訪問介護事業所の経営者のみなさん、「特定事業所加算」の申請はお済みでしょうか。
特定事業所加算の取得は、事業所運営に大きなプラスになります。
土屋総研では2022年4月、全国に重度訪問介護事業所を展開する株式会社土屋において、数十の事業所の加算を手掛けた取締役・吉岡理恵により、「訪問介護における特定事業所加算」のセミナーを実施しました。
このコーナーでは、それを元に、特定事業所加算を取得するために必要な算定要件や申請方法、メリットやデメリットについてお伝えします。
これを読むだけで、みなさんの事業所も楽に加算の申請が!
■特定事業所加算とは
特定事業所加算とは、介護福祉士等の人材を確保しているなど、質の高いサービスを提供している事業所を評価する加算です。
また、介護度の高い利用者にも介護サービスを提供している事業者を評価するものでもあり、地域における介護サービスの向上が目的とされています。
■特定事業所加算の分類
特定事業所加算は、平成18年(2006年)の厚労省告示において創設された加算です。今回ご紹介するのは令和3年の最新の特定事業所加算の算定方法です。
特定事業所加算には、3つの分類があります。
まずは、あなたの事業所がどこに当てはまるのかを見てみましょう。
- 居宅系サービスで取得できる加算(介護保険法の居宅介護支援:ケアマネ)
- 訪問介護系のサービス(介護保険上の訪問介護)
- 障害福祉サービスの障害居宅系(居宅介護、行動援護、同行援護)および重度訪問介護
本コーナーでは、訪問介護系のサービスである、②と③について解説していきます。
■訪問介護系のサービス分類
訪問介護系の加算のサービスは大きく3つに分けられます。
- 訪問介護
- 障害居宅系(居宅介護・行動援護・同行援護)
- 重度訪問介護
それぞれ算定要件はおおむね共通していますが、若干異なる部分がありますので、ご自身の事業所の特定事業所加算の算定がどこに当てはまるかによって、必要となる要件も若干異なります。
■算定の種別と加算率
算定率 | 訪問介護 | 障害居宅系 (居宅、同行、行動) | 重度訪問介護 |
---|---|---|---|
20% | Ⅰ | Ⅰ | Ⅰ |
10% | Ⅱ | Ⅱ | Ⅱ |
Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ | |
5% | Ⅳ | Ⅳ | ― |
3% | Ⅴ | ― | ― |
特定事業所加算には算定の種別と加算率があります。
①訪問介護は、Ⅰ~Ⅴまであり、Ⅰの要件を満たすと、算定率は20%となります。同様に、ⅡあるいはⅢを満たせば、算定率は10%。Ⅳは5%で、Ⅴは3%です。
なお、ⅣとⅤは合わせて算定することが可能で、両方算定することで8%の加算になります。
■加算の算出方法
<ポイント①基本部分に加算される>
特定事業所加算は、加算率を基本報酬にかけて計算する加算です。
基本報酬というのはサービスにかかる基本となる部分です。
訪問介護費の基本部分 |
身体介護 | ①20分未満(167単位) ②20分以上30分未満(250単位) ③30分以上1時間未満(396単位) ④1時間以上(579単位に30分を増すごとに+84単位) |
生活援助 | ①20分以上45分未満(183単位) ②45分以上(225単位) |
通院等乗降介助 | (1回につき99単位) |
例えば訪問介護の身体介護であれば、③30分以上1時間未満のサービスは396単位が報酬単価となります。
ここに特定事業所加算の算定率を掛け算することになります。
何の加算もなければ396単位ですが、特定事業所加算のⅠ(20%)を算定した場合は、396×0.2=79.2となりますので、それがプラスされることになります。
つまり、396+79.2=475.2単位となります。
では特定事業所加算により、事業所の収益が一体どれくらい上がるのでしょうか。
特定事業所加算のⅠ(20%)を算定した場合、全体の2割ではなく、基本部分の×2割、その他となりますので、前月の報酬と比較して、1.2倍弱や1.1倍弱といった数字になると思います。こちらが事業所の収益アップにつながる、大きなメリットです。
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<ポイント② 区分支給限度基準額が適用される>
