託

ほかにも、ひとり暮らしをしたい方向けにワンルームやサテライト型(本体のグループホームから一定距離内にある一室を借りて住む形態)のグループホームも登場しています。

特に「介護サービス包括型」の利用者数は12万人超、事業所数は8400件以上と、大きな割合を占めています。

出典:「障害者の居住支援について」(厚生労働省)

一方で、強度行動障害のある方や医療的ケアが必要な方など、障がい特性に応じた整備が追いついていない現状があります。また、需要と供給のバランスが取れていない、支援スキルが不足しているといった理由で、倒産や廃業に追い込まれるケースも指摘されています。

障がい者グループホームの経営が赤字になる要因

ここでは、障がい者グループホームが赤字になってしまう主な要因について紹介します。


推進者がいない


グループホームは、利用者が日常生活を送る場です。一度開業すると、24時間365日体制で稼働することになります。やむを得ない理由でスタッフが不在になったり、緊急事態でスタッフの増員が必要になったりすることも多々あります。

日頃から計画的に人員確保を行い、不測の事態が起きたときにしっかり対応できる推進者がいないと、運営はままなりません。


営業がうまくできていない


見落とされがちなのが、利用者確保に向けた営業です。優先度の低いところに営業してしまっている、地域の事業所や住民との交流が深められていないなど、赤字経営の事業所には営業の課題が山積している場合があります。

一度訪問営業しただけで満足し、利用相談を待つだけなど、受け身の姿勢も問題です。


適切な人員の配置や雇用形態をとっていない


経営の鍵となるのが、人件費です。職員の実務経験や資格の有無によって、コストは大きく変わります。むやみに給与を上げ、配置人数を多くしてしまうと、膨大な人件費がかかることになります。とはいえ、給与が低すぎると離職につながりかねません。

また、人員配置が不十分だと、事故やトラブルなどのリスクが上がります。雇用形態の使い分けや、適切な人員配置は必須といえるでしょう。


加算の取得や更新を疎かにしている


障がい者グループホームの収益は、取得した加算からの報酬で成り立っているといっても過言ではありません。

まずは、しっかり加算を取得することで、安定した収益を確保できます。さらに、前年の結果を計算して変更届を出すと、単価アップが見込めます。加算を取得したことに安心しきって、更新手続きが疎かになってしまうと、収益の増加は期待できません。


有資格者・業界経験者が足りていない


生活面の援助や相談、夜間対応など、グループホームの業務は専門知識や経験が問われます。一方で、福祉業界では有資格者や経験者を確保するのが難しい傾向にあります。

「採用できていたのに、開業するまでの期間で辞めてしまって困った」というケースも見られるようです。

有資格者の有無は加算や減算に影響する場合もあり、開業後の収益も大きく左右するおそれがあります。

障がい者グループホーム経営を成功させるポイント

では、実際にどういった点に気を付ければ、経営が安定するのでしょうか?ここでは、ヒントとなる2つのポイントを紹介していきます。


人材の採用・教育に力を入れる


前述のとおり、障がい者グループホームの鍵を握るのは人材です。

まずは利用者の定員に合わせて、必要な人員を計算します。予期せぬ退職や緊急事態を考えると、定期的に新たなスタッフを採用し続ける必要があるでしょう。

また、職員は採用して終わりではありません。長く働き続けてもらうためには、採用後のフォローも大切です。コミュニケーションを密に取り、困っていることはないかを丁寧に聞き取りましょう。場合によっては、待遇の改善も検討します。


地域のニーズを把握した営業活動を行う


事前リサーチは、営業活動の基本です。まずは、グループホーム周辺のニーズ把握に努めましょう。

周辺にはどういった方たちが住んでいるのか、どのような方がグループホームを必要としているのか、現在足りていない福祉サービスはどういうものなのかなど、地域住民が求めているものについてしっかり調べましょう。

次に、サポートを必要としている利用者に、施設の存在を知ってもらえるよう営業活動を行っていきます。相談支援専門員や特別支援学校の先生などは、利用を検討する方を紹介してくれる可能性があります。しっかり信頼関係を構築しましょう。

ホームページやSNSなど、デジタルメディアを通じた集客も重要です。利用者本人やご家族が直接問い合わせるケースもあるので、連絡が取りやすい窓口を確保しておきましょう。

また、侮ってはならないのが、地域の口コミの力です。近隣住民の方と挨拶を交わす、自治会との交流を図るなど、地域の方たちと少しずつ交流を重ねることは、利用者の暮らしやすい環境づくりにもつながります。地道な活動を続けることも、利用者確保の大切なポイントです。

まとめ

障がいのある方が地域で暮らすうえで、大切な資源となっているグループホーム。24時間365日体制で利用者を支え続けるためには、継続可能な経営が重要です。

経営で悩んでいたり、不安を抱えたりしている場合は、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがおすすめです。専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。また、専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

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