介護施設で外国人労働者を雇用する際の基礎知識|受け入れ時のポイント

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


この記事は約8分で読み終わります。

近年、日本は少子高齢化が進み、介護事業における人材不足が深刻化しています。この厳しい状況を打破するひとつの手段として、介護施設において外国人労働者を雇用する動きが広がっています。本記事では、介護事業経営者が外国人労働者を雇用する際に知っておくべき基礎知識と、受け入れ時に重要なポイントについて探っていきます。

介護施設における外国人労働者の雇用が増加中

日本の介護業界では、外国人労働者の雇用が増加しています。介護分野の特定技能在留資格を持つ人は2019年9月時点で16人でしたたが、2023年1月時点では17,066人と急激な増加の一途を辿っています。

出典:「介護分野における外国人の受入実績等」(厚生労働省)

これは、将来的に訪れる「2025年問題」を見据えた対策の一環として位置づけられています。少子高齢化により、ますます増加するであろう介護ニーズに対応するためには、多様な人材の確保が必須とされ、その中で外国人労働者が重要な存在となっています。

介護業界で外国人労働者の雇用が進む背景【2025年問題】

日本国内の介護業界で外国人労働者の雇用が進む背景には、いくつかの重要な要因が影響しています。これらの要因は、少子高齢化や人手不足といった社会構造の変化、介護サービスの拡充など多岐にわたります。

ここでは、その主な背景要因をいくつか挙げてみましょう。

 

1. 少子高齢化と人手不足の深刻化

日本は高齢者の割合が増加する一方で、若年層が減少しているため、介護サービスの需要が急増しています。この高齢者の急増に伴い、介護職員の人手不足が深刻化しており、十分な介護人材の確保が課題となっています。

外国人労働者の活用は、これに対処する手段のひとつとして注目されています。

 

2. 2025年問題への備え

2025年は、団塊世代と呼ばれる第一次ベビーブーム(1947年〜1949年)に誕生した約806万人(3年間合計出生数)が一斉に後期高齢者である75歳以上を迎える=介護ニーズが急増する節目の年と言われています。

これにより、介護サービスの提供がより一層必要となり、それに伴う人手不足が懸念されることから『2025年問題』と呼ばれています。外国人労働者の積極的な受け入れは、この問題への対策の一環として位置づけられています。

 

3. 介護サービスの多様化と専門性の向上

近年、介護サービスは高度な技術やスキルが求められるものに変化しています。そのため、特定の介護スキルを持つ外国人労働者を受け入れ、日本の介護サービスの質を向上させることが期待されています。

特に、外国での介護経験を持つ人材が、日本の高齢者ケアにおいて有益な経験を提供できる可能性があります。

 

4. 国際交流の促進と多文化共生の推進

外国人労働者の受け入れは、国際交流の促進や多文化共生の推進にもつながります。異なる文化や価値観を持つ労働者が介護現場に参加することで、さまざまな視点やアプローチが取り入れられ、介護サービスがより柔軟で効果的なものになる可能性があります。

 

5. 外国人雇用の法改正と制度整備

政府は外国人労働者の受け入れを進めるため、法改正や制度整備を進めています。特に、特定技能ビザの導入や介護分野への適用などが、外国人介護労働者の受け入れを容易にするための取り組みとして挙げられます。

これらの要因が相まって、日本国内の介護業界において外国人労働者の雇用が進んでいるのが現状です。外国人労働者の積極的な活用は、介護サービスの継続的な提供と、高齢者のQOL向上に寄与すると期待されています。

介護施設で外国人労働者を雇う際の法的要件(在留資格・就労条件)

外国人労働者を雇用するには、特定の法的要件をクリアする必要があります。主な在留資格と就労条件について詳しく解説いたします。

 

在留資格「介護」

外国人が介護職に就くためには、「介護」の在留資格が必要です。これは、介護施設での勤務が目的であることが求められます。そのためには日本国内における介護福祉士資格を有していることが必要です。

出典:「介護福祉士資格を取得した外国人の方に対する在留資格「介護」の付与について」(厚生労働省)

 

在留資格「特定技能1号」

特定技能1号は、特定の業種や職種において高度な技能を持つ外国人が日本で働くための在留資格です。介護業界においても適用され、需要の高いスキルを持つ外国人を雇用する場合に利用されます。

