「新人教育や職員のスキルアップがうまくいかない」「そもそもどう取り組めば良いのだろう……」そんな悩みを抱えている介護事業者は多いのではないでしょうか。この記事では、そんなときに役立つ新人教育チェックシートについてご紹介します。
介護業務向けの新人教育チェックシートの雛型
新人教育チェックシートとは「新人が必要なスキルや知識を習得しているか」「どのような点が不足しているのか」などを評価するツールです。チェック項目がリスト化されたもので、定量的な評価を行うのに有効です。新人教育の効率化も図れるとされています。
厚生労働省では、介護業務に活用できる「職業能力評価シート(在宅介護業)」のひな形を公開しています。作成の際は、こちらを参考にすると良いでしょう。
介護業務向けの新人教育チェックシートの作成手順
では、実際にどのように作成していけば良いのでしょうか。具体的な手順を3ステップで解説します。
1.使用用途を明確化する
まず、なぜチェックシートが必要なのかを再整理し、「誰が」「いつ」「どのように」使うのかを明確にしましょう。シートを作成した目的が明確であることが最重要ポイントとなります。
- ・新人がセルフチェックするためのシートなのか?
- ・人事担当者が評価に活用するシートなのか?
といった使用用途によって、作成する上での基準や特徴が大きく異なります。また、従事している業務内容によって部署ごとに別のシートを作成するのも良いでしょう。
2.チェック項目を設定する
次に、対象の職員が身に着けるべきスキルや知識を洗い出し、チェック項目を設定していきます。
基本的な業務の理解度、接遇マナー、介護技術、コミュニケーション、リスクマネジメントなど、必要な要素を挙げ、それぞれ細分化していきます。前述した厚労省の「職業能力評価シート」のひな形と、自社独自の要素の両方を考慮しながら決定するのが有効です。
基本業務の理解度に関するチェックリスト記載例
- ・業務内容の把握度
- ・社内規定の理解度
- ・顧客対応マニュアルの理解度
基本的な介護技術に関するチェックリスト記載例
- ・食事介助、入浴介助、排泄介助、更衣介助、移動介助
- ・体位変換、車椅子の操作
- ・掃除、買い物代行
接遇マナーのチェックリスト記載例
- ・言葉遣い
- ・身だしなみ
リスクマネジメントの技術に関するチェックリスト記載例
- ・レクリエーションの目的や効果についての理解
- ・危険のないようレクをサポートする能力
また、介護職に必要な要素のひとつが利用者との相互理解です。承諾が得られる場合、利用者にチェックしてもらう項目を設けるのも検討に値します。
これを行うことで、自身の習熟度と利用者側が求めるレベルの乖離が明確になる事で進捗速度を高める効果にもつながります。
3.評価方法を設定する
最後に、設定した項目を測定・評価する方法を決めます。
数値で評価する方法もありますし、「達成」「部分達成」「未達成」などの3段階評価や、その間に評価する基準を設けて細分化する手法もあります。
項目をレベル別に分類して、本人が達成できたものにチェックを入れていくアプローチも良いでしょう。
また、前述の通り、本人や事業者の評価だけでなく、利用者側の評価も組み込む方法を検討しましょう。具体的には、利用者にシートを提供して記入してもらったり、担当者(やそのメンターにあたる職員)が利用者にヒアリングしたりするなど、状況に合わせた手段を選ぶことが重要です。
介護業務における新人教育チェックシート導入のメリット
実際にチェックシートを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下、4つの点について解説いたします。
新人にとって難易度の高い業務を把握できる
定量的な測定により、多くの新人がつまずきやすい業務の種類を把握できます。新人教育で特に時間を割くべき項目が明確になると、研修の進捗が見通しやすくなり、教育コストの削減にもつながります。
新人教育の進捗を社内で共有できる
業務の覚えやすさや慣れ具合は、職員によって異なります。チェックシートの導入により、各職員の進捗が客観的に確認しやすくなります。
新人職員が「教わっていない業務を任された」といった不満や、先輩職員が「どの業務を頼んで良いか分からない」という悩みも解消されるでしょう。
効果的な人員配置につなげられる
記入されたチェックシートは、そのまま人事資料として利用可能です。職員の得意・不得意を理解することで、個々の適性に合わせた配置が検討でき、人事担当者の業務効率化にも寄与します。
サービスの質を維持できる
業務には個人差がつきものですが、共通のチェックシートを活用することで、業務の抜け漏れや改善すべき点が明確になります。適切に対処すれば、一定水準のサービス品質を確保でき、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
介護業務で新人教育チェックシートを導入する際の注意点
新人教育チェックシートには多くのメリットがありますが、「導入しただけで完了」というわけではありません。ここでは、導入時の注意点について解説します。
双方向のコミュニケーションを重視する
単にチェック項目を埋めるだけでは不十分です。重要なのは、チェックシートを活用したコミュニケーションです。
リストだけでは把握しきれない側面をヒアリングすることで、人事側と新人側の認識のズレを防ぐことができます。
チェックシート後のフォローアップを実施する
チェックシートの記入後は、継続的なフォローアップが必要です。未達成とされた項目については、原因や改善策をフィードバックし、経過観察を行います。
また、チェックシートの内容に加えて、上司や同僚など多面的な評価を取り入れる「360度評価」も効果的です。職員がスキルアップした場合、給与などの待遇に反映させることで、モチベーション向上にもつながります。
チェックシートの項目を定期的に見直す
チェックシートは作成して終わりではありません。顧客ニーズの変化や社会の動向、新人の特性などを考慮し、定期的にアップデートすることが重要です。
まとめ
介護は、生命に関わる貴重な仕事です。新人教育は、これに密接に関わる重要な業務です。十分なフォローアップが行えれば、離職防止にも寄与することでしょう。新人教育チェックシートは、その手助けとなる貴重なツールです。
しかしながら、新人教育や職員のスキルアップは容易ではありません。人事の問題を抱える場合、福祉サービスに精通した専門企業のコンサルティングを検討することも選択肢です。専門的な知識や豊富な経験から得られるノウハウは、将来の経営に役立つことでしょう。
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