介護人材不足の現状は?深刻化の原因や2025年問題に向けた解決策とは

昨今の社会情勢により、人材不足に悩まれている介護事業所経営者の方はますます増加しています。介護職員が20万人以上不足するとされる「2025年問題」も迫る中、どうすれば人材を確保し、利用者に安心した生活の継続を図れるのか、この記事では人材不足の現状と、その解決策を解説します。


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介護業界における人材不足の背景

介護業界では近年、人材不足がますます深刻化しています。人手が足りないことより介護職員一人ひとりに掛かる負荷が増大し、過重労働による疲弊や腰痛等から退職に至るケースも多くあります。それも相まって事業所の倒産件数も過去最多を更新。人材不足は介護業界の最大の課題となっています。ここではまず、人手不足の背景を解説します。

超高齢社会の突入

内閣府の調査によると、日本の人口のうち65歳以上の高齢者は28.9%を占め、3,621万人という報告が出ています。「団塊の世代」が75歳以上となる令和7年には3,677万人に達すると見込まれ、その後も増加傾向が続き、令和24年に3,935万人でピークを迎えるとされています。

日本では長期の人口減少過程に入っていることから、高齢者人口の数自体は減少に転じるとされています。しかしながら、高齢化率は上昇を続け、令和18年には国民の3人に1人が65歳以上となり、令和47年には国民の約2.6人に1人が65歳以上となると推計されています。

出典:「令和4年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)

こうした中、介護業界では人材不足が深刻で、国民の4人に1人が75歳以上となる「2025年問題」への対応が迫られています。

少子化による労働力人口の減少

高齢化が進む一方で、出生数は減少し続けており、生産年齢人口(15歳~64歳)に影響を及ぼしているのが現状です。1995年の8,716万人から、2020年には7,406万人まで減少し、今後も減少傾向が続く中で、2025年には7,170万人、2030年には6,875万人、2060年には4,793万人と見込まれています。

こうした少子高齢化の影響により、労働力人口も長期の減少過程にあり、介護を必要とする人口は増え続けているのに対して、労働者は減少している状況にあります。

介護業界における人材不足の現状とは

厚生労働省によると、2025年度には介護職員が約243万人必要となる一方で、働き手は約220万人と、約23万人の介護職員が不足するとされています。また、2040年度には約280万人の介護職員が必要とされている一方で、働き手は約215万人と、約65万人の介護職員が不足するとされています。

介護人材不足はとりわけ都心部で深刻であり、2025年度には東京都で約3万人、大阪府で約2万4千人、神奈川県で約1万6千人、愛知県で約1万3千人となっています。

出典:「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(厚生労働省)

介護業界で人手不足に陥る原因

深刻な人手不足の現状に陥っている介護業界ですが、その原因として賃金の低さゆえに、そもそも業界に人が来ないことがしばしば言われます。

また、人手不足に陥る原因としては、以下の2つがあげられます。

人間関係の悩み

人手不足の原因として、まずは離職率の高さが挙げられます。離職原因として多いのが「人間関係」の問題です。

公共財団法人介護労働安定センターの調査によると、介護の仕事を辞めた理由として、「職場の人間関係に問題があったため」が20%と最も高く、従業員や利用者等とのコミュニケーションや職場環境の問題が課題となっています。

介護はやりがいを感じる仕事である反面、感情労働であることから、人間関係によるストレスが高い職種でもあり、このようなストレスをいかに減らすことができるかが、人材不足解消のポイントとなります。

出典:「平成29年度 「介護労働実態調査」の結果」(公益財団法人 介護労働安定センター)

社会的評価の低さ

旧来『介護は家族が担う事で仕事ではない』といった穿った見方や、肉体労働的な側面に加えて精神的な負担も少なくないことで、社会的評価が低くみられるため、介護業界に人が集まらないこともあります。

いわゆる「きつい・汚い・給与が低い」の3Kといったように、介護業界にはネガティブなイメージがあることは否めません。

中でも、給与の低さが問題視されており、若手人材や未経験人材が介護職に踏み切るハードル自体が高くなっています。

職場における介護人材不足の解決策

深刻さを増す介護業界の現状ですが、介護を必要とする方は今後もますます増え続けています。それに伴い、介護事業所の社会的意義も日々高まっています。

ここからは、各事業所が取り組める人材不足の解決策について解説します。

職員が働きやすい環境を整える

働きやすい労働環境を整備すると、離職率低下に直結します。「職場のスタッフや利用者との関係がうまくいかない」などの悩みが多い介護業界では、心理的安全性の確保や、上司のサポートが非常に重要です。まずは、悩みを話せる場所を設けるように配慮しましょう。

また、IT・システムを導入し、シフト管理・勤怠管理アプリ、夜間には見守り支援ロボットを使用することなどで職員の負担軽減を図るなども効果的です。

介護現場では、一人が複数の利用者をケアするという環境も見受けられ、それにより心身ともに過重な負荷がかかります。

また、負荷を理由とした離職につながることも多いため、入居者10名ほどを1ユニットとして、数人のスタッフでケアをする「ユニットケア」を導入するなどして、人間関係の改善やストレスの抑制を図るのも良いでしょう。

介護業界のイメージアップに取り組む

介護業界は、給与面や体力・精神面での辛さなどでネガティブな印象がもたれているのが実情ですが、その一方で、やりがいや人とのつながりにあふれた魅力的な仕事です。

そのため、それぞれの介護施設・事業所が広報やPRなどで介護職の魅力を発信し、ポジティブなイメージを伝えることが大切です。

国も、介護人材確保対策として、介護職員の処遇改善を始めとする対策を打ち出しており、官民一体となって、介護業界に人材を呼び込む必要があります。

外国人雇用で介護人材不足を解消する

グローバル化に伴い、介護業界においても外国人雇用は拡大しています。外国人雇用に関する助成金や補助金も増えてきており、EPA・技能実習制度・特定技能などの制度も整いつつあります。

介護事業者は積極的に上記の制度を活用しながら、人材の確保に努めることが必要です。

資格取得の支援制度を充実させる

介護福祉士など介護に関する国家資格を取得することで、仕事の幅や給料の待遇も変わります。

事業所独自で資格取得支援制度やメンター制など、従業員が向上心を持って、仕事と資格取得に取り組める環境を設けるのもおすすめです。

まとめ

少子高齢化の社会情勢、介護職員にかかる過重ストレス、ネガティブイメージ等により人材不足にあえぐ介護業界ですが、各事業所が地道に課題解決に取り組むことで人材の定着を図ることは可能です。一方で、日々の仕事に忙殺されている経営者の方々は、業務改善に取り掛かる余裕がないのも現状です。

専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

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