介護分野の技能実習制度とは?技能実習生を雇用する要件やメリットも

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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現在、介護業界全体で人員不足が深刻な問題となっており、介護経営者の中には外国人雇用を検討されている方も多いことでしょう。

本記事では、介護における技能実習生制度に焦点を当て、その仕組みや受け入れの状況について解説いたします。

あわせて、技能実習雨声を雇用する際の要件やメリット、注意点も触れているため、ぜひ参考にしてください。

介護分野の技能実習制度とは

技能実習制度は、外国人労働者に日本の技術や知識を修得させることで、将来的に母国で役立てることを目的とした制度です。

技能実習生全体で見ると平成29年度時点で25万人、令和4年10月段階では34万人と地方都市の人口に相当する技能実習生が国内で活躍しています。

また、この制度は『人材の確保』が目的ではなく、『技能移転』という趣旨に沿って進められています。そのため、介護分野では下記3要素に対応できることを担保した上で、実習制度が行われています。

  1. 介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージとならないようにすること。
  2. 外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
  3. 介護のサービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。


出典:
技能実習「介護」における固有要件について」(厚生労働省)
外国人雇用状況」の届出状況まとめ」(厚生労働省)

介護分野での技能実習生受け入れ状況

日本国内では、介護分野での技能実習生の受け入れは2018年度:1,823件、2019年度:8,967件、2020年度:12,068件となっており、大幅な増加傾向にあります。

技能実習生を受け入れることは利用者のニーズを満たし、全体的な介護サービスの質を維持する上では有用な手段といえます。それゆえに技能実習生を外国人労働者として導入が進められているのです。

ただし、この実態は技能実習の本来の目的とは乖離したものであることから、技能実習制度の廃止と適正化について有識者会議で検討されている状況もあります。

出典:
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 中間報告書(概要)」(法務省)
介護職種に係る技能実習生の受入れ状況に関する調査」(厚生労働省)

介護技能実習生を雇用するメリット

介護技能実習生を雇用することには、以下のようなメリットがあります。


外国からの異なる視点と文化の導入


技能実習生は異なる国から来るため、異なる視点や文化を持っています。これにより、介護サービスの提供に新しいアイディアや方法が導入され、現場の多様性が増します。


人材確保と人員不足の緩和


技能実習生の受け入れにより、介護業界における人材確保が期待されます。

特に介護分野においては専門性を求められるため実習生自体の受け入れ基準が厳しいため、技能実習生のスキル水準は総じて高いと言われています。

そういった実習生を受け入れることは、慢性的な人員不足に陥りがちな介護業界の状況緩和に寄与します。


国際交流の促進


技能実習生の受け入れは、国際交流を促進し、異文化理解を深める機会となります。これは、介護サービスの提供だけでなく、職場全体の雰囲気や労働環境の向上にもつながります。

介護技能実習生を雇用する際の注意点

技能実習生を雇用する際には、いくつかの注意点があります。これらを把握しておくことで、円滑な受け入れが可能となります。

まず、第一に言葉の壁をクリアすることが絶対条件です。対人業務であることからも日本語能力試験(JLPT)において一定以上の基準をクリアできていることを最低条件としているケースもあります。

また、受け入れ可能期間が一定であることから、その間の移住環境の整備などの面では日本人を採用する場合に比べてコスト負担が増加するケースもあります。

介護分野の技能実習生に関する要件

当然ながら、日本国外の人材を技能実習生として雇用するにあたってはクリアすべき用件がいくつか存在します。


日本語能力要件


まず、技能実習生は、日本での業務遂行のために日本語を理解し、基本的な会話や指示に応じる能力が求められます。そのため、日本語能力の確認が必要です。


  • ・第1号技能実習(1年目):日本語能力試験(JLPT)のN4に合格していること
  • ・第2号技能実習(2年目):日本語能力試験(JLPT)のN3に合格していること
  • ・あるいは同等以上の能力を有すると認められる者であること


これらは最低限の日本語能力の指標であるため、実際はN2の合格を採否基準としている場合も存在します。


同等業務従事経験


次に、技能実習生は、母国で同等の業務を経験していることが求められます。これにより、スキルの向上や専門性の高い技能実習生の受け入れが可能となります。

従事経験の一例としては、以下のとおりです。


  • ・外国における介護施設等において、日常生活の世話や機能訓練、療養上の世話等に従事した
  • ・外国における看護過程を修了した、看護資格を持っている など


介護分野の技能実習実施者に関する要件

一方で技能実習を行う側である実施者(雇用者)側にも、いくつかの要件があります。下記にてご紹介します。


技能実習指導員


技能実習制度自体には特定基準はありませんが、介護分野における技能実習生を指導するためには、指導員が技術やスキルを適切に伝えることが求められています。

介護分野においては技能実習指導員に対して、下記の資格や経験が用件として定められています。

◆要件:看護師又は職務歴5年以上の介護福祉士を技能実習生5名につき1名以上配置


介護事業所の体制


受け入れにおける指導計画やフォローアップ体制の確立のため体制要件が求められます。


【体制基準】

  1. 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
  2. 技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること。
    ※技能実習生以外の介護職員の同時配置、技能実習生以外の介護職員と技能実習生複数名で業務を行う、夜勤業務等を行えるのは2年目以降の技能実習生に限定する等の努力義務あり。
  3. 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
  4. 日本語学習(240時間(N3程度取得者は80時間))と介護導入講習(42時間)の受講を求める。
  5. 日本語教育と介護導入講習を実施する講師に一定の要件あり。


技能実習生の人数枠


介護事業所においては、同時に受け入れることができる技能実習生の人数に制限があります。
【参考:実習生の人数枠早見表】

まとめ

介護分野にて技能実習生を受け入れる際は、適切なサポート体制の整備が重要です。技能実習生との良好なコミュニケーションを通じて、異なるバックグラウンドを持つ人材との共生を促進し、より充実した介護サービスの提供を目指しましょう。

専門家によるコンサルティングを受ければ、事業所のアピールポイントや課題を、第三者の客観的な視点を交えて分析できます。外国人人材の受け入れはさまざまなハードルを適切にクリアするための綿密な準備が必要です。

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