合理的配慮とはなにか?~国連の勧告と合理的配慮の定義~

【日本の取り組みに対する国連の所見】
ここからは、合理的配慮をめぐる国際的な動きや法令の話をしていきましょう。
国連では、障がい者の尊厳と人権・基本的自由の尊重・保護・促進を目的として「障害者の権利に関する条約」が2006年に採択されました。
「障害者権利条約」と呼ばれています。
日本は、同条約を2014年に批准しましたので、取り組みを進めねばなりません。
しかし、2022年に国連・障害者権利委員会が日本を対象として取り組みの初回の審査を実施し、それに基づいて日本に対して改善の勧告がなされました。
審査結果は総括所見にまとめられていますが、日本は社会的包摂の点で取り組みが不十分であるとの指摘がなされています。
就労や入所施設、教育分野の問題について指摘がありましたが、就労に関して具体的には、以下のような内容です。
日本の就労継続支援A型事業所やB型事業所は、障がい者のために運用されてきた福祉の事業所です。
しかし、障がい者のための就労施設を作ることによって一般的な労働市場から分離されていることになります。
つまり、社会的に排除されているということです。
しかも、厚生労働省によれば、令和4年におけるB型事業所の平均工賃が17,031円と著しく低く、A型事業所が83,551円と高いとは言えない状況にあり、そのような労働に固定化されていることが問題にされました。
出典:厚生労働省「福祉事業所の平均工賃」
その他、教育分野における分離教育や入所施設・病院への隔離が問題とされています。
社会的包摂が進んでいないことが指摘されたわけです。
障がい者と健常者が分離された社会では障がい理解は進みません。
そうなると、合理的配慮が自然にできる社会にはなりません。
合理的配慮は、意識せずにできるようになることが洗練された社会であり、みなが暮らしやすく働きやすい社会をつくるために必要なことなのです。
【合理的配慮に関する国連の定義】
合理的配慮は、国連の「障害者の権利条約」(2006年)第2条で以下のように定義されています。
「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」
ここでは、障がいがある方が、障がいのない方に対して平等に社会生活が送れるように対応したり調整したりすることとされています。
ただ、最後の方に「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と明記されています。
障がいのない人に比べてあまりにも手厚い場合、逆差別になる可能性もあります。
また、配慮をするということは一定の負担を伴います。
それが過度のものになるようなら実施が難しくても致し方ないということです。
【日本での根拠法】
このような国連の方針に呼応して、日本では合理的配慮が法律で定められることになりました。
合理的配慮は、健常者の雇用や健常者への接客にしか慣れていない企業にとって一定の負担を伴いますし、そもそも何をすればよいかわからないといった状況から面倒と思われる可能性があります。
そこで、法で定める必要も出てくるわけです。
合理的配慮を定めた法律としては、「障害者差別解消法」と「障害者雇用促進法」を挙げることができます。
前者の正式名称は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」で、2013年6月制定、2016年4月1日施行です。
2021年5月に改正され、改正法が2024年4月1日に施行されますが、その際に、民間企業による合理的配慮が義務化されました。義務化される前は、努力義務でした。
ただ、本法令が対象とする合理的配慮は、雇用した障がい者に対するものではなく、顧客である障がい者や学校の生徒といった雇用関係にない人たちに対するものです。
雇用関係にある場合には、別途、適用される法律があるからです。それが後者の「障害者雇用促進法」です。
後者の正式名称は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」で、1960年に身体障がい者の雇用を進めるためにできた「身体障害者雇用促進法」が前身になっています。
その後、知的障がい者が加わり、1987年に「障害者雇用促進法」となりました。
こちらは法令の名称からわかるように、雇用の分野における差別の禁止や合理的配慮の根拠法となっています。
2016年の改正法で、雇用の分野における障がい者差別が禁止され、雇用の分野における合理的配慮が義務化されました。