サービス付き高齢者住宅(サ高住)のM&A動向!メリットや注意点を解説

サービス付き高齢者住宅は、介護支援や生活支援が受けられ、孤独感を感じずに暮らせる魅力からM&Aは増加傾向にあります。また、大手企業が中小企業を買収するケースや自社事業の売却により経営資源を集中して事業拡大を図るケースも見られます。 この記事では、サービス付き高齢者住宅における市場動向やM&Aを進める上でのポイントを解説します。


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サービス付き高齢者住宅とは

サービス付き高齢者住宅は、民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅で、「サ高住」や「サ付き」と呼ばれています。サ高住は、要介護の高齢者が入居する有料老人ホームとは異なり、介護支援の必要がない自立生活が可能な高齢者が入居する場所で、基本的に安否確認サービス、生活相談サービスのみが受けられます。

サービス付き高齢者住宅の現状

高齢者人口が増えるに伴い、特別養護老人ホームでは待機者数が増加し、経済的に有料老人ホームに入居できない高齢者の存在が社会問題となりました。その中で、2011年10月、高齢者住まい法が改正され、サービス付き高齢者向け住宅制度が創設されたのです。

介護施設待機者の受け皿ということから、サ高住を建設する際に国から補助金を得られることもあり建設ラッシュとなり、サ高住は爆発的に増加しました。その結果、現在では施設間の入居者獲得競争や賃料の値下げ競争が激化している状況にあります。

サービス付き高齢者住宅のM&Aの動向

競争が激化するサ高住業界において、近年、M&Aが活発となっています。その理由としては、まず介護事業自体の運営ノウハウがなく、人材採用や運営管理ができずにサ高住の経営が失敗する新規参入者が多いことが挙げられます。

昨今、サ高住業界では競合との競争激が激しい状況にあるものの、高齢者の増加推移を考慮すると潜在ニーズが大きく、M&Aが活発化する要素になっています。

また、現在小規模サ高住を経営している場合、競争激化に耐えられないと考える経営層もいることから、生き残りに不安を感じている事業者も少なくなくありません。

他社への売却を検討し始めており、売り手市場が活発化していることも含め、売却を考えている場合はベストの時期だといえることなどが挙げられます。

サービス付き高齢者住宅のM&Aのメリット

超高齢化社会の到来と核家族化の進捗に伴い、高齢者自身も独居であるケースも増加しています。そんな社会の変容に伴い、サービス付き高齢者住宅は、介護支援や生活支援が受けられ、孤独感を感じずに暮らせる魅力が高いニーズとなっています。

そういった側面からも売り手・買い手にとってもM&Aのメリットが大きい事業形態となっています。ここからは双方のメリットについてお伝えします。

売り手のメリット

①M&Aにより経営権を譲渡することで廃業や事業の消滅を回避でき、後継者問題を解決できます。
②M&Aで譲渡すれば、従業員の雇用先を確保でき安定した雇用ができます。
③大手企業の傘下に入れれば、経営の安定化を図れます。
④個人保証や担保も引き継がれるため、現経営者の個人保証や担保が解消されます。
⑤受け取った対価によりアーリーリタイアも可能になります。

サービス付き高齢者住宅の事業売却は売り手側にとっての大きなメリットとして、特に経営者が高齢である場合は、後継者問題の解消に最適であると共に、売却による創業者利益も得られることが挙げられます。

また、借入金の個人保証の解消にもつながるため、経営者が引退した後の債務部分での不安を払しょくする要素ともなります。

さらに、M&Aを用いて事業を承継させることは、現在就業している従業員や利用者が行き場を失うことなく事業継続できます。廃業と比べて従業員の再就職先の斡旋や利用者の他施設等への引継ぎといった頭を抱えるような残務処理を行う必要がないこともメリットといえるでしょう。

総じて、売り手側の心理的・金銭的負担の解消に大きなメリットとなります。

買い手のメリット

①事業規模が大きいほど企業の信用度が増し、スタッフを集めやすくなるため、人材不足を解消しやすくなります。
②未進出地域へスムーズに進出できます。
③入居者がいること、経験がある従業員がいることが評価され、企業価値が高まります。

サービス付き高齢者住宅の事業買収が買い手側にとって寄与するメリットとして、まず、これから同事業を始める事業者にとっては、新たな領域の介護サービスがスタートできる点は大きいものとなります。

また、既存の事業者が買い手となる場合、元々あったブランドを基盤としてスタートできるため、未進出地域へスムーズに進出においてスタートダッシュを切りやすくなります。

加えて、新規での採用活動を行わず、ノウハウを持った有資格者を一括で確保できることからも立ち上げ期間の赤字を回避にも有用です。

また、事業の規模拡大を検討している事業者にとっては、新たな人材確保や提供施設を得ることで施設規模の拡充に伴い、以下のようなメリットも得られる可能性があります。

・人材の流動性向上
・バックオフィス部門の統合
・備品等の購買ロットを上げることによるスケールメリットを享受できる

これらのメリットは、サービス付き高齢者住宅の市場が今後も拡大するにあたり、競合先との差別化も図ることにつながるでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅のM&Aの流れ

