介護事業者の倒産件数は2022年、過去最多を更新しました。
特に直近数年においては新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の大流行に伴い、医療・福祉業界を取り巻く環境は目まぐるしく変容しています。そういった厳しい状況の昨今、経営上のさまざまな課題が浮き彫りとなって頭を抱える事業者も増加の一途を辿っています。
運営上の課題や問題点など、どこから手をつけるべきか分からない…と困惑している経営層にとって、最もおすすめできる改善策が“介護コンサルティング”です。
この記事では介護コンサルティングについて、相談できる内容や費用相場、選び方について解説します。
介護コンサルティングとは
近年の少子高齢化にともない、業種の壁を超えてさまざまな企業が介護事業に参入しているため市場が拡大化しています。
新たに介護事業を立ち上げる際や経営している際、必ずなんらかの課題にぶつかります。それらを専門的な知識やスキルをもって解決するのが介護コンサルタントです。
たとえば業界未経験の企業や個人が介護施設を開業する場合、導入すべき設備や介護保険など法的な手続きについて知らなくてはなりません。
すべて自力で行おうとすると、知識が不十分であったり不備が見つかったりと、スムーズに開業までこぎつけるのは困難です。
しかし、知識の豊富な介護コンサルティングのサポートを受けることで、複雑な準備を抜け漏れなく行うことができます。
日本は毎年のように出生率が低下しており、高齢者の介護問題が深刻化しています。今後も一大市場として注目を集める一方で、人手不足など介護にまつわる問題はさらに増えていくと見込まれます。
そのため、介護コンサルティングの需要の増大は必然的であるといえます。
介護コンサルティングに相談できる内容は?
介護コンサルティング業者に相談できる内容は、介護事業の開業支援、人材育成、経営改善、実地指導対策などがあります。
具体的なサービス内容はそれぞれのコンサルティング業者の得意な領域によって異なりますが、一般的には営業支援や人材採用支援、離職率改善や現場職員強化を含め、定期顧問支援などがあげられます。
また、介護プログラムの企画開発やM&A支援を行っているコンサルタント業者も存在しています。
事業承継・M&A
経営難や人手不足などで事業承継、また多岐に渡る事業を運営されている場合、その選択と集中のための切り分けを検討している事業者がM&Aを活用しています。
自社のコアコンピタンスを向上させるためのアドバイスを受け、現在の企業価値やM&Aにおける取引相場などを把握していきます。
その際、最悪の結果を回避して、理想とする“ハッピーリタイア”を実現する一助とすることも可能です。
運営改善
稼働率・入居率が伸び悩んでいる、定着率が上がらない、業務が属人化しているなど、さまざまな問題に頭を抱える介護事業者も多くいるようです。
介護経営にかかる重要指標には、定着率・業務コスト・稼働率等があります。稼働率・入居率に加え、スタッフの労働管理・配置、経費など、あらゆる角度からのチェックを行うことにより、“今最優先で解決を図るべき事項”に対する改善を図れます。
またターゲットを明確にし、ターゲットごとに応じた適切な運営戦略支援を受けることも可能です。
営業支援
介護事業所にとっての大きな悩みのひとつが、稼働率の伸び悩みです。この課題に対して利用者を増やして解決したいが、営業の仕方が思いつかない方は介護コンサルタントに依頼をするのがおすすめです。
営業支援における介護コンサルティングでは、ターゲットの明確化やブランディングを行ったうえで営業の戦略を策定します。経営者が介護の専門家でない場合でも効果的な施策を取り入れられます。
人材採用支援
多くの業界で深刻化している人材不足は、介護業界でも重大な問題となっています。近年は、行政や業界全体が人材確保のために介護職の待遇改善に取り組んでおり、現場のIT化や報酬の見直しなどによって働きやすい環境へ変化しています。
一方で、改善されたイメージが十分に発信されておらず、依然として人手不足で悩む事業所が多い状態です。
介護コンサルタントは、各事業所に合った介護人材の採用もサポートしています。求職者のニーズや事業所の求める人材をヒアリングで把握し、適した採用戦略を策定するため、双方のミスマッチを軽減した採用活動が行えます。
離職率改善
せっかく人材を確保できても、長く勤めてくれなくては採用コストの無駄が生じます。離職率を抑えるためには、従業員の現状を理解して、必要な改善策を取り入れなくてはなりません。
この問題に対して介護コンサルタントは、専門家かつ第三者の視点で課題点を洗い出し、改善策を打ち出します。
