収支差率の意味や計算方法は?介護事業に適用される背景や注意点もご紹介!

介護業界で頻繁に用いられる収支差率。この記事では、支差率の意味や計算方法について詳しく解説します。また、収支差率が介護事業に適用される背景や注意点もご紹介します。


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介護事業の収支差率とは?利益率との違いや計算方法を確認しよう

介護業界では、業界全体の実態把握や、自社の経営状況や財務分析を行う際に、収支差率が用いられます。ここではまず、収支差率とは何かについて解説します。

収支差率の意味

収支差率は介護業界でよく使われる指標で、介護事業所の売上に対する利益率を言います。つまり、売上に対して利益がどれほど出ているのかを図る指標となっています。
介護報酬の改定の際には、この収支差率が大きな役割を果たします。

厚生労働省の「介護事業経営実態調査」で、介護事業ごとに収支差率が調査され、それが高ければ減額、低ければ増額と、介護報酬の改定に反映されています。

利益率との違い

収支差率と利益率は、基本的に同じものです。一般的な法人の利益は利益率で表されますが、介護事業は利益だけを追求しているわけではないことから、介護事業では収支差率が使われていると考えられます。

収支差率の計算方法

収支差率は、収入から必要経費を引いた額を収入で割って算出します。
計算式は以下のように表されます。

収支差率(%)=(収入-支出)÷収入×100%

介護業界における収支差率の推移

介護業界の経営実態を見るに当たっても、収支差率は重要です。ここでは収支差率の推移を概観し、介護業界の現状について解説します。

収支差率の平均値

厚生労働省の2022年度介護事業経営概況調査によると、21年度の収支差率(税引後)は平均で2.6%となり、20年度よりも0.9ポイントのマイナスとなりました。各サービスで見ると、介護老人福祉施設では0.3ポイントのマイナス、訪問介護では0.9ポイントのマイナスなど、23の介護サービス中16サービスで収支差率が悪化していることが明らかとなりました。

出典:「令和4年度介護事業経営概況調査の概要」(厚生労働省)

介護事業経営の現状

介護サービスの収支差率の悪化を見ても明らかなように、介護事業経営は厳しさを増しているのが現状です。収支差率の悪化の原因としては、介護事業所の人件費の割合が増えていることが挙げられます。

2022年度介護事業経営概況調査でも、収入に対する給与費の割合は18サービスで増加しており、人件費が経営を圧迫している状況がうかがえます。

さらに、収支差率の悪化には、昨今のエネルギー・食料品価格等の物価高騰も影響しているのではという見方から、厚生労働省では今後、実態調査物価高騰影響を把握していくとしています。

収支差率が高い介護事業

収支差率の悪化が取り沙汰される介護業界ですが、改善しているサービスも見受けられます。

居宅介護支援の収支差率は、マイナス1.6%だった2019年度から、2021年度には4.0%にまで大幅に改善しています。

この背景として、コロナ禍で他事業所や施設の休止等があり、居宅介護支援の利用が増加したことが影響していると考えられます。

収支差率で注意すべきポイントは?悩んだときの対策をご紹介!

厚生労働省は、介護業界の実態把握をするに当たり、事業所の調査を行います。この調査は、介護報酬の改定に影響するため、介護事業者にとっても重要な調査です。

ここでは、厚生労働省「介護事業経営概況調査」に記載する際の注意点と悩みへの対策を解説します。

「介護事業経営概況調査」に記載する際に注意したいポイントとして、介護事業経営概況調査の記入方法に注意することが挙げられます。

事業所の支出をすべて計上する

事業所の支出で分類できない項目は、「その他の経費」として記載し漏れがないようにすることが重要です。決算期数値の記載が必要な個所が50項目程度あるため、決算書を手元に準備しましょう。

また、医療・介護費用以外にかかった費用として、福利厚生・通信・消耗品・保険料や租税公課に加えて、徴収不能損失といった詳細な経費の記載が必要となります。

本部経費配賦額や法人税などがある場合は記載する

現場経費のみならず、本社・本部で発生する経費もすべて記載が必要です。上記にもあるとおり、法人自体の全ての事業費用の記載が必要となり、その他の医業・介護外収益の記載や減価償却費の記載、設備資金の借入金返済のための支出、長期運営資金借入金返済支出の記載も求められます。

収支差率をはじき出し、妥当性を確認する

調査票には収支差率の欄がありません。そのため、最終的には事業者が各自で収支差率を算出し、会社の利益率と相違はないか、妥当かどうか、現状と比較して確認することが必要です。

これらの記載内容は自法人を運営する上で非常に重要な指標となります。煩雑な業務になると考えず、この年度の自法人の収益性や余剰コストを見直すための一助として活用することが望ましいです。

まとめ

収支差率は、介護事業者の経営の要である介護報酬の改定にも影響を及ぼす重要な指標であるのみならず、介護事業者の経営状況や財務分析を行う際に有効なツールです。収支差率が低く経営が苦しい、資金繰りが厳しいなどの悩みを抱えている際には、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、専門的知識が欠かせません。

専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。また、専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

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