1.M&Aの仲介業者の選定・相談

サ高住のM&Aでは専門的な知識が必要になります。信頼できる仲介業者と契約を結び、相談することから始めましょう。

2.自社情報の整理
自社の権利関係や簿外債務などを把握し、整理しておくことが必要です。それを元に、売却先へ提示する資料を作成し、売却希望価格や従業員の処遇などの希望条件もまとめておきましょう。

3.買い手企業の選定・交渉
M&A仲介業者のネットワークから、条件に合った買い手企業を選定します。その後、買い手側との交渉に移りますが、この時点で、売り手側は自社の経営状況など、情報開示を行い、買い手側はそれを元に検討に入ります。交渉が進むと、双方の経営陣が顔合わせを行うトップ面談へと移行し、双方とも前向きな場合は本格的な交渉に入ります。

4.基本合意書の締結
交渉の結果、双方の話がまとまると、基本合意書を締結します。こちらは最終的な決定事項ではなく、現時点での暫定売却条件等、現段階の交渉内容についての合意を示す契約書です。

5.デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、売り手企業の企業価値や経営リスクを把握するために行う企業調査です。買い手企業が専門家を派遣して調査を実施するもので、調査対象は税務・法務・財務などと広範囲に渡ります。売り手側は内部資料などを提供し、デューデリジェンに協力する必要があります。

6.最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果、売り手企業と買い手企業の間で、契約価格や従業員の処遇等を調整し、最終合意に至ると、関係者へ説明を行い、最終契約書の締結となり、M&Aが成立します。

このように、M&Aが成立するまでには、十分な準備や進行が必要なので専門家に相談するのがおすすめです。

サービス付き高齢者住宅のM&Aでの注意点

サービス付き高齢者住宅のM&Aにおいては、事業譲渡・売却契約を締結する前に専門家の選定や相談が重要になります。

また、M&Aによるリスクとしては、事業譲渡・売却契約の締結前に、買収先の財務状況や法的問題、現地環境などを十分に調査しないことでのトラブル発生が多くなっています。

注意すべきポイントを事前に知識として押さえておくことでトラブルの未然抑止となることからもしっかり確認しておきましょう。

周囲の環境に注意する

サ高住を買収するにあたり、当該地域の高齢者数と周辺の有料老人ホームの数を確認しておくことが必要です。競争が激しい地域では、収益性の悪化や経営不振を引き起こす可能性があります。

また、利用想定ユーザーやそのご家族が“どういったケアを求めているのか”といった入居する利用者の傾向を把握しておくことで、事業開始後に運営が立ち行かなくなるといったリスクを低減させることが可能です。

自分たちが想定している運営をスムーズに進めていくことが出来る環境なのか、譲渡前に出来る限り確認を行うことをお薦めします。

複合的な視点でリスクの調査を行う

買収する場合は、相手先の企業の価値やリスクなどを調査することは必須です。その際は、財務面だけでなく、法務面・ビジネス面など複合的な視点から行うことが重要です。

サ高住は、それぞれの施設において特長が異なります。得意分野や苦手分野、従業員の保有しているスキルやノウハウ、今までの経営理念など、異なる事業者が事業を引き継ぐ場合、プラスに働く要素もあればマイナスとなる要素もあります。

譲渡後に「こんなはずではなかった」というギャップを発生させないためにも、財務面などのハード面だけではなく、そこで働く人や居住者などのソフト面についても齟齬が発生しないような事前調査が必須となります。

併設の介護事業所の有無を確認する

サービス付き高齢者向け住宅では、訪問介護事業所やデイサービスを併設して運営していることが多く見られます。他にはない設備やサービスで高付加価値を付けられれば、収益性が上がり、競争が激しくても生き残れる要素となるでしょう。

なお、介護事業所を譲渡・売却する場合には、サービス付き高齢者向け住宅の所轄官庁だけでなく、介護事業所の所轄官庁への届出が必要となりますので、ご注意ください。

まとめ

サービス付き高齢者住宅(サ高住)のM&Aを成功させるなら、「土屋総研」にご相談ください。

専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

土屋総研は、日本全国で福祉に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。福祉サービスを利用する方の地域生活を維持することを目的として、共に地域を支える同業者へのコンサルティングも比較的安価で行っています。

土屋グループは、多数の事業承継、M&A実績や、同業者へのコンサルティング実績があり、グループ内にも人材教育研修機関を有しております。事業の立て直しや人材不足の解消、後継者不足、事業承継、事業の買収・譲渡(M&A)など総合的なサポートが可能です。ぜひご相談ください。

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