実地(運営)指導に引っかかるとどうなる?必要書類や対策を解説

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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介護業界には、行政による実地(運営)指導があり、これに引っかかると経営に大きなダメージがもたらされます。事業所・施設を経営していくには、対策する必要があります。

この記事では、実地指導に必要な書類や対策等について解説します。

実地(運営)指導に引っかかるとどうなる?指導されたときにすべきこと

実地(運営)指導とは、都道府県や市町村が介護施設・事業所に対して行う行政指導です。都道府県や区市町村の担当者が直接、事業所に出向き、適正な事業運営が行われているかを確認します。

実施指導は令和4年度から運営指導に名称が変更されました。コロナ禍による感染症対策のため、オンラインでの指導が可能となったことによるものです。

実地(運営)指導はサービスの質の確保保険給付の適正化を目的に行われ、介護保険施設等では6年に1回以上、施設系サービスや居住系サービスについては3年に1回の頻度が望ましいとされています。

実地(運営)指導では、通知が届くと、事業者の基本情報を記入するシートならびに勤務形態一覧表などの資料を事前に提出する必要があります。指導当日に指摘される項目は、主に介護報酬の算定、設備面、サービス面、人員配置などとなります。

また、指導の方法として、運営指導の他に講義形式で行われる集団指導もあります。以前は講習会形式で、事業所が一堂に会して情報のインプットを図るべく実施されてきましたが、令和4年度よりはオンラインでの実施も可能となりました。集団指導は年1回以上の実施となります。

改善指導

疑問や事前提出書類に不備があるなど、実地指導に引っかかった場合、まずはその場で口頭による改善指導が行われることになります。

指摘事項とその根拠を記載した書面が交付されることもあります。

改善勧告

上記の指導に従わない場合は、違反内容に応じて改善勧告の手続きに進むため、書面での指導内容に指摘がない場合であっても、事業所内で指摘報告を共有しておくことは重要です。

改善命令

改善勧告を受けた事業所が、期限内に改善の措置を取らなかった場合、改善命令が出されます。各都道府県のHP上に事業所名ならびに改善命令の内容等が公示されることとなります。

指定の取り消し・効力停止

改善命令に従わない場合は、指定の取り消しや効力停止となります。効力を停止されている間は事業を営むことができず、再度事業を始めようとする際には都道府県知事に申請する必要があります。

介護報酬の返還

介護報酬算定を不正に水増ししたり、誤って請求したりしていた場合は返還が求められます。その場合、事実確認にあたって介護保険関連の書類を提出するケースもあります。

これらの書類は、ほとんどの自治体で5年間の保管が義務付けられているため、破棄しないように気を付ける必要があります。

実地(運営)指導に引っかからないための対策

指定の取り消しに至ることもある実地(運営)指導ですが、ここでは実地指導に引っかからないための対策について解説します。

法令遵守を徹底する

まずは法令順守を徹底することです。介護保険法、障害者総合支援法、労働基準法、個人情報保護法などの法令に則り、コンプライアンスを守って運営の適正化を図りましょう。

人員配置を十分に満たしているか、不正請求をしていないかなどに関しては、厚生労働省の自己点検表を参考にするのもおすすめです。

職員研修を継続して行う

実地指導では、介護職員の教育体制が整っているかもチェックされます。教育が行き届いていない場合、利用者への適切なケアが提供できず、トラブルに発展するケースがあるためです。

近年では、高齢者に対する虐待が社会問題となっているため、実地(運営)指導において、虐待や拘束などがないかについて確認が行われます。介護事業所においても、虐待防止に関する意識の向上は必須であり、継続的な職員研修が大切です。

また、虐待・拘束の課題を解決するための具体策を立て、きちんと紙面に残しておきましょう。

日々の介護記録をしっかり記載する

介護事業の形態によっても異なりますが、実地指導で必要とされる書類として、以下が挙げられます。

日々の経過記録

日々の経過記録は利用者に対して、いつ・誰が・どのような介助を実施したのか、その結果利用者のケアにどのような変化があったのかを適切に記録することで利用者が均一な介護を受けることができた履歴となります。

また、記録については公的な記録として取り扱いがなされるため、手書きの場合は、消えないボールペンで記録を残すことや、専用のITツールなどを用いて電子的に記録することで証跡となるため有用とされています。

ケアプラン

ケアプランに沿った介助がなされているか?これも重要なポイントです。ケアマネジャーが作成したケアプランの内容に対して適切な介護が実施されていることは大前提です。

各種計画書

上記のケアプランに関してもそうですが、定期的なモニタリングに伴い、実際に利用者本人やそのご家族がどういった希望を持っていらっしゃるのか、また、ご本人のADLに併せた部分も含めた聞き取りを行っています。

現在の計画書におけるサービス内容が適切なのか、場合によっては計画書の内容変更も必要となります。

介護保険被保険者証情報

ケアマネジャーがケアプランを作成する上では、利用者本人のモニタリングやご家族からの聞き取りを通じて現在のADL状況や、理想のケアの在り方を模索しています。事業者はその内容をもとにケアを行っていますが、公的サービスであることからも介護保険被保険者証のコピー等は必ず保管することが求められます。

また、要介護度の再審査に伴い、記載内容が変更となった場合は、最新の被保険者証のコピーを提供いただき、保管しておくことも求められます。

こうした個人情報のファイルは適切に管理しておく必要があります。

必要な書類をあらかじめ整理する

実地(運営)指導の通知が届いてから準備を始めると、書類の確認作業が膨大になり、抜けや記入漏れが出てしまう原因にもなります。それを防ぐためにも、ファイルの適切な管理は欠かせません。

また、必要な書類を整理しておき、定期的にそれらが適正かどうか確認することも重要です。

サービス内容の説明責任を徹底する

実地指導においては、サービス内容が適切に実施されているかという側面に加えて、利用者本人やそのご家族にもどういったケアを提供するのか説明があり、合意形成された上でサービスの提供が行われているかも指摘事項として挙がります。

特に利用者本人がご高齢で判断能力に課題を残すような場合や、ご家族が別居といったケースにおいても、意思確認を行った記録(主に署名)が必要です。

また、それが叶わなかった場合においても、なぜ同意を得ることができなかったのかという理由や、その日時、その際にどういった対応を実施したのか記録に残すことが求められます。

まとめ

実地(運営)指導の対策に不安を感じる経営者も多くおられると思います。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。また、専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

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