デイサービスの経営が厳しい!その理由と事業を立て直す方法とは

デイサービスは経営が厳しいと言われています。赤字経営の事業所も少なくありません。そういった現状を打破して、より良い経営状態に導くため、この記事では改善に向けて取り組むべき要素や、今からでも取り組める方法について解説していきます。


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デイサービスを取り巻く現状

デイサービスは昨今の高齢世代の急増に比例して、そのニーズも急増しています。ただ、適切な経営が行えない事で赤字経営に陥っている事業者も少なくないのが現状です。ここからはそんなデイサービスの現状についてお伝えします。

デイサービスの需要は右肩上がり

高齢者人口の増加と在宅系サービスの需要の高まりにより、デイサービス(通所介護)の需要は年を追うごとに右肩上がりとなっています。またニーズの増加に伴い、ニーズの多様化も進捗しています。これらの状況を把握し、適切な経営を行うことでデイサービスの黒字運営が可能です。

ニーズはあっても赤字経営や倒産に陥るデイサービスが多い

独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表している「2018年度通所介護事業所の経営状況について」によると、地域密着型の44.3%、大規模型(Ⅰ)の28.2%、大規模型(Ⅱ)の23.6%のデイサービスで、赤字経営に陥っていると公表されています。

つまり約20~40%のデイサービスが赤字経営に陥っている点を踏まえると、赤字経営が長く続き、倒産に至るデイサービスも増加するケースも想定されています。特に小規模なデイサービスは後述の理由によって赤字割合が高くなる傾向があります。

出典:「2018年度通所介護事業所の経営状況について」(独立行政法人福祉医療機構(WAM))

デイサービスの経営が厳しくなる理由は?

デイサービスの経営が芳しくない状態に陥るのは明確な理由が2つあります。また、昨今の競争激化に伴う外的要因も含みます。ここではそれらの実情をお伝えしていきます。

人件費が高いから

一般的なサービス業では40%台の業種もある中で、介護系業種は人件費率が高く、人件費率は売上高の60%を超えるといわれています。

特に、小規模なデイサービス事業者であるほど必要以上の人材を確保していることが理由となって人件費率を押し上げている状況も見られます。

その理由として、小規模な事業者であるほど利用者1名の増減が運営体制に与えるインパクトが非常に大きいため、増加時の対応を見越して余剰人員を抱えざるを得ないという背景もあります。

それにより、人件費率が高くなるものの労働生産性が高まらないため、収益を圧迫しているというケースが見られます。

介護報酬の改定に左右されるから

2000年から開始された介護報酬制度によって、介護事業者の得る報酬は変動します。この報酬額は3年に1回、時代と物価の変動に合わせて行われる改訂されるものとなっていて、事業所の収益の柱といえます。

そのため、介護報酬がマイナス改定となった場合、利用者の数に変動がなくても報酬額が下がってしまい、利益も減少します。

人件費等は一概に削減できない事からも収益が圧迫され、財政状況や資金繰りが悪化します。また、この介護報酬改定は物価変動に伴って臨時で改定されることがあることからも、基本報酬以外の様々な“加算を取得できるか否か”が事業所運営の明暗を左右するという声もあります。

人手不足だから

職員の人手不足により、人員配置基準を満たせずに運営できなくなるケースもあります。特にデイサービスは他介護サービスと比較して、日中しか勤務が発生しないという特色があります。

その特色ゆえに、『労力と収入が割に合わない』という理由や『介護士としての身の回りのケアは好きだけど、レクが非常に苦手』という理由で離職するケースも少なくなく、慢性的な人手不足に陥っているデイサービスもあります。

デイサービスの競争が激化しているから

第二種社会福祉事業であるデイサービスは、参入事業者の種類を問わないことから、本来の介護業者以外のさまざまな業種の事業者が、自社の特色を強みとして新規参入する事例が急増しています。

