グループホーム経営のメリットは?収益モデルと成功ポイントについて

この記事では、グループホーム経営に新たに参入する場合のメリットやデメリット、収益モデルについてまとめています。参入を検討する上で、ぜひとも押さえておきたいポイントを解説します。


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グループホーム経営の概要

グループホームは、認知症の高齢者を対象にする「認知症対応型共同生活介護」と障がい者を対象とする「共同生活援助」があります。

認知症高齢者のグループホームでは、入居者同士の交流や共同生活によって認知症の進行を抑え、自立支援を目的としています。また、共同生活援助では共同生活による孤立の防止、精神・身体の安定、自立支援を目的としています。

当記事内では、障害福祉サービス等全体の総費用額の8.8%を占める、年々利用者が増加している共同生活援助(障害者グループホーム)をメインに解説します。

グループホーム(共同生活援助)の支援内容

グループホーム(共同生活援助)には3種類のタイプがあります。タイプ別に支援内容を解説します。いずれのタイプであっても障害支援区分に関わらず利用が可能です。

介護サービス包括型

・主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他日常生活上の援助の支援を行います。
・利用者の就労先又は日中活動サービス等との連絡調整や余暇活動等の社会生活上の援助も行います。このタイプの事業所が最も多く、全国に7,000以上の事業所と11万人以上の利用者が存在しています

日中サービス支援型

・主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他日常生活上の援助(昼夜を通じて1人以上の職員を配置)の支援を行います。
・ 利用者の就労先又は日中活動サービス等との連絡調整や余暇活動等の社会生活上の援助も行います。
・ 短期入所(定員1~5人)を併設し、在宅で生活する障害者の緊急一時的な宿泊の場を提供するという面もあります。このタイプの事業は平成30年にスタートした新しいタイプであるため、全国にはまだ200事業所に達していない状況で、利用者も2,000人程度となっています。

外部サービス利用型

・主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談その他日常生活上の援助の支援を行います。
・利用者の状態に応じて、入浴、排せつ又は食事の介護その他日常生活上の援助(外部の居宅介護事業所に委託)も行います。
・利用者の就労先又は日中活動サービス等との連絡調整や余暇活動等の社会生活上の援助も行います。
このタイプは外部の居宅介護事業所が委託運営していて、全国に1,300程度の事業所があり、15,000人近い利用者がいます。

出典:「共同生活援助(介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中サービス支援型)
に係る報酬・基準について」(厚生労働省)

障害者グループホーム(共同生活援助)の利用対象者

障害者グループホーム(共同生活援助)の利用対象者は以下のとおりです。

①身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者で、日中サービス支援型の場合は常時介護が必要となる人。
②身体障害者の場合、65歳未満で福祉サービスを利用したことがある人。
③単身では不安があるものの、施設ではなく地域でくらしたい障がい者。

グループホーム経営(共同生活援助)に必要な設備

共同生活をする住居には、1ユニット(1棟)以上が必要です。1ユニットの広さは自治体によって異なり、定員は2名以上10名以下となっています。

ただし、既存の建物を利用する場合は20名以下、都道府県知事が特に必要と認める場合は30名以下とすることができます。

なお、1部屋の面積は収納設備を除いて7.43㎡(約4.5畳)、住めるのは原則1名です。また、入居者同士が交流できる設備の設置も必要です。

グループホーム経営の現状は?

厚生労働省の調査では、グループホーム利用者は平成20年から令和3年までの13年間で約48,000人から約141,000人までと約3倍に急拡大しています。

国の福祉サービス関係予算も年々増加の一途を辿っていて、令和3年から令和4年でも1,175億円増え、1兆8,478億円となっています。

国の支援があることや利用者が増えていることもあり、グループホームの施設数も増え、市場は拡大しています。

出典:「障害者の居住支援について」(厚生労働省)

グループホーム経営における収益の仕組みは?

