介護事業のM&Aでよくある失敗例とは…失敗を防ぐポイントを解説

介護事業のM&Aにおいては、買収先の事業内容や経営状況の把握が非常に重要です。また、統合後の計画がずさんだったり、M&Aが手段ではなく目的になったりした場合、M&A以前に効果を期待していた内容とは反発した状況に陥ることもあります。 この記事では、介護事業のM&Aでよくある失敗例を紹介します。あわせて、成功に導くためのポイントも解説しますので、ぜひご参考ください。


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介護事業のM&Aでよくある失敗例

介護事業のM&Aにおいて、売り手側・買い手側でよく見られる失敗例としては、以下があげられます。

売り手側の失敗事例

売り手側で見られる失敗事例としては、主に以下の3つです。

1.情報漏洩

会社の譲渡・売却を検討している情報が、従業員や取引先に漏えいすることで不安があおられ、従業員の退職や取引先との契約打ち切りにつながる可能性があります。

また、情報漏えいは、管理のずさんさにより買い手側に不信感を起こし、交渉が決裂するケースもあるのです。

2.隠蔽

中小企業のM&Aで多く見られる失敗例が、貸借対照表にない未払いの給与や残業代(簿外債務)の隠蔽です。

株式譲渡の場合は、買い手側が簿外債務を引き継ぐことになるので、売り手側が簿外債務を隠蔽してしまうと、発覚後、買い手側は「知らなかった」として、信頼関係に影響を及ぼします。

3.タイミングを逃す

企業の業績や経営環境は日々刻々と変化します。そのため、交渉条件が変更になる可能性も常にある中で、良い条件のタイミングを逃すと、非常に悪い条件で取引を行わざるを得なくなります。

買い手側の失敗事例

買い手側で見られる失敗事例としては、主に以下の2つです。

1.費用対効果が見合わない

買い手側が数社いる場合、他企業と競い合うことになります。その中で買収価格がふくれあがり、本来の価値よりも高額の取引となってしまいます。

こうした場合、買収することができたとしても、初期投資の回収に時間がかかります。

2.期待通りの収益を生まなかった

他業種の企業を買収し、新規事業への参入を図ったものの、期待通りの収益やシナジーを生まなかったなどの失敗例は非常に多く見られます。

この場合、業界特有のマーケット事業など事前調査の不足が主にあげられます。

介護事業のM&Aで失敗しないためには

介護事業のM&Aで失敗しないためには、相手先事業に対する理解に加えて、事業状況の正確な把握は必須と言えます。

また、お互いがwin-winの関係性を築いていくために、あくまで『M&Aの実施は手段である』という認識のもと、“ビジネスパートナー=契約の相手先”として交渉 を進める姿勢が必要です。

権利関係を把握する

介護事業のM&Aで失敗しないためには、売り手側、買い手側どちらも自社の権利関係をよく把握しておくことが重要です。

交渉を開始した後で、売り手側が内部資料を整理すると、例えば出資比率の3分の2以上の自社株を保有していないことが判明した場合には、他の株主が譲渡に反対するなどして譲渡を断念せざるを得ない状況に陥ります。手法によっては経営権も移転します。

知人でも取引相手として接する

知人同士で取引する場合、あくまでも契約相手という視点が必要となります。M&Aは離職者が出やすいというリスクがあるため、知人だからといって分割払いに応じるなどすると、かえってトラブルが起きてしまう恐れがあります。

例えば、譲渡した後で従業員の退職などがあると、買い手側の不安が増し、売り手側は分割支払いの減額を要求されるなど、後からトラブルに発展するケースも少なくありません。

【売り手】介護事業のM&Aで失敗を防ぐポイント

介護事業の売却あるいは譲渡を想定している側には、事業転換・集中と選択・後継者不足等のさまざまな理由があります。

差し迫った状況の中でも自らの事業に対して正当な価値を見出してくれる相手を探し、専門的な知識と誠実さをもってM&Aに尽力してくれる専門家の助けを借りることが賢明です。

信頼できる仲介会社やコンサルタントに相談する

M&Aは法律や税務の知識はもちろん、買い手のニーズを踏まえた適切な査定が必要です。とりわけ介護業界では行政とのやり取りも必要になるので、売り手側のみでは難しい状況も多々あります。

まずは、信頼できるコンサルタントを通じて仲介業者を選ぶことが重要です。また、その際には仲介手数料が妥当かもチェックしておく必要があります。

自社の状況を把握する

自社の状況を把握しておくことは、交渉をスムーズに、そして信頼関係の下で自社を譲渡等するためには必須の事柄です。

まずは買い手側の質問に応えられるよう、あらかじめ自社の売上高や強み、課題などの情報をまとめておくことが大事です。さらに譲渡価格を決めておくとなお良いでしょう。

誠実な情報開示を行う

自社の良い状況と良くない状況をしっかり把握し、誠実な情報開示を行うことは非常に重要です。

もし、その後の調査 で、開示した情報と自社の内容に乖離があることが発覚した場合は、買い手からの信頼を失い、交渉が破談になる恐れもあります。

売り手側、買い手側双方にとって良い状況を生み出すために、とりわけ自社の良くない状況はしっかりと開示するようにしましょう。

【買い手】介護事業のM&Aで失敗を防ぐポイント

介護事業を取得しようと想定している側には、事業拡大や新規参入など、さまざまな理由があります。自社の理想に近い売り手を見出してくれる相手との交渉には、専門的な知識に加え、誠実さをもってM&Aに尽力してくれる専門家の助けを借りることが賢明です。

機密情報をしっかり守る

買い手として進める場合は、買収先の情報を漏らさないようにすることが何よりも重要です。

売り手側にとっては、M&Aが成立するまでに自社がM&Aを検討しているといった情報が漏えいすると、社員や取引先に不安を与え、離職や取引先との契約解除などの事態を招きかねません。それを回避するためにも、機密情報をしっかりと守ることが非常に重要です。

買収先の社員や利用者、取引先に配慮する

上述したように、買収先にとってはM&Aの影響で従業員が離職したり、利用者や取引先が離れてしまったりするリスクを抱えています。

買収先の社員や利用者、取引先に配慮することは買収先の機密情報を守るうえでも大切であるため、自社の幹部社員や従業員への報告のタイミング、その中でのコミュニケーションは重要となります。

デューデリジェンスを怠らない

デューデリジェンスとは、売り手企業の企業価値や経営リスクを把握するために行う企業調査のことを言います。買収してから問題が発覚しないように、デューデリジェンスを怠らないことは必須です。

未払賞与、回収不能の売掛金、未払残業代など、簿外債務に注意し、売り手企業の実態を把握したうえで、取引条件に付いて適切な判断を下しましょう。

まとめ

専門家によるコンサルティングを受ければ、第三者的な観点から有益なアドバイスを得られます。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。専門的な知識や豊富な経験によるノウハウを共有してもらえれば、今後の経営に役立ちます。

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