デイサービスを開業するには?条件や必要な資格などを解説

スタッフの負担を軽減し、働きやすい職場にするためには、業務の改善が不可欠です。この記事では、介護業務を改善させるメリット、そして働きやすい環境にするためのアイデアを紹介します。


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デイサービスは高齢者や障害者などの日中の時間帯における生活支援や社会参加を行う重要な福祉サービスであり、急激な少子高齢化の進展により、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて社会保障制度の改革が進められています。

それとともに、デイサービスを開業することは、高い社会性からも地域社会に貢献し、事業として成功を収める大きな可能性をもっています。しかし、デイサービスを開業するにはさまざまなステップや条件・必要な資格などがあります。

この記事では、デイサービスを開業するための具体的な流れやポイントを詳しく解説していきます。

デイサービスを開業するための流れ

地域(都道府県や市区町村)によって規則や手続きが異なる場合があるため、具体的な情報は地域の自治体や関連機関に確認することが重要となります。

大きな流れとしてはサービス内容の選定に始まり、開業のための法人設立や申請書類作成、拠点となる建物・スタッフの準備などが必要となります。

ここからはさらに深掘りして流れをご紹介します。

1.サービスプランの計画を立てる

デイサービスを開業する際には、まずサービスの内容や提供するプランを計画することが重要です。どのような利用者に焦点を当て、どのようなサービスを提供するのか、そのサービスの特徴や強みを明確にしていきます。

また、スケジュールやプログラム、食事の提供など、日々の運営に関する計画も含めて考えましょう。

2.開業するために必要な書類をそろえる

デイサービスを開業するには、さまざまな書類の提出が必要です。具体的な事例によって異なりますが、設立届、事業計画書、運営マニュアル、防火設備の点検結果などが一般的に必要とされます。

これらの書類は、後述する開業許可申請や助成金の申請時にも必要となります。

3.法人設立をする

デイサービスを開業する場合、「法人であること」が求められていますので、法人登記していない場合は、各種法人としての登記が必要になります。その形態は、株式会社、合同会社、有限会社などがあります。

設立の際には、会社名の登記や資本金の用意、役員の選任などが行われます。設立には、税務面や経営体制の確立などの点で注意が必要です。

また、デイサービスを開業するための大前提として、以下2つの基準(ルール)を満たせるよう、準備を進めることが必須となります。

  1. 人員基準:配置しなくてはいけない職種・人数等が決まっている
  2. 設備基準:事業所の区画や面積、必要となる設備等が決まっている

加えて、事業計画書を作成する際に計算した開業費用については、自己資金や金融機関からの融資による資金調達を行います。後述する内容となりますが、その資金で物件の契約時の支払いや備品の購入、職員の採用などを進めます。

4.開業許可申請をする

デイサービスを運営するには、厚生労働省や自治体からの開業許可が必要です。開業許可の取得には、施設設備や運営計画の提出、設備点検などが含まれます。また地域ごとに異なる要件や基準が存在することからも、事前確認が重要です。

開業予定日が決まったら、通所介護の指定権者(都道府県または市)に指定申請を行うことになります。指定申請にはおおよそ2~3ヶ月を要することもあるため、事前準備に不足が無いように指定申請書及び添付書類を作成・準備し、提出します。

《開業許可申請に必要な書類リスト》

指定(許可)申請書
通所介護事業所の指定に係る記載事項
申請者の登記簿謄本又は条例等
従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
就業規則の写し(表紙、常勤の勤務時間及び改正日時がわかるページのみ)
資格証の写し(サービス提供責任者)
雇用契約書の写し又は誓約書
事業所の平面図建築図面
当該建物に係る登記簿または賃貸借契約書及び関係法令確認書
外観及び内部の様子がわかる写真
運営規程(料金表含む)
利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
誓約書及び誓約書別紙
介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び
介護職員等ベースアップ等支援加算算定に係る体制等に関する届出書
※処遇改善等計画書(算定する場合のみ)
老人居宅生活支援事業開始届又は老人デイサービスセンター等設置届、
老人福祉法上のチェックリスト

※上記内容は自治体によって変動しますのでご参考として活用ください。

5.建物や設備の用意をする

デイサービスを提供するためには、適切な建物や設備の用意が必要です。トイレや浴室など、利用者にとってバリアフリーを考慮した設備の整備が欠かせません。また、利用者の安全や健康を考慮した防火対策や衛生管理も重要です。
以下に設備基準の一例をお示しします。

