介護事業で補助金や助成金は活用できる?対象となる制度を目的別で紹介

薄利と言われる介護事業。赤字経営での倒産や廃業も少なくありません。近隣住民のニーズを叶えるべく日夜東奔西走する経営者の皆さんに是非とも知って頂きたい介護事業に特化した制度があります。 人材確保や施設整備に頭を悩ませている事業者さんと、余裕をもって事業に取り組める事業者さんの違いはこれら制度を利活用できているかも一つです。 この記事では介護事業で補助金や助成金は活用できる?対象となる制度を目的別で紹介します。


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介護事業で活用できる補助金・助成金とは?

介護事業補助金・助成金は、国や自治体が実施する制度で、制度ごとの要件を満たした企業や事業に対して、かかった費用の一部または全額を支援するものです。

どちらも返還義務はないため、事業の再生や拡大の資金繰りに困っている企業は積極的に活用することをおすすめします。

補助金制度と助成金制度の違いは?

補助金と助成金は、支給額や支給されるタイミング、採択条件などが異なります。

補助金 助成金
実施機関 主に経済産業省・中小企業庁 主に厚生労働省
公募期間 原則1か月以内 通年・半年など
審査 形式要件を満すことが必須
提案内容の審査有
形式要件を満すことが必須
実地審査を行う場合も有
採択 採択された場合に支給有 条件を満せば受給可
支給額 必ず全ての経費が交付されるわけではなく、経費や補助の割合、上限額などの確認が必要 多くは制度ごとに一律
支給時期 後払いが多い 助成金による

補助金・助成金制度の探し方は?

介護事業で活用できる補助金・助成金は、内容や募集期間などが随時変更されます。活用したい際は、その時点で実施されている補助金・助成金制度を、各省庁や自治体、介護関連団体などの公式サイトで調べましょう。

また、中小企業向けに補助金や助成金制度を始めとする情報提供をしている「J-Net21」も活用できます。

介護事業の【人材確保・育成】に関する補助金・助成金

介護事業者が人材を確保やその育成を行う上では、様々な補助金や助成金の制度があります。
介護職員等養成支援事業・人材確保等支援助成金・介護職員等募集・定着支援事業・介護人材育成研修費補助金があります。これらを上手く活用することで効率的な人材リソース創出を図ることが可能です。

働き方改革推進支援助成金

残業や休日出勤の上限を設けることや有休・特別休暇の取得促進などの取り組みのためにコンサルティングや設備投資をした場合、その成果目標が認められると費用の一部が支援されるものです。

助成率は3/4または4/5で成果目標1を達成した場合に、最大で200万円、成果目標2・3それぞれの達成時に最大各25万円、合計で最大250万円の助成を受けることが可能となっています。

出典:「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」(厚生労働省)

雇用調整助成金

新型コロナウイルス感染症の影響によって、事業の縮小を余儀なくされた企業が、休業などの雇用調整実施する場合に休業手当などの一部を助成する制度です。出向による雇用の維持でも対象となります。

令和4年12月~令和5年1月では、助成率は大企業で1/2、中小企業で2/3です。1人につき1日当たりの上限額は8,355円となっています。

出典:「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」(厚生労働省)

キャリアアップ助成金

長期や短期、派遣などの非正規労働者の処遇改善や正社員登用などを実施した場合に助成が受けられます。

厚生労働省が発行している「キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」の概要によると、有期雇用労働者等を正社員化した場合の一人当たりの支給額は、中小企業で57万円、大企業で42万7,500円となっており、生産性の向上が認められた場合はそれぞれ72万円と54万円となります。ただし、1事業所で1回のみとなります。

出典:「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」(厚生労働省)

人材開発支援助成金

雇用する正社員に対して職業訓練や研修などの人材開発に向けた取り組みを実施した企業に対して、その費用の一部を助成する制度です。8つのコースがあり、要件や支給額はそれぞれ異なるので、どれに当てはまるのかを確認するのが必要です。

出典:「人材開発支援助成金」(厚生労働省)