また、人材を定着させるためには、従業員満足度調査(ES)による現状の把握が大切です。専門家に依頼することで、調査結果にもとづいた職場環境の改善策などを含む総合的なアドバイスを受けられます。
人材教育
人材の定着には、きちんとした教育を施すことも大切です。現場で働く職員のみならず、ほかの業務に従事する職員も含めて研修を行う必要があります。
職員研修を実施することで、業務レベルやサービスの質が高められるため、結果として利用者満足度向上につながります。
また、現場でのトラブル防止や離職率低下にもつながる重要な施策です。現場で活躍する職員の教育が不十分であると、最悪の場合介護事故や利用者の満足度低下などが起こります。
人材教育における介護コンサルタントの仕事は、専門家の立場から組織の統制をとることです。実際の現場で職員一人ひとりの評価やフォローアップを行い、組織の基盤を整えます。
開業支援
介護事業は超高齢化社会に到達した日本において“成長産業の一角を担う事業”であるといわれています。それゆえ、さまざまな事業会社の参入や、介護スタッフとして勤務されていた従業員の方が独立開業されるといったケースも非常に多くなっているようです。
介護コンサルティングでは、介護事業の開業を検討している方が必要とする、全般的な開業支援サポートを受けられます。
例えば、その1つとして開業予定地域のニーズ把握や近隣の競合事業者の特色や管轄する自治体の介護事業に対する支援体制などを調査する“市場調査”のサポートがあります。また、開業で必要とされる公的書類の作成・提出や事業計画の作成、資金調達についてのサポートも相談することが可能です。
行政指導(実地指導)対策
介護サービスは、介護保険法や障害者総合支援法などのルールのもとで運営されています。その適切な運営については、行政(自治体)の定期的なチェックが欠かせません。そのチェックの中には“実地指導”と呼ばれる、現地立ち入り調査があります。
実地指導では、口頭での注意といった指導から、報告書提出・改善勧告・最も厳しいものでは“事業所の行政指定取り消し”といった事業存続に大きく関わる処分が下される場合もあります。
介護コンサルティングにおいては、実地指導に備えた必要な要素について、その事業所ごとの弱点を元にした対策やアドバイスを受けることが可能です。
定期顧問支援
介護事業の経営を安定させるためには、長期的な経営戦略の策定が不可欠です。介護コンサルタントは、経営領域・事業領域・現場領域のすべてに介入し、専門的な視点から適切なフィードバックやフォローアップを行います。
介護業界は保険制度の見直しや利用者のニーズの変化などが起こるため、介護事業所にはその都度変化が求められます。よって開業後のみならず、定期的な状況確認や問題の洗い出し、改善策を提示する第三者の存在が欠かせません。
介護コンサルティングの定期顧問支援を利用することで、時代やニーズの変化に対応しつつ経営の安定化を図れるようになります。
介護コンサルティングを利用するメリット
介護コンサルティングを取り入れることで、以下のようなメリットを受けることが可能です。
専門家の視点で運営を改善できる
介護事業は一般企業と比較して、独特の習慣や制度をもつことからも、一般のコンサルティングでは見えにくい視点でのコンサルティングが求められます。
介護事業に特化したコンサルティングにおいては経営側面・運営側面の両方からのアドバイスを受けることが最速での改善策となることからも、現場から離れた経営目線のパートナーとして心強い味方を得ることが可能です。
客観的に分析してもらえる
第三者からの視点で見ることで、自分たちでは“当たり前”だと思っていることが特色であったり、また弱点であったりといった“見えない部分の顕在化”につながります。
また、客観的で冷静な分析により、運営改善や利用者増を期待すること可能です。
介護コンサルティングの費用の相場
介護コンサルティングの費用は、相談内容、契約形態、担当するコンサルタントのレベルなどによって異なります。
ここでは4パターンの報酬制度に分けて、介護コンサルティング費用の相場をご紹介します。
顧問契約制
顧問契約制とは、介護コンサルタントを顧問契約し、月に1~2回程度のアドバイスや指導を受ける方法です。
介護事業の経営について継続的に相談できる点がメリットです。こまめに相談したい方や、経営者の右腕としてアドバイザーがほしい方向けの契約形態です。
料金相場は訪問頻度によって異なり、月1~2回程度の場合月額20~35万円前後です。
成果報酬制
成果報酬制は特定の課題を解決することを前提とした契約形態です。
