合理的配慮とはなにか?~「合理的」の意味~

【みなが暮らしやすく、働きやすい社会へ】
優生思想は息がつまる社会を生み出し、生産性も落ちます。
他方、障がいがある方の特性を考慮した制度や構築物の設計を行えば、子育て中の家族や高齢者にとっても、暮らしやすい社会になりますし、職場は仕事がしやすくなります。
障がい者を雇用し、障がい者が働きやすいように、制度を変更したり、マニュアルや仕様、レイアウトを変えたりしたら、みなが働きやすくなり、ミスもなくなり効率も高まったといった事例はよくあります。
つまり、障がいに配慮することは、みなが暮らしやすく働きやすい社会を設計するために必要なことなのです。障がいのある人たちにとって暮らしやすく働きやすい社会であれば障がいのない人たちにとってはもっと暮らしやすく、働きやすいのです。
しかも、「障がい」は、障がいのない人たちをモデル化しそれに基づいて社会の制度設計がされることで生み出されるものです。
それが障がいに関する「社会モデル」です。
けがや病気、加齢、育児や介護などによって、暮らしにくさや働きにくさを抱える可能性は誰にでもあります。
それに合わせた社会の制度設計が必要であり、障がいのある方を念頭に入れた設計が役に立つわけです。
配慮は、障がい者のためだけのものでもなければ無駄なコストでもありません。
ただ、社会の資源も企業の経営資源も有限です。
社会課題は、障がい者に関わるもの以外にもありますし、企業の場合、収益事業にできるだけの資源を向けねば倒産しかねません。無限の配慮は難しい状況です。
そこで「合理的配慮」という表現が使われています。
以下では、企業の場合を想定してお話を進めていきましょう。
【「合理的」の意味】
「合理的」とは、「理にかなっている」という意味です。
「良識的な判断に基づく」とか、「無理な極論を押し通そうとしているわけではない」、「筋が通っている」といった意味合いだと思えばよいです。
では、「良識的な判断に基づく配慮」とはどういったことでしょう。
上記のように、企業は社会が求める財やサービスを生産し、収益を上げ、経営を維持せねばなりません。
同じような商品を扱う競争相手がいることが一般的で、コストを下げたり、より魅力的な製品を開発したりと、日々の経営努力やそのための投資が必要です。
その中で、雇用した障がい者のためにできることは限られてきます。
階段で上り下りする構造になっている社屋の場合、車いすの障がい者従業員のために社屋を取り壊してエレベーターを設置することは難しいでしょう。
階段の構造上、昇降機を設置するのが難しい場合もあるかもしれません。
では、何もしなくてもよいのでしょうか?車いすの従業員は仕事ができなくなってしまいます。
そのような場合、障がいのある従業員が出社したら、仕事のフロアまでみなで担ぎ上げることくらいはできます。
退社時には、また、担いでおろせばよいわけです。
つまり、企業の経営を阻害するほどの負担を負ってまで配慮する必要はない、ただし、何もしなくてよいわけではなく、代替案はないか考えましょうというのが、「合理的」の意味なのです。
【障がいのある顧客の場合】
上記の事例は、従業員の場合でした。
しかし、企業が障がいのある方と接する場合、障がいのある従業員とは限りません。
顧客として接する可能性もあります。
例えば、飲食店の場合、障がいのある方が帰る際、家まで飲食店の社用車で送ることを求められたとしましょう。
社用車を使いますし、運転手として従業員を張り付けねばなりません。
その場合、障がいのない顧客にも行っていないサービスであれば、あえて行う必要はありません。
ただ、送迎する代わりにタクシーを呼ぶことはできるかもしれません。
もちろんタクシー代は、タクシーを利用する障がい者が負担することになります。
合理的配慮とは、障がい者に対しては企業の業務の範囲を超えた要求に応えましょうということではありませんし、業務を阻害したり、経営に影響するほどの過大なコストをかけたりしてまで行わねばならないものではありません。
その意味で「合理的」なのです。障がい者が就労したり社会生活を送ったりする際に直面する障壁を取り除く努力をできる範囲でしっかり行いましょうということなのです。
【声に耳を傾ける重要性】
合理的配慮は、障がいがある方が障がいのない人たちと同様の社会生活を送ったり、就労したりできるようにするためのフレームワークです。
ノーマライゼーションを進め、社会的包摂を進めるために必要なことです。
ただ、良かれと思って行ったことが、かえって障がいのある方にとって不都合を生んでしまうこともあり得ます。
そこで、合理的配慮を行うためには、障がいのある方の声をしっかり聴くことが必要です。
当人だけではなく、障がい者の家族や支援員からの意見や要望にも耳を傾ける必要があります。
その上で、その要望を実現できるかを検討し、それがどのような形になるかの案をまとめたり、できない場合でも、代替案はないかを検討したりします。
さらに、その案について障がい者側の意見を聴きつつ最終案にまとめていきます。
そして、実施してみてどうかの意見も聴きます。モニタリングまでしっかり行う必要があるのです。
もちろん言われなければ、何もしなくてよいわけではありません。
仕事の様子を見ていて、こうしたらもっと作業がしやすいのではないかと気づく場合もあります。
それを提案することもあり得ます。
また、要請されたけど実施できない、代替案も難しいという場合、それを障がい者側に説明することが必要です。
説明がなく、なにもなされなければ「ほったらかしにされた」「無視された」「何もしてくれない」と思ってしまい、企業側に不信感を持ち、その結果、退職してしまう可能性もあります。
要望や改善結果についての意見を訊くだけではなく、できない場合の事情を説明し納得してもらうことが必要ですし、そもそも、普段からのコミュニケーションが大事なのです。