訪問介護の売り上げの全国平均
訪問介護は、介護士が利用者の自宅に訪問し、30分~1時間といった短時間のサービスを提供するもので、利用者から原則1割の介護保険料、国から9割の介護報酬を受ける仕組みとなっています。
厚生労働省の令和4年度「介護事業経営概況調査結果」によると、訪問介護事業所の1月当たりの平均収入は、300万3,000円となっています。
訪問介護員常勤換算1人当たり訪問回数は119.6回です。
収支差率は6.1%と、介護老人福祉施設(1.3%)、介護老人保健施設(1.9%)など他のサービスに比べて高いことが特徴です。
出典:「令和4年度介護事業経営概況調査の概要」(厚生労働省)
訪問介護の売り上げが上がらない原因
介護事業の売上が落ち込むには理由があります。売上を上げる要因を探るためにも、ここではその原因について詳しく解説します。
訪問回数が少ない
介護事業の売上が落ち込んでいる原因として、訪問回数が少ないことがあげられます。訪問介護事業では、収益は介護保険料と介護報酬が多くを占め、売上は「サービス単価×利用回数×利用者数」となります。
そのため、売上をアップするには、サービス単価・利用回数・利用者数のいずれかを増やさねばなりません。なかでも、赤字と黒字を分ける要因となるのが、訪問回数の差です。訪問介護では、支出の大半は人件費が占めますが、人件費はサービスの要であることから削るのは難しいのが現状です。
このため、訪問回数が少なければ収益で人件費を賄えず、赤字に陥ることになります。
新型コロナウイルスによる影響
近年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症の影響で、通所介護・通所リハビリテーション・短期入所生活介護は一時的な閉鎖を余儀なくされるなどの影響で利益率が大きく減少しました。
一方、これら通所系サービスと比較すると、訪問系サービスにおいては新型コロナウイルス感染症の影響は少ないものの、コロナ禍で人手不足が深刻化し、人件費が高まったことで、利益率の減少が見受けられます。
ただし、訪問介護の需要自体は増えているといえるでしょう。
訪問介護員が不足している
訪問介護の利用者数は、介護保険施行当初から約20年間でほぼ倍増しています。一方で、訪問介護員の数は減少傾向にあり、有効求人場率も平成20年度では約15倍と、人手不足感が否めません。
訪問介護における売上は「サービス単価×利用回数×利用者数」となり、利用者数の増大は事業所の利益につながります。しかし、人材不足により利用者を受け入れることが厳しいのが訪問介護の現状です。
また、法改正の影響で、訪問介護員の1回あたりサービス提供時間も45分以下が一般的と、制度が始まった当初と比べて短くなっています。
訪問時間が短くなれば、それに比例して収入も減少します。複数の利用者を掛け持ちすることが多い訪問介護業界では、利用者が増えるにつれ、移動・待機時間も長くなり、収入が不安定になることも多々あるのです。
こうした労働条件の不安定さが、訪問介護職員の成り手不足につながっているといえるでしょう。
訪問介護の売り上げを上げる方法
訪問介護の売上が上がらない原因として、訪問回数の少なさや訪問介護員の不足が大きくありますが、ここからは、それらの対策も含めながら、売上を上げる方法を多角的に解説します。
利用回数を増やす
訪問介護の売上をアップさせるには、まずは利用回数を増やすことが必要です。週に1回の利用者であれば、週に3回利用してもらうことで売上はその分アップします。
そのためには、利用者満足度の向上がポイントです。心地よいサービスを提供できれば、おのずと利用回数の増加につながります。
サービスの継続や、頻繁な利用につなげるためには、介護職員自身が「利用者は何を希望し、喜ばれる対応は何か」「安心してもらうには何が必要か」について意識してケアをすることが最重要課題です。
加算をしっかり獲得する
訪問介護の加算取得も事業所の売上アップに大きく寄与します。
加算の種類としては、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護惻隠等ベースアップ等支援加算」など様々ありますが、とりわけ「特定事業所加算」を取得すると、売上が5~20%アップします。
ただし、加算のための算定要件も種々あり、定期的な会議や個別研修などが義務付けられます。もっとも、算定要件を満たすレベルの高い事業所になることは、今後の介護業界を生き抜くためにも必須であることから、加算取得は介護経営者にとってなくてはならない方法です。
単価をアップする
単価のアップも、売上の増加につながります。単価を上げる方法として、介護度の高い利用者の獲得があげられ、要介護度1よりも要介護度5の利用者を受け入れる方が単価も上がります。
ただし、介護度が高ければ、対応する人材も力量が問われます。事業所側は研修等で人材の育成を行うほか、利用者に質の良いサービスを提供できるコミュニケーション・マニュアルを策定するなども大切です。
質の高いサービスを目指す
利用回数・加算の取得・単価のアップのいずれにおいても必要なのが、質の高いサービスです。それが、何よりも利用者の獲得につながります。
質の高いサービスを提供するためにも、マネジメント人材の育成は必須です。また、介護職員に対する教育や研修、そして職員・利用者共に安心できる体制を築くため、リスクマネジメントの徹底も必要でしょう。
加えて、職員の幸福度が高ければ、その分、質の良いサービスの提供にもつながるため、職場の満足度を向上させることも大切です。
競合の多い介護業界で生き抜くためにも、事業者側はひとつの事業を行うのみならず、他界スキルを有する人材を育成し、より専門性の高い分野や幅の広い分野に進出するなど、多角的な事業展開も重要です。
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