ただし、訪問介護において特定事業所加算は、現在のところ区分支給限度基準額が適用される加算となります。
ここが、特別地域加算や処遇改善加算との大きな違いになります。
特定事業所加算では、支給の総単位(要介護5だと通常36000単位前後)の中に特定事業所加算も含めてケアマネさんにプランを組んでもらうことになります。
ですので、利用者の使うサービスに若干調整が生じてしまうことも想定されるなど、少なからず利用者の経済的な負担にはなります。例えば、特定事業所加算をとって単位が増えたために、利用者の方にサービスを少し減らしてもらうなどの調整が生まれてしまう可能性があり、こちらはデメリットといえます。
特定事業所加算は、この利用者には適用するが、この利用者には適用しないというように、個別に申請することはできません。事業所としては、加算を取得するかしないかの二択になってしまいますので、利用者の方への丁寧な説明が必要となります。
なお障害系サービスでも同様ですが、利用者の自己負担の限度額が決まっているため、訪問介護ほど数多くの利用者の方々に経済的な打撃が訪れる可能性はかなり低いと思われます。
■3つの算定要件
算定要件には、体制要件、人材要件、重度者対応要件の3つがあります。
訪問介護における特定事業所加算には①訪問介護、②障害居宅系、③重度訪問介護の3つの種別と、Ⅰ~Ⅴまでの算定率がありますが、どの種別で、どの算定率を使うかで満たすべき要件が異なります。
では、障害居宅系の算定要件を例にとって見てみましょう。
訪問介護と重度訪問介護でも同じようなものがあり、文言や内容が一致しているものもあれば、違うものもあります。
全部で15個ほどありますが、そのうち5~9個ほどの要件を満たすと、なんらかの加算がもらえます。
加算Ⅰは20%と加算率が高いので、満たすべき算定要件はより多くありますが、加算率が低くなるにつれて、満たすべき要件が少しずつ減ります。
■体制要件
①個別研修計画の策定と実施
・すべての訪問介護員等の計画が必要
(×正社員のみ、×全員一律、〇複数のグループごと)
②技術指導を目的とした会議の開催
・サービス提供責任者(サ責)が主宰
・訪問介護員等のすべてが参加すること
・議事録を作成する
・欠席者への適切なフォロー
③サービス提供責任者と従業者との報告体制の整備
・(1)利用者のADLや意欲
・(2)利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
・(3)家族を含む環境
・(4)前回のサービス提供時の状況
・(5)その他必要な事項
*必ず文書で(〇メール、×電話のみ)
④訪問介護員等に対する健康診断の実施
・少なくとも年に1回
・全員が対象(×正社員のみ)
・費用は事業所負担
⑤緊急時における対応方法の明示
・文書にて交付する(〇重要事項説明書に記載)
⑥新規に採用したすべての訪問介護員等に対する同行による研修の実施
・障害福祉サービスのみで必要な要件
・研修の記録が必要
①個別研修計画の策定と実施
体制要件のまず一つ目は、「個別研修計画の策定と実施」です。
こちらは、事業所のすべての従業員に対して策定する必要があります。つまり、正社員や常勤職員のみならず、アルバイト・パート、登録の方にも個別研修計画が必要です。
個別研修計画に記載する項目は、目標・内容・研修期間・実施の時期等です。
全員一律のものを作成して配るやり方には指導が入りますが、複数のグループに分けて作成することは許容されています。
例
Aグループ:サ責やサ責に準ずる方々
Bグループ:介護経験1年以上の方
Cグループ:介護経験1年未満の方
このように職位職責や経験によってグルーピングするほか、資格や本人の意向でもグルーピングの根拠は可能ということになっています。
また研修期間についての定めは特にありませんので、年間計画ではなく、半年でも複数年でも良いという解釈は可能です。
ただし、職員が1年間に1回以上研修を受けられるようにすることという条件がありますので、年間計画を立てるのが無難であり、安全策でしょう。
また当然ながら、誰がどの研修に参加したのかという記録は欠かしてはなりません。自治体によっては、出席してどのような感想やレポートが上がっているかという点まで実地指導で確認されることもあります。
