デイサービスのM&Aの動向は?手続きの流れや事業承継のメリットについて

近年デイサービスのM&Aは非常に活発な動きを見せています。介護以外を含む様々な事業者が参入している状況について、この記事ではその動向や手続きの流れ、またメリット等を含めて解説していきます。


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デイサービスのM&Aの動向

第二種福祉事業であるデイサービス事業は、老人福祉法に規定されているように運営法人に制限を設けていないため、一般的な株式会社や医療法人といったさまざまな運営を行うことが可能となっています。

また、厚生労働省が発表している「介護分野をめぐる状況について」の報告からも分かるとおり、利用者の在宅生活ニーズはこの20年で4倍近く増加している状況です。

大規模デイサービス事業者はM&Aによる買収での業務拡大を図り、小規模デイサービス事業者はM&Aによる売却での清算を行うといったニーズが高く、売買市場が活発な事業種類となっています。

出典:「介護分野をめぐる状況について」(厚生労働省)

デイサービスのM&Aが活発に行われている背景

デイサービスのM&Aが活発に行われている背景には、プラスマイナスどちらの要素を含んだ業界の活性化が背景にあります。ここからは、さらに深堀りをして解説していきます。

介護報酬改定による利益の縮小

介護報酬改定により基本報酬単価は引き下げられています。介護報酬がマイナス改定されると事業者の利益は低下します。

特に小規模事業者に大きな影響を及ぼしていて、コア業務以外の副次的なコストが事業体力を奪い、結果として業績悪化のために事業売却を検討されるといったケースが多くなっています。

ただし、大規模事業者においてはコア業務以外の事務作業等を集約できるスケールメリットがあることから、買収によって事業規模を拡大するケースも見受けられます。

介護業界の競争激化

高齢者の増加に伴い、介護施設数も増加しています。資本力のある他業種からの参入も増え、競争が激しくなっています。

近年では住宅事業や鉄道事業、警備事業などといった全くの異業種が自法人の持つ強みを活かした事業運営を進めています。

新規事業立ち上げの難しさ

上記の様に新規参入を行うケースが非常に多い一方、デイサービスを始めるにおいては、規定されている介護士の配置や要件を満たした設備の確保、所轄官庁からの許認可などが必要となります。

そういった側面からも異業種の企業が新規参入する場合、M&Aを用いて、既存法人を買収することによってスキルやノウハウも取得できるので、スムーズに参入できます。

デイサービスをM&Aで事業譲渡するメリット

デイサービスを事業譲渡する際、創業者自身は強い思いを持って譲渡を検討していると思います。売り手にとっても円満なM&Aとなる理由をお伝えします。

創業者利益を確保できる

M&Aでの売却価格には、のれん(営業権)が加算されます。社内承継や親族内承継で使用する相続税評価額での評価よりも高くなるのが一般的です。

当然ながら、創業者が培ってきたノウハウやコネクション、育てた人材や地域との関係性といった不定形の財産も承継されることとなるため、今までに尽力してきた成果すべてに価値が見いだされます。

そういった側面からも創業者利益を確保して、ハッピーリタイアする、もしくは別事業をスタートさせるというケースもあります。

後継者問題を解決できる

後継者が不在の場合は、M&Aによる譲渡や売買で事業承継問題を解決できます。どうしても自法人内で後継者を作ることができなかった場合、廃業せざるを得ないと考える経営者もいるでしょう。

M&Aの場合、さまざまな後継者を探すことが可能となるため、廃業によって自法人の歴史が途絶えること、さらには地域貢献が途絶えてしまうことでの利用者の困窮を回避することにもつながります。

職員の不安が解消される

自法人の経営状態が不振であれば、そこに勤務する職員は絶えず不安を抱えながら働くことになります。経営状態の不安定さを起因に退職の連鎖が発生することもあります。

どれだけ多くのニーズを満たすことが可能な立地条件で運営している場合であっても、小規模事業者の場合、利用者が1名少なくなるだけで発生するマイナスインパクトが大きく、売上不振につながる大きな理由とされています。

そういった場合、財務的に余裕のある事業者が経営を引き継ぐことで、地域のニーズを叶える資力が大きくなるため、職員の不安も解消されます。

デイサービスのM&Aの流れ

ここからは実際にデイサービスのM&Aを実施する上での流れを詳細にお伝えします。ここさえ読んでおけば、手順で間違って失敗する事を避けられますのでしっかりと読み込んでくださいね!