両立支援等助成金

厚生労働省が中小企業事業主向けに設けている、仕事と家庭の両立支援や、職場環境の整備を実施する事業者を支援するための助成制度です。男性の育児休暇取得・介護との両立・育児との両立といったの3コースがあります。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の場合、第1種支給額は20~68万円、第2種支給額は60~140万円となっています。

介護離職防止支援コースの場合、介護休業の取得と復帰支援を行う事で一人当たり最大60~85万円、介護のための柔軟な就労形態の支援を行う事で一人当たり30万円、上記に伴う加算が15万円となっています。

出典:「事業主の方への給付金のご案内」(厚生労働省)

トライアル雇用助成金

離職期間の長い就職困難者を、ハローワークを通して雇用する場合に受けられる助成金制度です。母子・父子家庭の場合は1人につき5万円、その他は基本4万円です。最長で3か月間となっています。

出典:「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」(厚生労働省)

特定求職者雇用開発助成金

高齢者や障がい者などの就職困難者を、ハローワークの紹介で一定期間雇用した場合の助成金制度です。生涯現役コースと特定就職困難者コースの2コースで、それぞれ対象期間や助成額が異なります。

出典:「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」(厚生労働省)

65歳超雇用推進助成金

定年の引き上げや定年制度の廃止、または66歳以上の雇用を実施する事業への支援制度です。65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースの3コースで構成されています。取り組みの内容やコースによって助成額が異なるのが特徴です。

出典:「65歳超雇用推進助成金」(厚生労働省)

介護事業の【設備の導入】に関する補助金・助成金

介護事業者が設備の導入を行う上では、様々な補助金や助成金の制度があります。
介護福祉機器の導入等で離職率を低減させた場合に出る補助金やIT/ICT、介護ロボット導入時の補助金、介護浴槽の導入に関する補助金など多岐に渡る支援があります。
これらを上手く活用することで設備投資費用を節約する事も可能です。

人材確保等支援助成金

人材確保のために職場環境を整備し、魅力ある職場を目指す事業者を支援する制度です。制度・設備の整備費用が一部助成となります。9コースあり、介護機器の導入が該当する介護福祉機器助成コースがあります。

出典:「人材確保等支援助成金のご案内」(厚生労働省)

業務改善助成金

事業場内の最も低い賃金労働者の賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資をした場合に助成される制度です。労働環境の整備を目的にしたもので、助成率は3/4~4/5。生産性の向上が認められた場合は4/5~9/10となります。助成額上限は600万円です。

出典:「業務改善助成金」(厚生労働省)

介護ロボット導入支援事業補助金制度

各都道府県によって実施される介護ロボット導入を支援する制度です。介護サービスにおける負担軽減や効率化を図るのが目的で、介護保険法に基づいて指定・許可された事業が対象となります。ただし当制度を実施しているか、自治体ごとに確認が必要となります。

出典:「介護ロボットの開発・普及の促進」(厚生労働省)

ICT導入支援事業補助金

介護の現場へのICT機器の導入により、業務効率化や職場環境の改善を実施した事業者に導入費用やサポート費用などを補助する制度です。補助率は1/2以上、事業所の職員の人数に応じて、100万円~260万円となっていますが、各自治体の制度を確認する必要があります。

出典:「ICT導入支援事業補助金」(厚生労働省)

介護事業の【事業再建・継続】に関する補助金・助成金

介護事業の再建・継続で使える補助金・助成金は以下のとおりです。

小規模事業者持続化補助金

働き方改革や賃上げ、インボイス制度などの制度に対応するための販路開拓などにかかる費用の一部を支援する制度です。

通常枠の他、5つの枠があり、どれか1つを選んで活用できます。小規模事業者が対象で、補助率が対象経費の2/3以内、補助上限額は50万円となっています。

事業再構築補助金

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業を支援するための補助金です。事業を再構築するために、新事業への展開や業態転換などをする中小企業または中堅企業が対象です。建物や設備費用の一部が助成されますが、枠によって助成率や助成額は異なります。

まとめ

専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。

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