なお、研修については社内開催だけでなく、外部機関で開催されている研修に参加するのも良いとされています。また、動画視聴の研修も禁止されていません。ただし、他社の研修を使用する場合の費用については会社負担でなければなりませんのでご注意ください。
*訪問介護および障害居宅系サービスのⅣでは、サ責の個別研修計画の策定と実施が要件となります。
これらの加算算定においては、その事業所のサ責全員に対して研修計画の策定と実施の必要があります。こちらを算定する場合には、上記の職員個別の研修計画は求められておりません。
②技術指導を目的とした会議の開催
体制要件の2つ目は、従業者の技術指導を目的とした会議を開催しているかどうかです。
ここで言う会議は、内容もある程度定められており、利用者に関する情報もしくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達、または技術指導等を目的とするということが必要だと謳われています。
こちらの会議の開催については、訪問介護、障害居宅系、重度訪問介護の各種別で少しずつ文言が異なっていますが、共通している点が以下の4つになります。
・サ責が会議を主催
・訪問介護員等のすべてが参加しなくてはいけない
・議事録の作成
・欠席者への適切なフォロー(内容を必ず伝達しているか)
これは、サ責全員が会議を欠席していたということになると会議とは認められませんし、会議は開催したものの参加者や欠席者、内容、出された意見などの議事録がなければ不適切ということになってしまいます。
また出席者の方といろんな議論をしていろんな意見を主張してもらったものの、欠席者の方に内容を伝えず放置してしまうのも不適切です。
欠席者に対しては、以下の3つのうちのどれかを行う必要があります。
①欠席者対象の会議を改めて開催する
②議事録を渡して内容を口頭で説明する
③メール等で議事録を送った場合は、欠席者から内容確認をもらう
この背景には、必ず内容をもれなく伝えるという趣旨があります。
会議の頻度については、訪問介護と障害居宅系についてはおおむね1月に1回以上の開催が必要とされています。全員一堂に会さず、サ責ごとのグループに分かれて開催してもOKです。
またオンライン上での開催やSNSツールを使用して行う会議(文書会議など)もある程度許容されています。
土日祝日関係なく、年間を通して時間帯を問わずサービス提供している障害系サービスにおいては、サ責との1対1の面談でも良いとされています。
同様に、土日祝日関係なく24時間365日サービス提供している重度訪問介護の事業所においては、会議の開催は必要時の開催でも構わないと明記している自治体もあります。
会議に全員が参加していないなどの事項は、行政からの指摘が多くなります。事業所によっては、常勤職員だけを対象に会議を開催しているところもあると思いますが、特定事業所加算の算定要件で必要とされているのは全職員が対象となる会議です。
内容についても事務事項の一方通行の周知通達だけではなくて、利用者に関すること、サービス提供にあたっての留意事項、そして技術指導をかならず目的としたものになるようにサ責の工夫が必要になります。
③サービス提供責任者と従業者との報告体制の整備
体制要件の3つ目は、サ責と従業者との報告体制の整備をしているか、実際にサービス提供に当たる訪問介護員とサ責とで報告・連絡・相談(ホウレンソウ)ができているかということです。
この報告・連絡・相談は、内容についても指定があります。
(1)利用者のADLや意欲
(2)利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
(3)家族を含む環境
(4)前回のサービス提供時の状況
(5)その他必要な事項
この内容を、必ず文書で伝達することが必要です。メールはOKですが、電話のみ、あるいは会って話をして伝えたのでは不足となっています。また、今年度の報酬改定でもICT化は推進されており、当社では訪問介護のアプリツールを使用していますが、実地指導の際に難色を示されたことはありません。
