介護報酬改定が2024年4月に実施見込み|デイサービスへの影響は?

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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2024年4月、介護業界は大きな変革を迎えることになります。この変革とは、介護報酬の改定です。特にデイサービスを運営する事業者にとって、この改定は経営戦略を見直す重要な契機となるでしょう。本記事では、2024年度の介護報酬改定がデイサービスにどのような影響を及ぼすのか、そして事業者がどのように対応すべきかを詳しく解説します。

改正に関する情報は厚生労働省のサイト内にある社会保障審議会のページから確認できますので、適宜最新情報をチェックすることが望ましいです。

2024年度に予定されている介護報酬改定とは

2024年度の介護報酬改定は、介護サービスの質の向上と経済的持続可能性の確保を目指しています。この改定により、デイサービスを含む多くの介護サービスの報酬体系が見直されることが予想されます。具体的には、サービスの質に応じた報酬の差別化や、効率的なサービス提供を促進するための新たな指標の導入が検討されています。

介護分野から異業種への人材流出による人材難に対して個々の経営努力だけでは対応限界といった状況もあることから大幅な介護報酬増額の要望も挙がっています。

2024年度の介護報酬改定に向けた国の方針|デイサービスへの影響は?

2024年度の介護報酬改定は、デイサービス事業にとって大きな影響を及ぼすと考えられます。これらの変更に適応するためには、事業者はサービスの質の向上、人材育成、地域社会との連携強化、経営の効率化など、多方面での取り組みが必要となると考えられます。

長期方針としては、財務省が提示している介護サービス利用者の「自己負担割合・給付範囲の見直し」も検討されており、自己負担額が変動すると、デイサービスの利用客が増減することも示唆されています。

また、社会保障審議会では、下記の4つの視点がひとつの方向性として示されていますのでご確認ください。

※あくまで確定内容ではありませんので、参考とされることをおすすめします。

 

①地域包括ケアシステムの深化・推進

地域包括ケアシステムの推進は、介護サービスの地域密着化を目指しています。デイサービス事業者は、地域の特性に合わせたサービス提供が求められるようになります。これにより、地域のニーズに応じたサービス展開が重要となってくるのです。

 

②自立支援・重度化防止に向けた対応

自立支援や重度化防止の取り組みは、利用者のQOL(生活の質)の向上を目指しています。デイサービスでは、機能訓練や生活支援プログラムの充実が求められることになります。

これにより、専門性の高いスタッフの確保や研修の強化が必要になるでしょう。特にLIFE(科学的介護情報システム)を活用した質の高い介護を進めるための課題も多いものの、関連加算も大きいため、事業所としても前向きな取り組みが必要となります。

参考:「科学的介護情報システム(LIFE)について」(厚生労働省)

 

③良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり

職場環境の改善は、サービスの質を高めるために不可欠です。デイサービス事業者は、職員の働きやすさを向上させるための施策を講じる必要があります。これには、労働条件の改善や職員のキャリアパスの構築などが含まれます。

 

④制度の安定性・持続可能性の確保

介護報酬の改定は、制度の持続可能性を考慮して行われます。デイサービス事業者は、コスト管理や効率的な運営がより一層重要になります。また、新しい報酬体系に適応するための経営戦略の見直しも必要です。

①でも記載したLIFEやICTの活用・介護ロボットの運用などを含め、サービスの質の向上と業務負担の軽減にも寄与できるような仕組みを継続的に取り組む必要性があると言われています。

これまでの介護保険制度の変遷と介護報酬・デイサービスの関係

過去、日本では介護保険制度における変遷の都度、介護事業者は高齢化する社会に対して、さまざまなアプローチを図ってきました。その歴史についても触れていきましょう。

 

老人福祉法の制定(1963年~)

1963年の老人福祉法の制定は、それに先んじた1961年の日本初の特別養護老人ホームの立ち上げ、翌1962年の訪問介護・ホームヘルプサービス創設に始まり、日本の高齢者福祉の基盤を築いた出発点です。この状況は、高度経済成長に伴う、家庭の“核家族化”が加速したことで家族内介護サポートが困難になった事が背景にあります。この法律の制定により、高齢者の福祉サービスが整備され始めました。

そこから、短期入所生活介護・ショートステイ・通所介護・デイサービスの創設(1970年代)や老人保健法の改正や社会福祉士法及び介護福祉士法の制定(1980年代後半)に続き、21世紀の到来を前に1997年には介護保険法が成立しました。

 

介護保険法の制定(2000年)

そして、2000年にはこの介護保険法が施行されることとなり、自治体主体だった“措置制度”から利用者主体“契約制度”に変わったことで、介護サービスの普及と質の向上をもたらしました。デイサービスもこの法律によって大きく発展し、多様なサービスが提供されるようになりました。

 

コロナ禍等による、介護報酬の臨時改定(2022年10月)

2022年10月の介護報酬の臨時改定は、コロナ禍における介護サービスの維持と支援を目的としています。デイサービス事業者は、この改定を通じて、新たな運営の課題と対応策を学ぶことができました。

近年実施された介護関連の法改正

近年、介護サービスの質の向上、介護職員の待遇改善、制度の持続可能性の確保といった介護関連における法改正が目まぐるしく実施されています。

また、コロナ禍における臨時措置は、緊急時における介護サービスの継続性を保つための重要な措置も講じられています。これらの改正は、介護サービスの提供者、利用者、そして介護職員に多大な影響を与えています。下記にさまざまな実施の項目を列挙しました。

 

【介護報酬】「介護職員等ベースアップ等支援加算」の新設

岸田政権の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」により、介護職員1人当たり月額平均9,000円の賃金引上げを実施する狙いとして「介護職員等ベースアップ等支援加算」が新設され、職員のモチベーション向上とサービスの質の向上に寄与しています。

出典:「令和4年度介護報酬改定について」(厚生労働省)

 

【介護保険法】高額介護サービス費の引き上げ

高額介護サービス費(介護費の自己負担限度額を超えた部分が国から払い戻される制度)の引き上げは、利用者の自己負担増とサービス利用の見直しを促しています。

デイサービス事業者は、利用者の経済的負担を考慮したサービス提供が求められます。
※「自己負担限度額」が最大44,400円であったのが140,100円に引き上げ(2021年8月〜)
→自己負担限度額は利用者の所得に応じて決定

出典:「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」(厚生労働省)

 

【後期高齢者医療制度】利用者の所得に応じた自己負担割合の引き上げ

後期高齢者医療制度における自己負担割合の引き上げは、高齢者の医療費負担を増加させています。これにより、デイサービスの利用者層やサービス内容にも影響が出る可能性があります。

まとめ

2024年度の介護報酬改定は、デイサービス事業者にとって大きな挑戦ですが、同時にサービスの質を向上させ、経営を安定させるチャンスでもあります。事業者は、改定の内容を正確に理解し、柔軟な対応策を講じることが重要です。また、職員の教育と福利厚生の向上、地域社会との連携強化も忘れてはなりません。これらの取り組みにより、デイサービスは今後も高齢者の生活を支える重要な役割を果たし続けることでしょう。

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