《設備・備品に関する基準概要》

設備・備品等 基準の内容
食堂 食事提供に支障のない広さを有する事
利用者定員数×3平方メートル以上の面積が必要
※食堂と機能訓練室の面積合計
機能訓練室 機能訓練の実施に支障がない広さを有する事
利用者定員数×3平方メートル以上の面積が必要
※食堂と機能訓練室の面積合計
静養室 ※都道府県や市により必要な設備等の定めあり
相談室 相談内容が漏洩しないよう、
パーティション等の設置による配慮の必要あり
事務室 ※都道府県や市により必要な設備等の定めあり
消火設備
非常災害設備
消防法その他法令に規定された設備を有する事

※上記内容は自治体によって変動しますのでご参考として活用ください。

デイサービスの開業に必要な人員

通所介護(デイサービス)は介護保険法に基づくサービスの提供を行うため、運営基準と呼ばれる“必ず遵守しなくてはいけないルール”があります。

このルールを遵守出来ない場合、事業停止処分といった行政処分を受け、事業継続が厳しくなるため、開業前に必ず内容を把握して、運営規程や書類整備が必要です。
ここからは人員に関する基準について詳細をお伝えしていきます。

管理者

デイサービスを開業するにあたり、運営を統括し、利用者の調整やスタッフの指導を行う管理者が必要です。介護や福祉に関する知識や経験が求められるポジションです。

原則として、常勤専従で1人を配置する必要があります。

デイサービスの管理者になるためには、一般的に以下のような資格や条件が求められることがありますが、法律や規定は変更される可能性があるため、最新の情報を確認することをおすすめします。

①介護支援専門員(ケアマネージャー)資格
デイサービスは介護サービスの一環となるため、介護支援専門員の資格を持つことが求められることがあります。介護支援専門員は、利用者のケアプランの作成や調整、サービス提供の調整などを担当します。

②介護福祉士
介護業務を行う際には、介護福祉士の資格を持っていることが望まれる場合があります。介護福祉士は、利用者の日常生活のサポートやケアを行う役割を担います。

③社会福祉士
デイサービスの管理者には、利用者ニーズの適切な評価や、サービスの質を向上させるためのスキルが求められます。この点で社会福祉士の資格を持つことは有益とされることがあります。

④介護事務主任者等
デイサービスの運営には、経営面や事務面でのスキルも必要です。介護事務の知識や管理スキルを持つために、介護事務主任者等の資格を持つことが求められることがあります。

⑤法人向けの経営資格
介護職としての資格以外に、法人の経営者としての資質や経験も重要です。経営者としてのスキルや知識を持っていることが望まれる場合があります。

これらの資格や条件は、デイサービスの種類や地域(自治体)によって異なる場合があります。詳細については、厚生労働省や地方自治体のガイドライン、規定をご確認ください。

介護職員

デイサービス事業所における介護職員の人員基準は、利用者の人数によって変化します。

利用者の日常生活のサポートや身体介助を行う介護職員には介護福祉士やホームヘルパー(実務者研修や初任者研修)などの資格が求められることが多いです。

①利用者が15名までの場合
1名以上必要です。※管理者や看護職員等と兼任が可能です。

②利用者が16名以上の場合
15名を超える部分を5で割り、そこに1を加えた人数が必要です。

看護職員

デイサービス事業所における看護職員の人員基準は、利用者の定員数によって変化します。

看護職員の役割としては、利用者の健康チェックや各種介護を受ける際のサポートなどが挙げられます。続いては、デイサービス事業所における看護職員の人員基準について見ていきましょう。

①利用定員が10名以上の場合
看護職員(看護師または准看護師資格を有する)1名以上
【ポイント】
10名以上の事業所の場合、看護職員は常勤職員である必要はありません。ただし、事業所内でサービスを提供する時間帯に他職員(介護職員や機能訓練員等)と確実に連携が取れる状態の看護職員が1名以上必要となります。

②利用定員が10名以下の場合
看護職員か介護職員1名以上
【ポイント】
10名以下の事業所の場合、看護職員・介護職員・生活相談員のいずれかが1名以上必要です。10名以下の事業所の場合、看護職員の人員基準は設けられていないため、介護職員・生活相談員と共通での人員基準となっています。
※10名以下の事業所では1名以上の看護職員OR介護職員OR生活相談員が常勤である必要があります。

機能訓練指導員

デイサービス事業所における機能訓練指導員の人員基準は、利用者数にかかわらず1名以上が必要です。

機能訓練指導員は利用者に合わせた機能訓練を実施し、日常生活をできる限り自身で行えるようサポートするのが仕事です。機能訓練指導員はデイサービスの中核となる役職ともなるため、1名ではなく複数名を設置する事業者も多く存在します。

