介護事業所で必要な研修内容とは|法定研修やその他の研修についても解説

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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利用者の命と安全にかかわる介護の仕事。経験や資格がない職員もいるなか、非常に重要となるのが、研修を通じた情報共有やスキルアップです。一方、介護事業者の研修にはさまざまなルールがあり、注意が必要です。この記事では、研修の種類や留意点をご紹介します。

高齢者介護における研修の位置付け

介護事業者の研修には、任意のものとは別に、実施が必須である「法定研修」があります。研修の内容は、サービス種別や職員の役割によって異なります。

実施しないと介護報酬が減算になる場合もあるので、要注意です。令和3年度の報酬改定では、事故の発生や再発を防止するための措置が講じられていない場合、1日あたり5単位減算される「安全管理体制未実施減算」が新たに設けられました。反対に、研修を強化した場合に加算されるケースもあります。

【法定研修】介護事業者が実施すべき研修内容


ここでは、「運営基準」で定められている10種の法定研修について、①全事業共通、②施設介護事業者、③訪問介護事業者に分けてご紹介します。

※一覧の研修以外に、下記の事業では別途必要な研修があります。
・介護老人福祉施設:医療、ターミナルケア、精神的ケアに関する研修
・介護療養型医療施設:ターミナルケアに関する研修
・認知症対応型共同生活介護:高齢者虐待防止関連法を含む虐待防止に関する研修

 

施設介護・訪問介護共通で実施する研修

・利用者のプライバシー保護に関する研修
個人情報の適切な取り扱いや管理方法、情報漏洩の防止などについて学びます。

・倫理・法令遵守に関する研修
倫理・法令遵守の意義を学び、遵守を徹底するためのスキルや知識を身につけるのが狙いです。

・事故の発生、予防、再発防止に関する研修
転倒など、サービス提供時に起きやすい事故を未然に防ぐ方法を学びます。事故が起きてしまった場合の対応や再発防止策も周知します。

・緊急時の対応に関する研修
災害や感染症といった緊急事態が発生した場合でも、介護サービスを継続できるように体制を整備するのが目的です。いわゆる業務継続計画(BCP)について学び、シミュレーションを行います。

別途義務付けられている「非常災害対策」の一環として行うのも可能です。なお、非常災害対策の訓練では、地域住民にも参加してもらえるよう努めなければなりません。

・感染症及び食中毒の発生の予防及びまん延の防止に関する研修
感染症と食中毒対策の基礎知識や、衛生管理の方法などを学びます。

・認知症介護基礎研修
認知症の利用者に対応するための知識を学ぶ場で、2024年から受講が完全義務化されます。福祉関係の養成施設などで学んだ経験がある人や、医療・福祉関係の資格を持つ人は受講対象から除外されます。

 

施設介護で実施する研修

通所介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、小規模多機能型居宅介護などの事業所が対象となる研修は、以下の通りです。

・身体拘束の排除に関する研修
身体拘束に該当する行為とその弊害、身体拘束をしない介護方法について学びます。

・非常災害時の対応に関する研修
豪雨や地震など、災害が起きたときのリスクや具体的な対応について学びます。訓練も実施します。

・介護予防及び要介護度進行予防に関する研修(特定施設入居者生活介護サービス向け)
要介護状態にある人の悪化を防ぐための知識や取り組みについて学びます。

 

訪問介護で実施する研修

訪問介護や訪問入浴介護の事業所が該当します。

・接遇・訪問マナー研修
言葉遣いや訪問時の対応など、訪問系サービスで重要な接遇マナーを学びます。

【経験年数別】介護事業所で実施することの多い研修内容

その職員の経験やスキル、求められる役割に応じて、研修の内容は変わってきます。ここからは、任意の研修のうち、職員の経験年数などに応じて実施するものを紹介します。

 

新人教育研修

新卒や未経験者を育成するための研修です。

・社会人としての基礎的な知識やスキル
・事故の防止
・組織の理念や就業規則の共有
・基礎的な介護技術
・虐待防止や身体拘束の廃止に関する共通認識の徹底
などがポイントとなります。

厚生労働省が公開している「介護技術に関する評価チェックシート」を活用すると、客観的な指標をもとに研修を組み立てられます。事業所や新人の状況に応じて、チェックシートの項目をアレンジするのも良いでしょう。

 

中堅職員向け研修

基本的な業務が一通りできる中堅職員に向けた研修では、業務の幅をさらに広げることや、将来のリーダーに育てることを目的とします。

・ターミナルケア
・入居者・家族の精神的ケア
・ヒヤリハット事例の検討
・自立支援
・ケアプラン立案
・クレーム対応

専門性を要する業務に関する知識やスキルを学ぶ研修や、後輩への指導方法や円滑なコミュニケーションについて考える機会を設けるのも良いでしょう。

 

管理職向け研修

管理職向け研修ではさらに視野を広げ、自分自身や直属の後輩だけでなく、チームや組織全体のマネジメントについて学びます。

リーダーシップ論や経営、労務管理について勉強するほか、現在の組織の課題といった具体的な項目について考える機会を作ります。

介護職員からのニーズが高い研修内容

ここでは、職員のスキルやモチベーションの向上に効果的な研修をご紹介します。

実施は任意ですが、研修の機会を設けることで他社と差別化を図ることができ、就職や利用を検討している方に向けてのアピールにもなります。

 

資格取得に向けた研修

介護職員初任者研修、介護福祉士、ケアマネジャーといった資格取得をサポートする研修です。なかには資格取得にかかる費用を補助したり、試験対策講座を開いたりしている事業所もあります。

職員のスキルアップはもちろん、意欲向上にも期待できます。

 

社外での実務研修

系列病院や協力医療機関などで実務研修を行います。喀痰吸引など、一部医療行為の実施許可を受けるための実技やリハビリ指導が挙げられます。

技術の向上だけでなく、事業所として行える支援の幅が大きく広がる可能性があります。

 

専門家や著名人を講師とした研修

介護に関する本の執筆者による講演や、心理カウンセラーからコミュニケーション手法を学ぶ講座など、普段は聞くことのできない話を聞く場を設けます。他の事業所の担当者に話を聞いて、情報交換するのも効果的です。

視野を広げることで、自身の仕事への向き合い方や事業所のあり方について考える機会になります。

まとめ

介護は、採用が難しいと言われている業界です。充実した研修を行うことは、支援の質の向上はもちろん、採用活動や離職防止にも大きく寄与します。

一方で、「利用者の対応で忙しい中、どんな研修をすれば良いかわからない」と悩む事業所も多いのではないでしょうか。そんな時は、第三者によるコンサルティングも有効です。必要な研修の内容や計画の作成、進め方などについて助言を受けられます。

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