「特定技能1号」を有する者が介護福祉士資格を取得することで在留資格「介護」に移行可能なため、将来的な有望人材となり得ます。

◆就労条件:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、通所リハビリテーション、デイサービス、介護療養型医療施設の「介護保険3施設」など

出典:「新たな在留資格「特定技能」について」(厚生労働省)

 

技能実習「介護」

技能実習制度を活用することもひとつの手段です。介護施設が外国人労働者に技術やスキルを指導し、国際交流を促進する仕組みです。

在留期間は1号⇒2号⇒3号と移行し、最長5年間まで延長可となっており、この期間に「技能実習評価試験」に合格できれば、特定技能へとステップアップし、その先には在留資格「介護」への移行が可能です。

◆就労条件:訪問系介護サービス以外の介護業務

出典:「介護職種の技能実習制度について」(厚生労働省)

 

EPA介護福祉士候補者

経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者として働く外国人も増加しています。インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者を受け入れることが可能な制度のため高スキル人材が多い(母国での資格保持者等)ことでも知られています。

在留期間は最長4年であり、在留期間中に「介護福祉士」を取得することで、在留資格「介護」に移行可能なため、将来的な有望人材となり得ます。

◆就労条件:訪問系介護サービス以外の介護業務

出典:「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」(厚生労働省)

介護施設にて外国人労働者を雇用する際の留意点

外国人労働者を雇用する際には、以下の留意点があります。

 

「外国人雇用状況の届出」の提出

雇用主は外国人の雇入れ及び離職の際に、ハローワークに対して雇用状況の届け出を行う必要があります。これは、雇用の意向や労働条件、給与などを詳細に報告するもので、ハローワークを経由して厚生労働省に提出されます。

出典:「外国人雇用状況の届出について」(厚生労働省)

 

雇用保険等の加入手続き

外国人労働者も日本人と同様に、社会保険である雇用保険や労災保険等への加入手続きが必要となります。外国人労働者であっても日本の労働関係法が適用されるため、年金の加入や住民票・マイナンバーの発行も必要です。

これらの手続きが行われることで、労働者と雇用主のリスクを最小限に抑えられます。

 

現場職員とのすり合わせ

文化や言語の違いからくるコミュニケーションの課題を解決するために、現場職員との円滑なすり合わせが欠かせません。また、信仰している宗教による考え方の差異や文化的価値観の差も大きいです。

多様な文化・価値観に対する寛容な姿勢と偏見の排除は重要なファクターであるため、トレーニングや研修を通じて、スタッフ全体が協力し合える環境を整えることが成功の鍵となります。

介護施設にて外国人労働者を受け入れる際に役立つ補助金制度

外国人労働者を受け入れる際、補助金制度を活用することで経済的な支援を受けられます。各地方自治体や労働省が提供する補助金を確認し、適切な申請手続きを行うことが重要です。これにより、採用にかかるコストを軽減でき、介護事業の継続的な発展が期待できます。

一例として「外国人介護従事者受入れ環境整備等事業」(東京都)や「松山市外国人材受入企業支援補助金」(愛媛県松山市)といったものがあります。

お住まいの自治体にも類似の補助金制度が存在する場合は上手に活用することで雇用機会の創出をスムーズに進めることにつながります。

まとめ

介護施設で外国人労働者を雇用することは、将来の人材不足に対するひとつの解決策として注目されています。しかし、その際には法的要件の遵守や留意点の把握が欠かせません。適切な手続きと円滑なコミュニケーションを通じて、外国人労働者との共生を図り、良好な労働環境を築くことが介護事業の発展につながるでしょう。

専門家によるコンサルティングを受ければ、事業所のアピールポイントや課題を、第三者の客観的な視点を交えて分析できます。外国人人材の受け入れは様々なハードルを適切にクリアするための綿密な準備が必要です。

土屋総研は、日本全国で福祉に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。福祉サービスを利用する方の地域生活を維持することを目的として、共に地域を支える同業者へのコンサルティングも比較的安価で行っています。

また、土屋グループでは、デイサービスの運営実績やM&A実績も多数ある事から、事業所の特色を活かしたコンサルティングに強みからの総合的なサポートが可能です。デイサービスの運営に課題を感じていらっしゃる方はぜひ土屋総研にご相談ください。

土屋総研へのお問い合わせはこちら