1.事前相談

事前相談においては、デイサービス事業における自社の特徴(強みや弱み、様々な外的要因)を伝えることが必要です。

それに加え、現在の財務状況や「売却するのであればこういった企業に託したい」という理想の売却先企業像、希望譲渡価額についてのヒアリングが行われます。

そのためにも、事前に上記のような情報をまとめて面談に臨みましょう。

2.秘密保持契約の締結

売却候補先の企業に、売却元である自社の情報を無断で話されることがないようにM&Aの仲介を行う担当者との間で秘密保持契約を締結します。

締結後、会社情報を提示し、具体的な打ち合わせに入ります。

3.基本合意書の締結

M&Aの仲介を行う担当者は売却候補先の企業に打診を行います。売却候補先が、案件に対して交渉を望む場合、秘密保持契約を締結後、交渉に入ります。双方とも、大筋で条件が合意できた場合に“基本合意書(LOI)”を締結します。

なお、基本合意書は、合意内容の確認書として位置づけられており、法的拘束力はありませんが、これまでの交渉で内容が定まっている項目については、基本合意書に盛り込んでおくことで、売買双方の意向を書面として残すことが一般的となっています。

4.デューデリジェンス

基本合意書の締結後は、買い手企業による自社の経営状況や人事、労働環境、M&A後に削減できるコストなどに対する調査(デューデリジェンス)が行われます。

このデューデリジェンスでは対象となる企業の価値やリスクなどの調査を指します。財務調査、財務内容やリスク把握、定款や登記事項などの法的なチェックなどを実施します。

5.最終交渉・最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終交渉へと移ります。問題がなければ、基本合意書の内容に沿った最終契約書が締結され、M&Aが成立します。ただし問題がある場合、基本合意時よりも譲渡価額を下げられたり、交渉決裂となったりする可能性が高くなります。

6.M&Aの実行

M&A成立後、契約内容が履行(クロージング)されます。売り手企業は譲渡手続きを、買い手企業は対価を支払います。

デイサービスのM&Aにおける売買価格は?

売却価格の相場=売却側企業の時価純資産額+直近3年間の営業利益の平均額×3~5年が一般的です。ただし、最終的な売却価格は買い手企業との交渉によって決まります。

デイサービスのM&Aを成功させる方法

デイサービスのM&Aを成功させるために一番重要なことは自法人の価値がどれだけのものなのかを明確にしておくことが必要です。

経営状況や資産価値を確認しておく

事業の純資産額が取引価格を左右します。経営状況を事前にチェックして、それに見合ったM&A戦略を立てましょう。また、物質的な資産に加えて、そこで働くスタッフのスキルや近隣住民の方との接点等見えない価値も洗い出しをしておくことが重要です。単に物的資産だけを確認するだけでなく、時には見えない資産が大きな価値につながる場合もあります。

専門家に相談してアドバイスを受ける

専門家に相談することで交渉の成功率が上がり、交渉期間を短縮できます。介護業界に詳しい専門家を選ぶことが大切です。

まとめ

土屋総研は、日本全国で福祉に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。福祉サービスを利用する方の地域生活を維持することを目的として、共に地域を支える同業者へのコンサルティングも比較的安価で行っています。

土屋グループは、多数の事業承継、M&&A実績や、同業者へのコンサルティング実績があり、グループ内にも人材教育研修機関を有しているなど、事業の立て直しや人材不足、後継者不足、事業承継、事業の買収・譲渡(M&A)など総合的なサポートが可能です。ぜひご相談ください。

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