グループホームは社会的意義のある福祉サービス事業であり、収益性が確保できるよう、国の支援体制も整っています。ここでは、その仕組みについて見ていきましょう。

収支は利用費+給付金

グループホーム経営での収支は、各自治体の国民健康保険団体連合会からの給付金と利用者からの家賃や食費を含むサービス利用費となります。収支の約9割が給付金です。国の障がい者支援が手厚く、安定性があります。

支出は家賃+光熱費+人件費

グループホームを維持するための地代、光熱費、人件費がメインです。光熱費は利用者負担を採用しているケースもあります。利用者の人数によって給付金が増えるため、収益性もその分高まります。

グループホーム経営のメリット・デメリット

収益性、安定性が共に高いグループホーム経営ではありますが、利用者の生活を支える基盤でもあることから、設立には責任が伴います。失敗を防ぐためにも、メリット・デメリット双方を事前に把握しておくことが必要です。

グループホーム経営をするメリット

その他の福祉サービスに比べると国の支援も強く、安定性があります。適した設備の整備やニーズに沿った運営を継続することが、利用者に長く利用してもらえる要素となるため、長期的な安定収入を期待できます。

また、運営の安定性があれば資金繰りや人材確保もしやすくなり、経営基盤も年々固まっていくことが期待できます。

こうした収益性、安定性の高さより、グループホームの設立は、自社の使用していない建物・施設の活用や相続対策としても活用されることがあります。

グループホーム経営でのデメリット

開業や運用にはノウハウや専門知識が必要です。長期利用が見込めるサービスではあるものの、入居者それぞれに対して正しいケアや適切な設備の整備が欠かせません。支援スタッフの資格要件などがないため、運営側ではスタッフの教育や配置なども専門的な知識を持って取り組む必要があります。

開業時にはグループホームに適した建物や設備の要件をクリアして用意する必要があるため、相応の初期コストもかかります。有識者のコンサルティングや補助金制度をうまく活用することが重要となります。

グループホーム経営での課題

特に日中サービス支援型グループホームにおいては、利用者の高齢化・障害の重度化に対する受け入れ体制の整備が必要です。

施設職員の勤務基準等は施設経営者側にゆだねられることからも、障害特性や障害程度を踏まえた支援が行えるよう、障害福祉サービス経験者の採用や資格取得支援などの職員のスキル向上に対する施策展開も重要となります。

グループホームの経営を成功させるポイント

グループホームの経営を成功に導くには、ポイントを押さえて事業を推進することが重要です。以下、そのポイントについて解説します。

国や自治体の制度を活用する

国や自治体の補助金や助成金制度をしっかり確認し、効果的に活用しましょう。例えばグループホームを設立する場合には、社会福祉施設制度補助金が給付されます。この制度を活用すれば、国が費用の2分の1を、自治体が4分の1を負担してくれるので、事業者の負担は最小限に抑えられます。

独立行政法人福祉医療機構から融資を受けることもできるので、自己負担分を準備できない場合には、こちらの活用も視野に入れてみましょう。

また福祉業界においては、収益性を挙げる上で、国からの加算も大切なポイントです。加算は定期的に見直し、変更申請が必要な場合には随時対応することも重要です。

出典:「社会福祉施設の整備・運営」(厚生労働省)

入居者募集や営業に力を入れる

利用者の人数は状況によって変化します。利用者が増えればそれだけ収益性も高くなるため、募集や営業に力を入れることも大切です。

事業所のメリットや魅力、アピールポイントを押さえてHPやSNS等で発信するとともに、地道な営業活動を通じて、地域の利用者を紹介してくれる「相談支援専門員」としっかりとした信頼関係を築くことが大切です。

人材教育でサービスの質を上げる

障がい者への理解や適切なケアの方法など、しっかりとしたスタッフ教育が必要です。とりわけ、障がい者のケアにおいてはコミュニケーション力が必要とされるため、利用者に向き合い、寄り添うという姿勢をいかに伸ばしていけるかが、スタッフ教育の重要なポイントです。

また、利用者との相性が合わないことによる過度なストレスや過重労働を防ぐためにも、適切な人員配置は大切です。

まとめ

グループホームの経営は安定性・収益性ともに高いことから、新規参入は昨今急増しています。しかし、福祉業界への参入には専門知識も必要です。お悩みの際は、コンサルティングを利用すれば、必要な手続きやリスクなどのアドバイスを受けられます。

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