訪問看護が人手不足に陥っているのはなぜ?対策もあわせて解説

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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訪問看護ステーションを運営する事業者の皆様、人手不足による人員確保の難しさは深刻な問題です。この記事では、訪問看護の分野でなぜ人手不足が生じているのか、その原因と具体的な解決策を探ります。

訪問看護における人手不足の実情



訪問看護の利用者数は高齢化や在宅で生活する利用者の増加に伴い増加の一途を辿っています。その数は最新の2022年には10,000事業所を超えており、10年前の2012年の6000事業所の1.67倍近い増加となっています。

その一方で、訪問看護ステーションで働く看護師は非常に少なく、2020年時点において全体で173.4万人いる看護職員のうち約6.8万人程度=約4%しか存在していません。

それにもかかわらず、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年問題を前に看護人材は2025年には約6万~27万人の看護師が不足するという試算も出ています。

もともと、訪問看護業界に属する人材が少ない中、現時点でも慢性的な人手不足に直面しています。この状況は、サービスの質の低下や業務の過重化を招き、結果として更なる人材の流出を引き起こしています。

出典:
第220回社会保障審議会介護給付費分科会資料3 看護師等(看護職員)の確保を巡る状況 」(厚生労働省)

医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案(概要)」(厚生労働省)

訪問看護で人手不足に陥っている原因



ここからはなぜ訪問看護業界で人手不足が発生しているのか、原因についてお伝えしていきます。

少子高齢化による労働者人口の減少


日本の少子高齢化は、労働力人口の減少を招き、特に看護職の不足を深刻化させています。

就業看護職員の年齢階級別構成割合の推移を見ると、若年層の割合が減少しており、60歳以上の構成割合が増加している状況です。

  • ・60~64歳2008年:3.1%⇒ 2020年:6.8%
  • ・65歳以上2008年:1.8%⇒ 2020年:5.0%


少子高齢化の影響も大きい中で若年人材が看護職を目指さなくなっている状況が見て取れます。

また、2020年の職業別有効求人倍率においても看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20となっており、業種合計の1.19に比べ高い状況からも人手不足であることが示されています。

出典:
看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」(厚生労働省)

業務内容がハード


訪問看護の業務は身体的、精神的にハードな傾向にあり、長時間労働が常態化していることも担い手が不足している原因のひとつです。

1日あたり、3~5件の利用者宅を訪問しても事業所利益としては損益分岐点上にあることから、必然的に1日当たりの訪問件数が増えてしまうこと、その中で訪問先によって全く違う看護ケアを求められること、訪問であるがゆえに、病棟勤務時には経験することが無かった他職種(訪問介護やケアマネジャー)などとの連携や書類業務が増えることからも精神的にも肉体的にもハードワークであることも懸念材料とする方がいます。

病棟とは異なるスキルが必要


訪問看護には、病棟勤務とは異なる独自のスキルセットが求められます。これが新たな人材の獲得を難しくしています。

あくまで一例ではありますが、医療機関ではディスポーザブル(使い捨ての医療機器)の概念が当然であり、一回使ったものは捨てることが衛生観念からも順当ではあるとはいえます。

しかし、訪問看護の場合、利用者宅の備品を用いて看護にあたる場合が多いため、使用した機器や材料に関して滅菌消毒をして再利用するケースもあるのです。

また、利用者宅には、医療機関のような専門設備が揃っていないので、現場で判断する必要があることも、訪問看護で働くハードルを上げているともいわれています。いわゆる“敷居の高さ”という問題があります。

子育てをしている人にとって働きにくい環境


訪問看護の仕事は、子育て中の看護師にとって特に働きにくい環境となっています。

当然ながら、病棟勤務に比べたら残業は少ないものの、月末月始など、請求関係での書類業務があるときには、残業することも少なくありません。

病棟やクリニックにはメディカルクラークが担っていた事務作業を訪問看護スタッフが担うこともあります。

そういった側面から、小さいお子さんがいる子育て世代の看護師さんにとっては、子どもとの時間を作りにくくなる場合もあります。

また、上記の理由からオンコール対応必須の事業所が多くなってきている訪問看護での勤務より、病棟でのパート勤務や、定時で帰宅可能なクリニックでの勤務を希望する人が多くなるというのが現状です。

