介護職は離職率が高い?人手不足や人材流出を防ぐ方策を事業者向けに解説

介護事業は“3K”と呼ばれることもあり、世間でそのようなイメージが先行することで人材が定着しにくい=離職が多いと思われがちです。本記事では、その実態や『なぜ離職してしまうのか?』その理由と対策について解説していきます。


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介護職の離職率

高齢化に伴い、介護業界の需要は高まっていますが、人手不足は深刻な状況です。一方、これまで介護業界は離職率が高いとされてきましたが、公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査」によると、令和2年度の介護職の離職率は 14.9%と、平成17年度以降、最低の水準となりました。

全産業の平均離職率(厚労省調べ)は 15.6%であることから、やや低めの離職率となっており、介護業界に見られるイメージとかなり開きがあることがうかがえます。

出典:「令和2年度 介護労働実態調査結果について」(公益財団法人介護労働安定センター)

介護職員が離職する理由・原因4選

離職率が他業界とさほど変わらない介護業界ですが、介護労働安定センターの調べでは、介護事業所における人材の不足感は60.8%となっています。改善が進んでいるとはいえ、依然不足感の高さは否めません。なかでも訪問介護員の不足感は 80.1%と高い状態にあります。

ここでは、介護職員が離職する理由や原因を、4点に絞って解説します。また、離職による人手不足を回避する方策についても説明します。

勤務形態が不規則

介護業界では、不規則な勤務形態が多く見られるのが一般的です。入所施設の場合、24時間体制ということもあり、日勤・夜勤・早番・遅番など不規則なシフト勤務は致し方ありません。

夜勤は手当等で給与がアップすることから人気ではありますが、体力的な負担が高いシフトでもあります。年齢と共に、夜勤に身体的負担を感じたり、無理を押して働くことで腰痛やケガにつながったりすることもあります。また、不規則な勤務により、子育てや家庭生活との両立が難しくなる場合もあります。

介護の仕事を長く続けてもらうには、スタッフの健康状態を保つことが必須です。子育てや家庭生活との両立が難しいことが離職の原因になることもあり、事業所は日勤帯のみの働き方を提案することや、産休・育休制度の整備、フレックスタイム制の導入などを考えるのも良いでしょう。

フレックスタイム制は、子どものイベントなどで仕事を休まざるを得ない場合などでも、それに対して感じる従業員の心理的負担を和らげることができ、仕事の効率がアップするなど、企業側にとってもメリットが大きいです。

休みを取りにくい

人手不足により、休みを取りにくい職場も多々みられます。スタッフ自身も、自分が休みを取ることで同僚に迷惑がかかってしまうと、なかなか休暇の取得を口に出せずにいることもあります。

しかし、社会の流れとして、働き方改革は大きくあります。プライベートの充実は喫緊の課題であり、小さいお子さんのいる家庭は急に仕事を休まざるを得ないこともあります。プライベートが充実してこそ、仕事の効率もアップし、質の良いサービスが提供できます。

事業所側は、業務フローの改善で現場負担を軽減するなどの対策が求められています。介護のように人でなければ支援ができないもの以外は、なるべくITやシステム化を導入するのがポイントです。

人間関係によるストレス

介護業界は感情労働の現場であり、離職理由としても人間関係によるストレスは、常に高い位置を占めています。

人対人のお仕事である以上、介護職員と利用者の相性の問題もあります。この利用者と上手くいかないからといって、誰とでも上手くいかないということにはなりません。管理者がサポートすることで、介護職員のストレスは減少する場合も多くあります。

また、職場の人間関係も重要です。介護職に限らず、上司や同僚の言動により、従業員に強いストレスがかかることもあります。管理職自身が対人関係の研修を受け、適切に部下をサポートし、職場の人間関係を改善させることは重要です。

