2024年度介護報酬改定|訪問看護への影響と義務化事項について紹介

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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2024年度の介護報酬改定は、訪問看護事業にとって重要な節目となります。この改定は、サービスの質の向上、効率性の強化、そして持続可能な経営を目指す事業所にとって、大きなチャレンジとなるでしょう。本記事では、2024年度の介護報酬改定が訪問看護事業にどのような影響を及ぼすのか、そして事業所がどのように対応すべきかを詳しく解説します。なお、改正に関する情報は厚生労働省のサイト内にある社会保障審議会のページから確認できますので、最新情報を細かくチェックすることをおすすめします。

2024年度に介護報酬改定が実施される

2024年度の介護報酬改定は、介護サービス全体の質の向上と経済的持続可能性の確保を目指しています。この改定により、訪問看護を含む多くの介護サービスの報酬体系が見直されることが予想されます。

改定内容の詳細は、現在国会で審議中(2023年11月時点)のため未確定な部分も少なからず存在しますが、2024年は診療報酬改定とも重なる重要な年のため、下記ページのように情報収集が可能なページが設けられていますので体制を整えておきましょう。

参考:「社会保障審議会(介護給付費分科会)」(厚生労働省)

2024年度の介護報酬改定における訪問看護の位置付け

訪問看護は、在宅介護の重要な一環として、今回の報酬改定で特に注目される分野です。2024年度には、医療・介護・障害福祉の3分野で報酬体系が改定予定となっていて「介護報酬」と「診療報酬」は訪問看護の収入に直結する改定が行われるため、利益率に大きな影響を受ける可能性があります。

サービスの質の向上、利用者の自立支援、そして地域包括ケアシステムへの貢献が重視されるでしょう。

2024年度の介護報酬改定に向けて審議されている4つのポイント

報酬改定に伴い、4つのポイントに対して、ご自身の事業所の運営が指針に沿っているか把握する上で、確定内容ではありませんが、社会保障審議会では、下記の4つの視点がひとつの方向性として示されていますのでご確認してください。

※あくまで確定内容ではありませんので、参考とされることをおすすめします。

 

地域包括ケアシステムの深化・推進

地域包括ケアシステムの一環として、訪問看護事業所は地域社会との連携を強化する必要があります。これには、地域の医療機関や他の介護サービス提供者との協力が含まれます。

・医療・介護連携による医療ニーズの高い方や看取りへの対応
・感染症や災害への対応
・高齢者虐待防止等の取組
・認知症への対応

これらへの対応は基本的ではあるものの、今後事業運営を継続して、ニーズに最大限マッチできる事業所であることを示す、最大のポイントとも言えます。

 

自立支援・重度化防止に向けた対応

自立支援や重度化防止の取り組みは、利用者のQOL(生活の質)の向上を目指しています。訪問看護では、機能訓練や生活支援プログラムの充実が求められることになります。

・リハビリテーション
・口腔・栄養の一体的取組
・LIFEを活用した質の高い介護

これらに関しては、超高齢化社会へ突入する日本にとっては健康寿命を伸ばすこと、そして長期的な(支援を含む)自立によるQOLの向上につながるため、訪問看護が地域と密接な関係を継続的に保ち続ける要素となります。

 

良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり

職場環境の改善は、サービスの質を高めるために不可欠です。訪問看護事業所は、職員の働きやすさを向上させるための施策を講じる必要があります。

・介護ロボットの導入
・ICT等やいわゆる介護助手の活用によるサービスの質の向上と業務負担の軽減
・経営の協働化等や、テレワークなどの柔軟な働き方
・サービス提供に関する取組

訪問看護の担い手である従業員の働き方に対しても、働きやすさや高効率体制を維持する上で近隣の病院やクリニックとの提携や、資本ノウハウを利活用してアナログからの脱却を図る訪問看護ステーションも増えているため、積極的に取り組む要素だと考えられます。

 

制度の安定性・持続可能性の確保

介護報酬の改定は、制度の持続可能性を考慮して行われます。訪問看護事業所は、コスト管理や効率的な運営がより一層重要になります。

・評価の適正化、重点化
・報酬体系の整理、簡素化

介護保険と医療保険の主な給付調整の一例として、以下が挙げられています。
・利用者の年齢や疾患、状態によって医療保険又は介護保険の適応となるが、
介護保険の給付は医療保険の給付に優先する。

•要介護被保険者等については、末期の悪性腫瘍、難病患者、急性増悪等による
主治医の指示があった場合などに限り、医療保険の給付により訪問看護が行われる。

こういったことからも、大きな体制の変更が発生した際も柔軟に対応できるような準備として、運営の効率化は優先すべきだと解されています。

2024年度介護報酬改定のスケジュール

2024年度の介護報酬改定の具体的なスケジュールは、厚生労働省からの発表に基づいています。事業所は、このスケジュールに沿って準備を進める必要があります。

出典:「介護報酬改定の施行時期について(P2より)」(厚生労働省)

