合理的配慮とはなにか?~法令にみる合理的配慮~

【障害者差別解消法の理念】
障害者差別解消法は、第1条で「障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資すること」を目的とすることが記載されています。
差別をなくし、共生社会を実現することがその目的なわけです。
ここで注意せねばならないのは、障がい者の定義と障がいについての考え方です。
第2条では、障がい者が次のように定義されています。
「障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害・・・がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」
障がい者とは、いわゆる障害者手帳を持つ者だけを指すわけではなく、心身の機能の障害によって日常生活や社会生活に制限を受ける者とされています。課題を抱えた人はみな該当してくる可能性があるわけです。
また、制限を受けることになる要因(原因)は、障がいにあるだけではなく、「社会的障壁」も原因になっていると書かれています。
第2条2では、以下のように社会的障壁が定義されています。
「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」
つまり、障がい者が生きにくいのは、心身の機能に問題があるからだけではなく、障がいという個性に対応できていない社会の事物や制度、慣行、観念等にあるのだと言っているわけです。
社会に原因があるという考え方は、障がいの「社会モデル」と言われます。
障がい者の生きにくさをもたらす障がいを社会が解消すべきだという議論につながります。
一方、個人の心身の機能における欠陥や問題が障がいであるという考え方は、「医学モデル」と呼ばれ、障がい者がリハビリや訓練によって改善していくことが必要という考え方に結び付きます。
「医学モデル」も意味がありますが、「社会モデル」に基づくことによって、社会の対応の不十分さが見えてきて、対応の方策を社会が考えるという局面に結び付くという意義があります。
【障害者差別解消法での記載】
障害者差別解消法では、合理的配慮について第8条1および2で以下のように記載されています。
「事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」
「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、・・・社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」
「1」では、障がいを理由として差別をしてはいけないことが記載されており、第2項ではそれに伴って、「合理的な配慮」をすることが求められています。
その要件としては、「2」で障がい者側から「意思の表明があ」ることとされています。
また、合理的配慮のための「負担が過重でないとき」という制約条件も記されています。
この点については、既述の通りです。
ということは、合理的配慮は、以下のように整理することができるでしょう。
①必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られる
②障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
③事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
なお、ここで事業者とは、企業だけではなく、団体や店舗、個人事業主など事業を行う者すべてが入ってきます。
また、事業領域としては、特にB to Cの領域がイメージされますが、具体的には、教育、医療、福祉、公共交通などが大きくかかわってくるでしょう。
【障害者雇用促進法の目的】
一方、障がい者雇用促進法の目的は、第1条で以下のように記載されています。
「この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。」
障がい者が、自分に合った仕事に就き、安定的に雇用されていくことが目指されています。
その際、障がいのない者と「均等な機会及び待遇」が確保されることが求められています。
つまり、差別の解消です。
それを具体的に事業主に求めるのが、第34条と第35条です。
【障害者雇用促進法の記載】
障害者雇用促進法第34条、第35条には、次のような記載があります。
「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。」
「事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。」
ここでは、募集や採用、採用後の雇用管理において、差別をしてはいけないと書かれています。
それに基づいて、第36条で合理的配慮が求められることになります。
第36条2では、募集や採用活動において障がい者からの申し出があった場合、対応せねばならないとされています。
しかし、「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」との但し書きがあり、合理的配慮であることが分かります。
「事業主は・・・労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。」
また、第36条3では、雇用してからの合理的配慮も求められていて、過重な負担でない限り、障がい特性に配慮し障がい者が働きやすい環境を整えることが求められています。
「事業主は・・・雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。」
最後に、第36条4では、合理的配慮を行う際は、障がい者の意向を尊重することと、障がい者からの相談に対応するためのしくみづくりが求められています。
「事業主は、前二条に規定する措置を講ずるに当たっては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。」
「事業主は、前条に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
なお、下記のサイトに掲載されている厚生労働省の解説資料によれば、障害者雇用促進法に記載されている事業主は、事業所の規模や業種に関わらずすべての事業主が想定されています。
※出典:厚生労働省(リンク先PDF)
「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」
また、同資料では、対象となる障がい者は、「障害者手帳非保持者も含む、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者」とされています。
障害者手帳を絶対的基準としない観点がみられます。
世の中には、障がいに分類されない難病に苦しむ方や障がいには分類できないけれど生きにくさや働きにくさを抱えた方がいます。
それらの人々への配慮が、みなが暮らしやすい社会、みなが働きやすく生産性が高い会社を作るために必要なのです。
そのためには、意識せずに合理的配慮ができる社会や職場を作ることが必要です。