報告の頻度は、訪問介護と障害居宅系については1日のサービス前にサ責の方が留意事項を伝達し、サービス後に訪問介護員が報告するという、毎回のサービスごとのキャッチボールが想定されています。
ただし、訪問介護員が1日に同じ利用者を2、3回訪問することが予定されている場合や、1日に複数の利用者を訪問する予定が組まれている場合は、サ責はその訪問介護員に、その日の仕事始めの前に、その訪問予定の利用者に関する伝達事項をまとめて伝えて、訪問介護員は仕事終わりに報告をサ責にまとめて行ってよいともされております。
その日がサ責の休日に当たる場合は、従業員同士で報告を適切に行うことも可能とされています。
訪問介護と障害居宅系においては(4)前回のサービス提供時の状況は伝達内容の必須項目とされております。(5)その他の項目は変更のあった場合のみで足りるとされています。
重度訪問介護についてもおおむね一緒ですが、(4)前回のサービス提供時の状況ではなく、前月の情報となっていますので、毎回ではなくて、毎月末や月初に伝達するのが適切です。
④訪問介護員等に対する健康診断の実施
体制要件の4つ目は訪問介護員等に対する健康診断の実施です。
少なくとも年に1回、訪問介護員全員が対象で、費用は事業所負担となります。
特定事業所加算の算定に当たっては、どのサービス、どの算定要件でも必須の要件になっています。事業所によっては、健康診断は正社員のみだったり、社会保険に加入している人に限定しているかもしれませんが、特定事業所加算の算定には登録ヘルパーや非常勤ヘルパーを含む全ての訪問介護員に実施する必要があります。
費用についても事業所が全額負担する必要があります。
頻度については定期的に、少なくとも年に1回というのが留意点になっています。
ただし毎年9月に健康診断を実施しているという事業所において、10月に入社された方には翌年9月に実施が見込まれていれば、大丈夫です。
登録ヘルパーで、ダブルワーク、トリプルワークをされている方から、掛け持ちの仕事先で健診を受けたから個々の事業所では受けたくないという申し出があった場合は、他社で受けた健診結果を事業所に提出してもらうことで足りるということになっています。
⑤緊急時における対応方法の明示
体制要件の5つ目は、緊急時における対応方法の明示で、いずれの加算を算定する場合にも必須となっています。
事業所で、利用者に緊急事態が起きた時の対応方針、緊急時の主治医や事業所の連絡先、および事業所の対応可能な時間帯を記載した文書を交付する必要があります。
この文書については重要事項説明書でもよいとされていますので、そちらを活用するのが効率的です。
⑥新規に採用したすべての訪問介護員等に対する同行による研修の実施
6つ目は、新規に採用したすべての訪問介護員等に対し、熟練した従業員の同行による研修を実施していることです。
こちらは訪問介護では要求されておらず、障害福祉サービス(居宅・同行・行動・重度訪問介護)で必要とされている要件です。
サ責またはサ責と同等の技量、力量のある職員が、新規に採用した全てのヘルパーに同行する体制を整備していることが必要です。また、その記録も残す必要があります。
留意点として述べられているのはここまでであることから、新任ヘルパーの方が担当利用者のサービスに一人で入れるようになるまでは要求されていないと見受けられ、1回の同行で最低基準はクリアできると考えます。
■人材要件
①訪問介護員等の資格割合に関する要件
(1)介護福祉士が30%以上
(2)介護福祉士+実務者研修修了者+介護職員基礎研修課程修了者+ヘルパー1級修了者が50%以上
(3)以下は障害居宅系、重度訪問介護においてプラスαの要件
a 常勤の従業者によるサービス提供時間の占める割合が40%以上
b 国立リハビリテーション学院資格障害学科修了者の占める割合が30%以上(同行援護のみ)
c 常勤換算方法による
d 訪問介護と障害居宅系・重度訪問介護は常勤換算の合算はできない
②サービス提供者の実務経験
(1)すべてのサービス提供責任者が、3年以上の実務経験を有する介護福祉士または5年以上の実務経験を有する実務者研修・基礎研修・ヘルパー1級修了者
③1人を超えるサービス提供責任者を配置することとされている事業所において、常勤のサービス提供責任者を2名以上配置していること
④訪問介護員等の総数のうち、勤続7年以上の者の占める割合が30%以上
