介護事業を経営する多くの人がぶち当たるのが、人材確保の壁。その大きな助けとなるツールのひとつに、国の人材確保等支援助成金があります。この記事では、助成金の種類や申請方法についてご紹介します。
人材確保等支援助成金とは
人材確保等支援助成金とは、労働環境の改善に取り組んだ事業主や事業協同組合に支給される助成金です。人材確保と定着を目的に、厚生労働省が2018年から始めました。大きく分けて9種類あり、一定基準を満たした場合、制度・設備の整備費用が一部助成されます。
介護福祉事業で活用可能な人材確保等支援助成金の種類
この記事では人材確保等支援助成金の9コースのうち、介護福祉事業者に関連のある4コースに絞って解説していきます。
- 雇用管理制度助成コース:手当や研修など、雇用管理制度を導入した事業主に支給
- 介護福祉機器助成コース:職員の負担を軽減するため、新たな介護福祉機器を導入した事業主に支給
- 人事評価改善等助成コース:人事評価や賃金制度の整備によって、生産性の向上や離職防止に取り組んだ事業主に支給
- 外国人労働者就労環境整備助成コース:外国籍の従業員の職場定着に取り組んだ事業主に支給
人材確保に活用できる他の助成金や補助金については以下の記事をチェックしてみてください。
【 介護事業で補助金や助成金は活用できる?対象となる制度を目的別で紹介 】
雇用管理制度助成コース
名前の通り、雇用管理制度の導入や実施を通じて、従業員の離職率低下に取り組んだ事業主に支給されます(2022年4月以降、新規受付は休止しているためご注意ください)。
助成金額
- ・作成した計画に沿って制度を導入・実施し、離職率を目標値以下に低下させることができた場合:57万円
- ・上記と「生産性要件」の両方を満たした場合:72万円
主な受給要件
・雇用管理制度の導入
制度導入にあたって計画を策定し、労働局長の認定を受ける必要があります。
対象制度:
- 通勤や住居、転勤などに伴う諸手当制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間正社員制度
・離職率改善目標の達成
目標値は雇用保険一般被保険者の人数によって異なります。詳しくは下表をご参照ください。また、評価時の離職率が30%以下であるのが条件です。
厚労省HPより
介護福祉機器助成コース
新たな介護福祉機器を導入することで従業員の身体的な負担を減らし、離職率の低下に取り組む介護事業主に支給されます。
助成金額
- ・作成した計画に沿って機器を導入し、離職率を目標値以下に低下させることができた場合:機器の導入費用(保守契約費や研修費用を含む)の20%を助成
- ・さらに生産性要件を満たした場合は35%を助成
- ・上限は150万円
主な受給要件
・対象介護福祉機器の導入
- 移動・昇降用リフト(立位補助器、非装着型移乗介助機器を含む)
- 装着型移乗介助機器
- 体位変換支援機器
- 特殊浴槽
・離職率改善目標の達成
目標値は人数によって異なります。数値は雇用管理制度助成コースと同様です。
人事評価改善等助成コース
人事評価制度や賃金制度の整備を通じて、生産性向上、賃金アップ、離職率の低下に取り組む事業主に支給されます(2022年4月以降、新規受付は休止されています)。
助成金額
・目標達成時に80万円を助成
主な受給要件
・整備した人事評価制度の実施
・従業員の賃金アップ(2%以上)を含む人事評価制度を導入
・生産性要件を満たしていること
・離職率改善目標の達成
目標値は人数によって異なりますので、下表をご参照ください。なお、評価時離職率は 30 %以下となっていなければなりません。
厚労省HPより
外国人労働者就労環境整備助成コース
外国籍の従業員が働きやすいように環境を整備し、職場定着に取り組む事業主に支給されます。
助成金額
・支給対象経費の1/2(上限57万円)
・生産性要件を満たす場合は2/3(上限72万円)
主な受給要件
・就労環境整備措置の導入・実施
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則等の社内規程の多言語化
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国のための休暇制度の整備
- 社内マニュアル・標識類等の多言語化)
・外国人労働者の離職率が10%以下であること
人材確保等支援助成金の申請方法
申請手続きの方法は、以下の通りです。
- 申請書類(雇用管理制度計画書)を作成
- 管轄の都道府県労働局へ計画書を提出
- 計画書の内容に沿って事業を実施
- 目標達成を確認
- 労働局へ助成金の支給申請書を提出(終了後2ヶ月以内)
手続きをする際は、事前に労働局などに詳細を確認しておくことをおすすめします。
人材確保等助成金を申請するときの注意点
助成金を申請するにあたっての注意点を3つ解説します。
申請時期
計画書は、計画開始日から6ヶ月~1ヶ月前の日の前日までに提出する必要があります。例えば2024年4月1日から事業を開始したい場合は、2023年10月1日から2024年2月28日の期間中に提出しなければなりません。タイミングを逃すことがないよう、事前にリサーチしておきましょう。
また、目標達成助成の申請期間も定められていますので、厚労省ホームページであらかじめ確認しておくと良いでしょう。
申請できるのは創業2期目以降から
創業したばかりの企業は、人材確保等支援助成金を活用できません。申請時に、直近1年間の離職率の情報が必要となるためです。過去の離職率を算出できない場合は、対象外となります。
コースが廃止・休止となる可能性もある
国の予算計画などによって、助成金コースの一部が廃止・休止となる場合があります。2023年度現在、「雇用管理制度助成コース」と「人事評価改善等助成コース」の受付は休止しています。申請前に改めて確認しておきましょう。
まとめ
多くの介護事業者が頭を悩ませる、人材確保や定着に関する問題。助成金は、事業者側の負担を減らす手段のひとつです。
一方で、助成金だけでは解決しきれない問題も多々あります。そういった場合は、第三者によるコンサルティングを受けることも選択肢のひとつです。介護業界に詳しい専門家に相談すれば、業界の特性を踏まえた有益なアドバイスを得られます。
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※本記事の情報は、2023年11月時点のものです。最新情報については、厚生労働省のホームページ等をご確認ください。