【介護事業者必見】2035年は?2050年は?どうなる!?日本の超高齢化と訪問介護事情

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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この記事では、日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進行していて『超高齢化先進国』と呼ばれています。


2035年、2050年といった将来に向けて、高齢者の割合はさらに増加し、社会全体に多大な影響を及ぼすと予測されています。


この超高齢社会においては、介護需要の増大が避けられない課題となります。特に、訪問介護事業はその最前線にあり、経営者には未来への対応策が求められています。



この記事では、人口推計の予測値を踏まえ、訪問介護事業者がどのような施策を講じるべきか、その具体的なアプローチ手法についてお伝えしていきます。


この大きな変化の波に乗り遅れないよう、今から準備を始めることが重要です。

序章:2035年、2050年の日本の人口構造



2035年、2050年に日本が直面する人口構造の変化は、国全体にとって大きな挑戦です。


国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、65歳以上の高齢者比率はこれからも上昇を続け、世界でも類を見ない「超高齢社会」に突入すると予想されています。


これに伴い、介護需要は爆発的に増加し、訪問介護事業者には前例のない機会と課題が訪れます。


まずは、未来の予測としてデータをご用意しました。国立社会保障・人口問題研究所が調査した『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』をもとに都道府県別での未来の高齢者人口の比率状況を見てみましょう。



出典:国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』を加工して作成


ご覧いただくと一目で分かる通りですが、2035年においては全国平均で、ほぼ3人に1人が65歳以上となる人口推計となっています。


また、赤文字や赤い囲みが付いている都道府県の箇所を見て頂くと分かりますが、北海道・東北・四国エリアはその割合が高く、特に秋田県においては、2050年には2人に1人が65歳以上という予測が示されています。


こういった状況の中、世界の超高齢化の最先端を走る日本において、訪問介護事業はどうあるべきでしょうか?

第1章:超高齢化社会における訪問介護事業の重要性



超高齢化が進行する中で、在宅介護のニーズは増大し続けています。


高齢者一人ひとりがその人らしく生活できるよう、質の高い訪問介護サービスの提供が求められています。


訪問介護事業者は、この需要に応えるために、サービスの質を高めると同時に、効率的な運営を行う必要があります。ここからはその具体的な手法についてお伝えしていきます。


サービスの質を高める具体的な手法


  • ・継続的なスタッフ教育:最新の介護技術や心理学に基づく対応方法を定期的にスタッフに教育する。
  • ・個別化されたケアプランの作成:利用者一人ひとりのニーズに合わせたカスタマイズされたケアプランを作成。
  • ・家族とのコミュニケーション強化:定期的なミーティングやデジタルツールを用いた情報共有で、家族との信頼関係を築く。
  • ・クオリティコントロールの実施:サービス提供後のフィードバックを収集し、問題点を迅速に特定・改善。


また、上記リストの内容に加え『介護の担い手』であるスタッフの平均年齢も上昇していく事が当然想定されるため、今の段階から若年層スタッフが長期間勤務できる職場環境の整備も求められると予想されます。


効率的な運営を実現する方法


  • ・デジタルツールの活用:ケア管理システムやスケジューリングツールを用いて、情報の一元管理を実現。
  • ・業務プロセスの標準化:訪問介護における業務プロセスを標準化し、効率的な作業手順を確立。
  • ・外部リソースの活用:特定の専門業務を外部に委託し、コア業務に集中。
  • ・マルチスキルの育成:スタッフが複数の役割を果たせるようにすることで、人員不足の際の柔軟な対応や、動機付け向上に繋がる。


いかがでしょうか?デジタルツールの活用や、業務プロセスの見直し、外部リソースの活用など、様々な取り組みが必要ですよね。


「今から取り組みを始めても間に合わないかも…」と不安を感じた方は下記の記事がお役に立てる可能性がありますよ!


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利用者に寄り添う支援の仕方とは?コミュニケーションの取り方やコツを紹介

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第2章:人口推計に基づく介護需要の変化



先ほどお示しした内容とは別の切り口として、厚生労働省が掲げる推計によれば、2035年には介護が必要な高齢者の数はさらに増加し、2050年にはその数がピークに達するとされています。


この長期的な視点をもって、訪問介護事業者は事業計画を策定する必要があります。介護人材の確保と育成、テクノロジーの導入、サービスの多様化など、将来にわたって安定したサービス提供が可能な体制の構築が重要です。


下記の表からも分かる通り、

男性の高齢未婚単独世帯は86万世帯(2020年)から269万世帯(2050年)で約3.1倍
女性の高齢未婚単独世帯は57万世帯(2020年)から191万世帯(2050年)で約3.3倍


と今後20年のうちに3倍近い高齢未婚単独世帯が増加するとみられています。


つまり、家族介護に期待できない高齢層が爆発的に増加する状況です。


人口減少に拍車がかかることに加えて、介護需要の爆発的な増加は容易に想定されるため、今の段階から若年人材の長期的育成と雇用拡大を念頭に置いた事業運営が必要となります。



出典:国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(令和5(2024)年推計)』より抜粋

第3章:技術革新と訪問介護



加えて、技術の進歩は訪問介護事業にとって大きな潮流です。特に、ICT(情報通信技術)の活用によるサービスの質の向上や効率化が期待されています。


AI(人工知能)を用いた健康管理システム、遠隔介護支援システム、介護ロボットの導入など、テクノロジーを駆使して高齢者の自立を支援し、介護負担を軽減する取り組みが求められています。


これらのツールを駆使するために、厚生労働省をはじめとした様々な機関が補助金や助成金を提供しています。


厚生労働省からのお知らせとして “介護現場におけるICTの利用促進” というページが設けられていますので、こちらも是非参考にされてください。

第4章:人材育成と確保



介護業界全体の課題である人材不足は、訪問介護事業においても深刻です。質の高いサービスを提供するためには、優秀な介護人材の確保と育成が不可欠です。


経営者は、働きがいのある職場環境の整備、適切な報酬体系の設定、継続的なスキルアップ支援を通じて、優秀な人材を引きつけ、定着させる戦略を練る必要があります。


また、既に多くの外国人ヘルパーが就労しているように、日本人以外の人材に対するアプローチも大変重要です。


以前は外国人人材に否定的な考え方を持った利用者も見られましたが、現在では有力な介護の担い手として活躍していることからも、多様な価値観の下で働く職場環境の構築も必要です。


訪問介護のヘルパー不足の現状|原因と人材不足解消の対策

介護分野の技能実習制度とは?技能実習生を雇用する要件やメリットも

介護施設で外国人労働者を雇用する際の基礎知識|受け入れ時のポイント


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結章:未来への備え



2035年、2050年を見据えた訪問介護事業の展開には、先見の明と柔軟な対応が求められます。超高齢化社会を迎える日本では、訪問介護サービスへの需要は確実に高まります。


これからの時代を生き抜くためには、社会の変化を敏感に捉え、持続可能なビジネスモデルを構築することが不可欠です。


経営者が今から準備し、施策を講じていくことで、高齢者が安心して生活できる社会の実現に貢献できるでしょう。


土屋総研は、日本全国で福祉・看護に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門として、同業者へのコンサルティングも行っています。


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