成果の完遂を報酬発生の条件としており、クライアント側のメリットが大きいのが特徴です。ただし介護コンサルティング業界においては、ほとんど見受けられません。
この形態を採用しているコンサルティング会社のなかには一時的効果を得るために強引な戦略を提案する介護コンサルタントも少なからずいるため、契約には慎重さが求められます。
料金相場は固定の金額が提示されるのではなく、売上や利益など成果に対して数%の事前契約が一般的です。
時間契約制
時間契約制では、1時間や1日単位で実際の作業時間に応じて料金を算出します。定期的な訪問ではなく、解決したい問題があるときのみ利用したい方に向いています。
単価は課題を解決する介護コンサルタントの実績およびスキルによって変動します。そのため料金相場は1時間5,000円~10万円前後と、幅広いのが特徴です。
個別サービス制
個別サービス制は特定の業務のみを依頼して、費用を支払う方法です。市場調査や収支計画など、一部作業のみを外注したい小規模事業者に向いています。
料金相場は業務内容ごとに異なり、主なものをあげると下記のとおりです。
業務内容 |
料金相場 |
市場調査 |
5~30万円 |
収支計画 |
5~30万円 |
融資取り付け |
5~25万円 |
マーケティング |
150万円(広告媒体や回数によって変動) |
入居者募集 |
50万円(広告媒体や回数によって変動) |
各種認可申請 |
15~75万円 |
上記のほかにも、介護コンサルティングに単発で依頼できるものがあるため、各介護コンサルティング企業に確認しましょう。
介護コンサルティング会社の選び方
介護コンサルティング会社を選ぶときは、いくつかのポイントを意識したうえで検討することが大切です。
ここでは依頼先を選ぶ際に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
コンサルティング会社の強みと自社の課題に共通項がある
解決したい課題と、コンサル会社の専門性が合っていれば、問題を解決しやすくなります。コンサルティング会社により、経営戦略・IT・業務改善・人材育成など、得意分野はさまざまです。
適切でわかりやすい料金設定がされている
ものを購入する場合と異なり、コンサルティング事業などのサービス業は相場がわかりにくいのが特徴です。依頼者にとって納得できる料金と内容を提供してもらえる会社を選びましょう。
上記で紹介した相場を参考に、ある程度絞り込むのもおすすめです。あまりにも安すぎたり高すぎたりする場合は、内訳を細かく確認して価格の妥当性を確認することが大切です。
コンサルタントが信用できる
コンサルタントの質や得意分野は人により異なります。事業の特性上、実務内容を熟知していることや現場状況を理解する能力の高さ、つまりノウハウや知識のあるコンサルタントに依頼するのがポイントです。
介護コンサルティングは土屋総研へおまかせ
介護コンサルティング会社選びでお悩みの方は、ぜひ土屋総研へおまかせください。土屋総研は、全国各地で福祉に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。
介護事業全体の発展に貢献するために、地域を支える同業者さまへのコンサルティングも比較的安価で行っております。
同業者さまと有益な情報を共有し、業界全体のサービスの質を向上させることで、福祉サービスを利用する方の地域生活を維持することが目的です。
土屋総研は、すでに多数の事業承継、M&A実績や、コンサルティング実績を有しております。そのため、事業の立て直しや人材不足、後継者不足、事業継承、事業の買収・譲渡(M&A)など、総合的なサポートをおまかせいただけます。
また、グループ内に人材教育研修機関を設けているため、職員教育もあわせて承ることができます。
事業拡大や立て直しのための、金融機関向け事業計画書の作成などもアドバイスしておりますので、まずは一度ご相談ください。
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まとめ
介護コンサルティングは、複数の契約形態があります。いつでも気軽に相談したい場合は顧問契約、特定の業務のみ外注したい場合は個別サービスがおすすめです。求める範囲に応じて活用し、経営安定化に役立てましょう。
コンサルタント会社によっては、事業継承やM&Aも相談可能です。
土屋総研は、豊富な実績とスキルで介護業界におけるさまざまな課題解決をサポートします。また、グループ内に人材教育研修機関を設置しているため、現場視点で専門的な職員研修が可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。