また、利用者が亡くなった場合に、精神に負担がかかることもあります。事業所側としては、定期的に面談を行い、スタッフの悩みを聞くなど、メンタルケアを図ることが離職率の低下につながるでしょう。知識と経験のある職場の先輩が、後輩をサポートするメンター制度の導入も効果的です。

給料が低い

介護業界はマイナスイメージが高く、いわゆる3K(きつい・きたない・給与が低い)と言われることもあります。

厚生労働省によると、介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅱ)を取得している事業所では、介護職員の平均給与額は令和3年9月で323,190円と、前年より7,780円アップしています。一般労働者の賃金が307,400円であることから、加算を取得している場合、介護業界はむしろ給与がやや高めであることが分かります。

処遇改善加算は事業所の売上を上げ、介護職員の給与アップに直結するため、加算の取得は事業所にとって大切な項目です。福利厚生面での充実も図れるため、おすすめです。

出典:「「介護職員処遇改善加算」のご案内」(厚生労働省)

【採用担当者必見】介護職に向く人材の特徴

離職を最小限に抑え、質の高いサービスを提供するには、介護職に適した人材が何より必要です。以下に、介護職に向く人材はどういった特徴があるのか、3点に絞り解説します。

体調管理ができる人

介護は身体が資本です。とりわけ24時間体制で利用者をサポートする施設では、夜勤など身体的にハードな業務でもあります。日勤・夜勤・早番・遅番など、不規則な勤務で体調を崩さないよう、自己の体調管理ができる人は介護職に向いています。

また、体力勝負の仕事の面もあることから、体力は重要なポイントです。身体介助など、体力的な負担が大きい業務のため、腰痛を発症する方も多く見られます。症状が悪化すると離職につながることもあるので、常に適切な介助を行う知識を得るなど、介護の基本を身に付けることが欠かせません。

そして、介護は感情労働でもあり、ストレスも必然的に高くなります。メンタルが強いこと、あるいはメンタル面で落ち込むことのないよう、自分自身の心のケアをしっかりとできることも重要です。

コミュニケーション能力が高い人

介護は人対人の仕事です。訪問介護では、とりわけ利用者のペースに合わせてコミュニケーションを取る必要があります。コミュニケーション能力が高い人、人と接することが好きな人は介護に向いています。

かつ、利用者は高齢者、人生の先輩であることも多く、敬意をもった応対が必要です。病気や障害を抱える方はコミュニケーションの方法もさまざまあり、意思疎通に時間を有することもあります。

さらに、介護は介助スタッフや医療関係者と上手に連携を取らなくてはいけません。人に寄り添い、過度に依存しないなど適切な距離感を保ち、相手の気持ちを考えることができる方は信頼関係の構築もスムーズに行え、介護職に向いているでしょう。

現場対応能力が高い人

介護職では価値観が異なる人と向き合い、それぞれに合ったサポートを必要とするため、マニュアルで得た知識や綺麗事だけではできない仕事です。命を預かる重大な仕事のため、現場で臨機応変に対応できる人材は、利用者・スタッフの信頼を勝ち得ることもでき、戦力となります。

さらに「介護福祉士」などの資格があれば、利用者からも安心を獲得でき、事業所にとっては即戦力となる可能性が高いです。

まとめ:介護人材の定着に課題があるなら「介護コンサルティング」

介護コンサルティングでは、人材定着のための施策なども相談できます。人材確保にお悩みがあるなら、福祉サービスに強い専門のコンサルティングを受けるのがおすすめです。

土屋総研は、日本全国で福祉に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。福祉サービスを利用する方の地域生活を維持することを目的として、共に地域を支える同業者へのコンサルティングも比較的安価で行っています。

土屋グループは、多数の事業承継、M&A実績や、同業者へのコンサルティング実績があり、グループ内にも人材教育研修機関を有しているなど、事業の立て直しや人材不足、後継者不足、事業承継、事業の買収・譲渡(M&A)など総合的なサポートが可能です。ぜひご相談ください。

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