2024年4月には改定後のサービス提供が開始されることからも、あまり時間は残っていない状況だと言えます。迅速な対応が求められています。

【介護報酬改定と合わせて対応必須】2024年度から訪問看護に適用される3つの義務化

医療・介護・障害福祉の報酬体系「トリプル」改定が行われるにあたり、訪問看護はすべての分野が対象となり得ることからも、現場対応は非常に大きな課題となります。

現時点で理解していて欲しい内容としては、
・経過措置後に完全義務化となる実務面
・すでに実施決定もしくはスタートしている改革内容への対応

この2点となります。ここから、前者の「完全義務化」の内容確認と事前準備が万全かどうかをチェックしていきましょう。

 

業務継続計画(BCP)の策定

災害や緊急事態に備えた業務継続計画(BCP)の策定が義務化されます。これにより、事業所は万が一の事態にも対応できる体制を整える必要があります。

(1)各事業所で感染症や非常災害の発生時を想定したBCPを策定すること
(2)(1)を全従事者に周知すること
(3)(1)の計画に沿った研修・訓練を実施すること
この3点は必須となります。

(1)においては、指示命令系統や職員の参集条件の明確化と共に代替ライフライン(電気・ガスなどでも使える発電機等)の確保や、各種データバックアップ方法についても記載が必要です。

(2)においては、(1)で策定したBCPに対する研修(周知啓発含む)を年1回実施することに加え、新規採用時にも別途行うことが推奨されています。

※実施した研修については、その内容の記録を残すことが求められます。

(3)についてはBCPとして策定した内容が適切に反映されているのかといった“BCM”の視点で(2)のブラッシュアップが必要となります。

一般的なビジネスの世界で言われる“PDCA”を回しながら、練磨させていくことが重要な要素となります。

 

感染症対策

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、感染症対策の強化が求められています。訪問看護事業所は、感染予防策の徹底や職員の教育を行う必要があります。

(1)感染対策を検討するための委員会の開催
(2)感染症対策のための指針の整備
(3)指針にもとづいた研修・訓練の実施
この3点が重要です。

感染症対策に関してもBCPとまったく同様に取り組む必要があります。災害を起点にしているBCPと違う点としては、6か月に1回以上の定期開催が求められます。

こちらに関しては、厚生労働省が『介護現場における感染対策の手引き』を公開していますので、資料を参考にして感染症の発生およびまん延防止に努めるように対策を整えていく必要があります。

参考:「介護現場における感染対策の手引き」(厚生労働省)

 

高齢者虐待防止の推進

高齢者虐待防止のための取り組みが強化されます。事業所は、職員への教育や対策の策定を行う必要があります。

(1)委員会の開催
(2)指針の整備
(3)従事者への研修
(4)専任の担当者の配置
(5)(1)~(4)の措置事項の運営規程への記載

虐待は昨今非常に問題となっており、防止するための手立ては必須事項です。

(1)は、虐待発生防止や早期発見に加え、万が一虐待が発生した時の再発防止を目的とした委員会の設置と開催についてです。

管理職を含む幅広い職種を集めて定期開催が必要となります。場合によっては他事業所と連携して開催したり、虐待防止をテーマとして他団体と一体的に行ったりすることも良いでしょう。

(2)は、(1)の委員会での内容をもとに策定します。同指針には、事業所としての虐待防止にかかる基本的な考え方に加え、発生時の対応方法、相談や報告体制にかかる事項も含まれます。

(3)は、(1)で策定した研修プログラムに沿った研修の実施となります。年1回以上定期開催する事に加えて、新規採用時の随時開催が必要です。ここでも、研修内容を記録に残すことが求められます。

(4)は、具体的には、(1)の委員会の責任者と同一の従事者が務めることが望ましいとされています。

なお、障害福祉分野では「完全義務化」が施行されていて、(1)と(3)~(5)が介護保険の規定と同様になっています。(2)についても、障害福祉分野では倫理綱領や行動指針の策定が必須となっているので、そこに含まれる内容であると考えて良いでしょう。

まとめ

2024年度の介護報酬改定は、訪問看護事業にとって大きな挑戦ですが、同時にサービスの質を向上させ、経営を安定させるチャンスでもあります。事業所は、改定の内容を正確に理解し、柔軟な対応策を講じることが重要です。また、職員の教育と福利厚生の向上、地域社会との連携強化も忘れてはなりません。これらの取り組みにより、訪問看護は今後も高齢者の生活を支える重要な役割を果たし続けることでしょう。

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