また、利用者側のニーズの多様化とともに、ニーズ自体が増加しているため、同業者の母数も比例して増えたことで、ニーズ増加の旨味を打ち消すほどの競争激化に伴い、利用者獲得が難しくなっているのが昨今の現状だと言えます。

特色がない、強みがないから

利用者獲得が激化している中で、デイサービスに求めるニーズも多様化しています。利用者に飽きられるデイはすぐ淘汰される状況も多く、新規参入した事業者が早期撤退している例もあります。

また、以前から事業運営をしていた事業者の中には、世情の変化に対応できる自社の特色や強みを前に出せないまま経営難に陥り、最悪倒産というケースも少なくありません。

【経営改善策】厳しいデイサービスが生き残る方法!

ご説明してきたように、デイサービスの経営は一筋縄では良い方向性に持っていくことは難しい状況があります。そんな中でも生き残り、良好な運営を継続している事業者はどういった部分に注力しているのかお伝えします。

経営管理に力を入れて加算取得漏れをなくす

毎日の稼働率をデータ化し分析することがポイントです。小規模事業者であればあるほど、利用者一人が与えるインパクトは大きいため、日々の稼働率がどうなっているのかチェックすることが大事です。

データ化することはもちろん、どうすれば稼働率を上昇させることができるのか、あらゆる観点から考える必要があります。経営層だけではなく、現場を運営しているスタッフと共にスピード感をもって施策展開を行うことが重要です。

また、申請できる加算取得漏れがないか、確認しておくようにしましょう。

他の事業所との違いを打ち出してアピールする

独自の強みを持てばアピール要素となり、生き残りやすいです。特定の分野に特化する、先進的なサービスを提供するなどすれば他事業所との差別化が図れます。

例えば、賛否がある内容ではありますが、“エンターテインメント型デイサービス”といった、参入元企業が元来持っている強力な強みを運営に活かしている事業所もあります。

労働環境を改善して人材の定着を図る

時短勤務などを導入し、スタッフが働きやすい職場環境を実現させることが求められます。

また、派遣スタッフなどスキル担保が出来るスタッフを活用することで、社会保険料や福利厚生費など、自社負担を軽減させることにもつながります。また、無駄な会議や朝礼等を削減し、職員の負担を削減するなども有効です。

人材育成に力を入れる

人材育成を充実させて、サービスの質を上げることが重要です。教育制度を整えることで、離職率低下につながります。

人材育成に力を入れている事業者の中には、先行投資をかけることで加算取得を長期で実現できる体制づくりに注力しているケースもあります。

たとえば、長期勤務しているスタッフや将来的な運営者となるであろう社員に対して、加算要件に必要な資格取得の支援をする、といった方法もその一つです。

現場にITを導入して労働生産性を上げる

労働生産性を高めるために人件費を上げることは非常に難しいため、従業員一人当たりの業務効率化は最優先で取り組む課題であるといえます。勤怠管理サービスや介助リフトなどを導入するのも良いでしょう。

アナログな手法では膨大な時間を要する作業も、IT技術を導入することにより、大幅な時間短縮につながり、職員の作業負担軽減や費用削減を実現できます。

また、削減できた分をコア業務に注力させること出来るため、利用者の満足度向上を図ることにつながります。

まとめ

デイサービスの経営や資金繰りに悩みがあるなら、福祉サービスに強い専門のコンサルティングを受けるのがおすすめです。デイサービスを運営している土屋であれば、法人の抱える課題や改善策についてもスピーディーにサポートが可能です。

土屋総研は、日本全国で福祉に携わる株式会社土屋グループの総合研究部門です。福祉サービスを利用する方の地域生活を維持することを目的として、共に地域を支える同業者へのコンサルティングも比較的安価で行っています。

土屋グループは、多数の事業承継、M&A実績や、同業者へのコンサルティング実績があり、グループ内にも人材教育研修機関を有しているなど、事業の立て直しや人材不足、後継者不足、事業承継、事業の買収・譲渡(M&A)など総合的なサポートが可能です。ぜひご相談ください。

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