機能訓練指導員として勤務するためには下記の資格を有している必要があります。

  • ・看護師または准看護師
  • ・理学療法士
  • ・作業療法士
  • ・言語聴覚士
  • ・あん摩マッサージ指圧師
  • ・柔道整復師
  • ・鍼灸師

生活相談員

勤務延べ時間数÷サービス提供時間数“1”以上となる人数を配置する必要があるため、最低1名以上の配置が必要となります。

生活相談員は、デイサービスが必要な利用者やその家族に対して必要な相談や指導を行う役割が主なポジションとなります。

また、利用者が10名以上となるデイサービス事業所では、生活相談員または介護職員のうち1名が常勤でなければならないということも規定されていますのでご留意ください。生活相談員として勤務するためには下記の資格を有している必要があります。

  • ・社会福祉士
  • ・精神保健福祉士
  • ・社会福祉主事任用資格

デイサービスの開業資金はいくら必要?

デイサービスの開業資金は、地域や規模、提供するサービスの内容などによって大きく異なるため、一概に「いくら必要なのか?」という具体的な金額を提示するのは難しい状況です。しかし、一般的な目安として、以下の項目にかかる費用を考慮した資金の準備が必要となります。

①施設の準備にかかる費用
デイサービス施設の賃貸契約もしくは建設費用、内装設備の費用などが含まれます。

②人件費
職員の給与や福利厚生などの人件費が必要です。デイサービスは多職種が関わりますので適切な人員を雇うための資金を考慮する必要があります。
※特に3ヶ月以上の人件費を有する事が運転資金として必要とされています。

③運営費用
電気、水道、ガスなどの公共料金、清掃費用、消耗品(紙製品や清掃用具など)に関わる費用などが含まれます。

④広告・宣伝費用
開業前後の集客や宣伝活動にかかる費用が必要です。地域の方々に事業所を認知してもらうための広告や宣伝予算の確保が重要です。

③法的・規制関連費用
開業にあたり、許認可の手続きや法令遵守に関するアドバイスを受けるための費用がかかるかもしれません。介護事業は複雑な要件が多岐に渡るため、コンサルタントとの契約が必要になる場合もあります。

④トレーニング・研修費用
スタッフや介護スキル向上のためのトレーニングや研修に関する費用の考慮が必要がです。

⑤その他諸費用
事業運営に伴う予期せぬ費用や諸経費なども考慮する必要があります。

一般的には、数百万円から数千万円以上の資金が必要とされることがあります。具体的な金額を把握するためには、事業計画を作成し、必要な費用を詳細に洗い出してみることが重要です。また、金融機関からの融資や助成金などを活用することも考えられます。開業の際には、専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。

デイサービス開業・立ち上げ時に助成金の申請はできる?

助成金の申請に関する情報は国や地域によって異なる場合がありますが、一般的にデイサービスの開業・立ち上げ時に助成金の申請は可能です。

助成金の種類や条件は、申請する組織や団体によって異なりますので、具体的な情報は該当する地域の自治体や関連する団体のWebサイトや窓口で確認することが重要です。

なお、デイサービスの開業・立ち上げ時に申請できる可能性のある助成金の一例としては、次のようなものがあります。

  1. 介護・福祉人材確保緊急支援事業費補助金
  2. キャリアアップ助成金(正社員化コース)
  3. ICT導入支援事業補助金
  4. 人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)
    ※2021年度より機器導入助成は廃止されたが、目標達成助成は継続中
  5. 両立支援等助成金
    (出産時両立支援コース・介護離職防止支援コース・育児休業等支援コース)
  6. トライアル雇用助成金
  7. 特定求職者雇用開発助成金
  8. 65歳超雇用推進助成金

これらの助成金には申請条件や申請手続きが存在します。詳細についてはトータルケアジャーナルの以下の記事をご確認ください。

介護事業で補助金や助成金は活用できる?対象となる制度を目的別で紹介

申請の際には、計画書や予算、運営方針などの提出が求められることがあります。また、申請のタイミングや申請窓口なども確認する必要があります。

具体的な情報は、お住まいの自治体によって異なりますので、該当する窓口に問い合わせるか、Webサイトを確認することをおすすめします。

また、専門家やコンサルタントのアドバイスも活用することで、助成金の申請手続きをスムーズに進めることができるかもしれません。

まとめ

デイサービス事業をスタートさせるためには、運営に関わる各種ルールを明確に理解して、人材の確保や施設・設備の準備が必須です。介護業界は他の産業と異なる特性があるため、改正への備えに不安のある介護事業所においては、介護業界のことをよく知る専門家に相談するのがベストです。

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