人材要件では、加算の算定率Ⅰ~Ⅴのうち、どの算定率を使うかで、必要な要件がかなり異なりますので注意が必要です。
まず一つ目は、従業員の資格割合に関する要件です。
訪問介護では、この資格割合に関する要件は、以下の2つです。
(1)介護福祉士が30%以上であること。
(2)介護福祉士+実務者研修修了者+介護職員基礎研修課程修了者+ヘルパー1級修了者の合計が50%以上であること。
障害福祉サービス(障害居宅系、重度訪問介護)においては、(1)(2)に加えてプラスαの要件があります。
a 常勤の従業者によるサービス提供時間の占める割合が40%以上であること。
同行援護のみ、b 国立リハビリテーション学院資格障害学科修了者の占める割合が30%以上であること。
これらの要件は、c 常勤換算方法によるものとされていますので、それぞれの事業所で従業員の資格別に分けて、計算をすることが必要です。
ただ、d訪問介護と障害居宅系・重度訪問介護は常勤換算の合算はできません。
訪問介護系事業所によっては、訪問介護・障害居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護など複数の事業を行っているかもしれませんが、常勤換算の方法において介護保険を根拠とする訪問介護と、障害者総合支援法を根拠とする障害福祉サービスの混在はできません。
例えば、訪問介護で月80時間、障害居宅系介護で月80時間の勤務を実施している職員がいたとしたら、常勤換算は訪問介護で0.5、障害居宅系介護で0.5としなくてはなりません。
一方で障害福祉サービスの中での兼務の状況は合算しても大丈夫です。[吉岡2] 同行援護で月80時間、重度訪問介護で月80時間の勤務をしている職員がいたとしたら、常勤換算は1と算出して構いません。
②サービス提供者の実務経験
サービス提供者の実務経験として、すべてのサ責が3年以上の実務経験を有する介護福祉士、または5年以上の実務経験を有する実務者研修・基礎研修・ヘルパー1級修了者であることです。
同行援護については、加えて国立リハビリテーション学院資格障害学科修了者の5年以上の実務経験があれば、算定要件に当てはまるとされています。
この実務経験は、施設・在宅問わず介護に従事した時間であり、資格取得前の期間も含まれます。
また介護福祉士、実務者等については修了証明書までは求められておらず、介護福祉士試験の合格発表が2月末であった場合、合格者の方は3月からの加算算定に含めても良いことにはなっています。ただし、登録証や修了証明書の提出は速やかにしていただくことが肝要です。
③1人を超えるサービス提供責任者を配置することとされている事業所において、常勤のサービス提供責任者を2名以上配置していること
月のサービス提供時間利用者や職員の数によって、各事業所でサ責の必要人数が変わると思いますが、2人以上が必要とされる事業所においては、一人目も二人目も常勤の方を配置する必要があるという要件です。
④訪問介護員等の総数のうち、勤続7年以上の者の占める割合が30%以上
こちらは訪問介護の加算選定のⅤで必要とされる要件で、新設されたものです。
また、ここで言う勤続年数は同一法人内の介護福祉事業で介護した経験年数も含めます。
以上が人材要件となりますが、人材要件については訪問介護と障害福祉サービスで内容が少しずつ異なります。
どちらも、どの加算算定をするかということで、背負うべき要件が少しずつ異なりますので注意してください。
なお、従業員の人事異動や退職で、人材要件を満たさなくなった場合は、加算の算定そのものができなくなりますので、毎月の確認が必要となります。
■重度者対応要件
①訪問介護
(1)算定率ⅠとⅢ
利用者のうち要介護度4、5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が20%以上
(2)算定率Ⅳ
利用者のうち要介護度3~5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が60%以上
②障害居宅系、重度訪問介護
(1)障害居宅系算定率ⅠとⅢ
障害支援区分5以上である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が30%以上