待遇があまり良くない


病棟での夜勤手当の存在も大きく、勤務する訪問看護事業所によっては夜勤対応が少ないため、給与が目減りしてしまうこともあります。

また、大きな法人でない事業所の場合、今まで得られていた福利厚生面が弱くなることでのモチベーション低下は、訪問看護師の職場離れを促しています。

人手不足解消のために国で実施されている対策


国は、訪問看護の人手不足問題に対処するために、教育支援や労働条件の改善、キャリアアップ支援などの施策を実施しています。

※助成金は看護分野のみが対象事業者ではありません。

業務改善助成金

事業所における最低賃金を30円以上(30円/45円/60円/90円コース)引き上げて、生産性を向上する目的で事業所の設備投資等をした場合に得られる補助金です。

業務改善助成金としては、最大600万円まで費用の一部が支給される助成金事業です。

助成金の金額は、引き上げた賃金額とその対象となる従業員数によって、最低60万円~最大600万円までの20段階に分けられています。

働き方改革推進支援助成金

中小企業をターゲットとして、生産性を上げて残業時間の削減や、有給休暇取得促進といった働き方改革に取り組む企業に対する助成金事業です。取り組みの内容や経費の総額に応じて、最大200万円まで支給されます。

訪問看護の人手不足解消のため事業者がとるべき対策



上述した人手不足解消のために国で実施されている対策を含め、訪問看護事業所が行うべき人手不足解消に向けた対策について下記の取り組みを行うことをお薦めします。

待遇の見直し


対応の姿勢については上記でお伝えした通りですが、ここからは事業所としての基本姿勢や体制作りについてお伝えします。

迅速な対応をする


給与や福利厚生の改善は、看護師の定着率を高める重要な要素です。多くの事業所がさまざまな補助金や助成金を活用することで従業員の待遇改善の原資にしています。

また、介護保険で適用される加算に加え、医療保険で適用される加算について見直しをしてみましょう。報酬改定を控える中で、新たな加算が取得できるケースもあります。

そのほか、衛生物品にかかるコストの見直しも必要です。過剰な在庫を常に抱えることによる収益圧迫を回避することにもなります。

大きくはありませんが従業員への還元を図る事でのモチベーション向上も狙えるでしょう。

ワークライフバランスを実現できる環境の整備


柔軟な勤務体系や子育て支援策を導入することで、働きやすい環境を作り出すことが重要です。

女性が大半を占める看護師業界においては、妊娠・出産といった大きなライフイベントが重なることで、退職を余儀なくされる方も少なくありません。

個々のワークライフバランスに合わせて、多様な働き方が出来る勤務体系を用意しておくことも必要です。


例:

小さなお子さんの子育て期間中⇒夜勤が少ないシフト組み
子どもの発熱など急な体調不良⇒有給休暇を取りやすい職場の雰囲気の醸成


また、看護師が多く勤務している事業所においては託児所を開設して、スタッフのお子さんを看るという特色を持った事業所を開設しているケースもあります。

ライフスタイルが変わっても働ける職場は、従業員の安心や定着率につながり、人材不足解消に役立つはずです。

サポート体制の強化


チームワークを促進し、メンタルヘルスのサポートを提供することで、職場のストレスを軽減します。

メンタルヘルスケアを改善するためのサポートをしている福利厚生サービス提供企業もありますので、こういったサービスの利用を検討するのも良いでしょう。

IT化による業務効率化


電子カルテの導入や業務管理システムの活用により、業務の効率化を図ります。

専用のアプリケーション(訪問看護向け電子カルテアプリ)を用いることで、事務作訪問後に事業所に戻る必要がなくなり、看護記録も簡単に入力できるため、個々の作業の省力化にもつながります。

採用活動の見直し


新卒者だけでなく、キャリア看護師や再就職希望者へのアプローチを強化することも大切です。

スカウト登録をされている看護師さんは非常に多くいるため、一般的な求人広告を出稿するよりマッチングできる確率が高いといわれています。

また、事業所の取り組みや事業所独自の魅力をSNSなどで発信することで一定の人材集客を叶えている事業所もあります。

まとめ


訪問看護の人手不足は、多面的なアプローチによる解決が必要です。待遇の改善、働きやすい環境の整備、効率的な業務運営、そして積極的な採用活動が、この課題を乗り越える鍵となります。

訪問看護ステーションで安定した人材を確保し、定着させるためには、専門家によるコンサルティングを受けることが重要です。

第三者的な観点から有益なアドバイスを得られ、専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

土屋総研は、日本全国で福祉・看護に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。訪問看護事業の展開も行っているため同業者へのコンサルティングも行っています。

土屋グループは、多数の事業承継、M&A実績や、同業者へのコンサルティング実績があり、グループ内にも人材教育研修機関を有しているなど、事業の立て直しや人材不足、後継者不足、事業承継、事業の買収・譲渡(M&A)など総合的なサポートが可能です。ぜひご相談ください。

将来的な活動のために、しっかりとした基盤を築きながら設立を進めていきましょう。

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