(2)障害居宅系算定率Ⅳ、重度訪問介護ⅠとⅢ
障害支援区分5以上である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が50%以上
3つ目の重度者対応要件は、要介護度、障害支援区分、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする方への支援の割合がどのくらいかが要件となる加算です。
①訪問介護の場合
一つ目が(1)加算算定時のⅠとⅢで必要とされているものです。
利用者のうち、要介護4と5であるもの。日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が20%以上であるというのが要件です。
二つ目の(2)算定率Ⅳにおいては、利用者のうち要介護度3~5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が60%以上であるというのが要件です。
②障害福祉サービス、障害居宅系、重度訪問サービスの場合
一つ目が(1)障害居宅系算定率ⅠとⅢで必要とされているものです。
障害支援区分5以上である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が30%以上であるというのが要件です。
二つ目の(2)障害居宅系算定率Ⅳ、重度訪問介護ⅠとⅢにおいては、障害支援区分5以上である者、喀痰吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合が50%以上であるというのが要件です。 以上が加算の算定のそれぞれの要件ですが、訪問介護、障害居宅系、重度訪問介護の3つに大別されており、加算の算定率によって満たすべき要件というのが異なるので、実際の算定では事前にしっかりと確認する必要があります。
■加算届け出を申請する推奨スケジュール
要件の学習・検討
必要な実績作り
届出書類作成
届出
特定事業所加算の算定をするには届け出をしなくてはいけません。届け出をするためには一定の要件を満たしている必要があり、いくつかは届け出時に3か月の実績を必要とすると言った項目もあります。思い立ったらすぐ加算の算定というわけにはいきません。
推奨のスケジュールを考えると、①算定開始の4か月前に各種要件の学習ならびに検討を事業所や法人等でする、②3か月前からは必要な実績作りを記録と共に開始する、③2か月前にその届出書の書類を作成して、④1か月前に各自治体に届け出をするのが理想的です。
ただ自治体によっては、必要とする実績は前月分のみでよかったり、算定の届け出は1か月半前とするなどのルールを設けていることがありますので、まずは各自治体の出している特定事業所加算のチェックリストなどを確認するのがベストです。
届出書と共に体制届(処遇改善加算、地域加算など、事業所の全体を通して取得している加算届をまとめた書類)を提出し、算定が開始されます。
体制届も自治体フォーマットがあるので、取り寄せて提出するようにしてください。
■さいごに
・加算算定はおススメ
・付帯業務はひと月ずつ慣れていくしかない
・算定要件の情報混在に要注意
当社において特定事業所加算の約1年間算定を継続した感想をお伝えします。
同業他社の方々に対しては、この加算算定をお勧めします。加算を取得すると、事業所の収益が急激に上がります。算定要件を継続的に満たしていくのは一定の労力が伴いますが、この継続的な労力以上に収益アップのメリットが大きく上回ります。
この算定によって新たに生じた付帯業務については、算定開始当初は不慣れゆえに戸惑い、ストレス、負荷がかかりましたが、こちらはひと月ずつ、少しずつ慣れていくしかありません。
算定の開始から半年くらいは訪問介護、障害居宅系介護、居宅介護支援に関する特定事業所加算の情報が混在が避けられず、算定要件を手元に置いて確認しながら各種要件を実施していく必要がありました。
一方、自治体の実地指導については、訪問頻度や指導事項の内容・厳しさは、加算の算定の有無で変わりはない印象です。
所感ですが、事業所・法人側は、サービスの違いで生じる算定要件の混在などを実地指導で適正に直していただく、ご指摘いただくという姿勢でよいと思われます。